大家さん必見 空室対策の基礎とアイデア4選
人口減少、少子高齢化、空家の増加など、賃貸需要の減少の要因が懸念されるいま、どのような物件であっても、常に空室対策を意識しておくことが大事です。
効果的な空室対策をおこなうためには、まず対策の基本となる入居ターゲットの見直しなど、簡単な方法からはじめてみましょう。またこれまでに多くの大家さんが実践して成功している空室対策の事例を試すのも効果的です。
今回は、これからの賃貸経営に必須となる「空室対策」について、成功事例を紹介しながら解説します。
いずれの大家さんも、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.借りて市場の今、空室対策は必須
- 2.空室対策の基礎
- 2.1.ターゲットを見直す
- 2.2.入居者の費用負担を極力減らす
- 2.3.内見や募集資料を増やす
- 2.4.内見時:室内や共用部の清掃は事前に必ず行う
- 2.5.仲介会社との関係構築も重要
- 2.6.入居者に人気の設備を把握して導入検討を
- 2.7.リフォーム・リノベーションで人気物件に
- 3.空室対策のアイデア
- 3.1.アイデア1:簡単に取り組めるものから実行
- 3.2.アイデア2:チラシやネットの訴求内容の見直し
- 3.3.アイデア3:モデルルームを作る
- 3.4.アイデア4:成功事例を盗む
- 4.成功事例から学ぶ ユニークな空室対策事例
- 5.まとめ
- 6.この記事を読んだ方に人気のお役立ち資料一覧
借りて市場の今、空室対策は必須
2018年(平成30年10月1日)の『人口推計』では、日本の人口は前年に比べ43万人減少し、15~64歳人口の割合は59.7%で過去最低でした。一方で70歳以上人口割合は20.7%と初めて2割を超えたことから、人口減少と少子高齢化がすすんでいることがわかります。
参考:総務省統計局『人口推計2018年(平成30年)10月1日 結果の要約』
また2018年におこなわれた『賃貸契約者動向調査』の結果では、賃貸物件を探している人が不動産会社へ直接訪問した数は平均1.5店舗と過去最低でした。また物件見学数も平均2.8件と過去最低だったことから、賃貸物件の借りての減少が推測されます。。
参考: 株式会社リクルート住まいカンパニー『2018年度 賃貸契約者動向調査』
これらの結果から現況の賃貸不動産業界は、空室を埋めるための新しい入居希望者が現れにくい「借りて市場」であると考えられます。
特に空室率の高い地方はその傾向が顕著ですが、今後は都市部でも築年数の古い物件や立地がそれほどよくない物件は、入居付けに苦労することが予想できます。
そのため今後も安定した賃貸経営をつづけるには、時代や入居者のニーズに応じて空室対策を入念におこなう必要があると考えられます。
空室対策の基礎
ここでは空室対策方法の基本について解説します。
空室対策の方法にはたくさんの種類がありますが、やみくもに空室対策をおこなっても効果を得られないばかりか、費用と時間と労力だけが消費されてしまいます。
効率的な空室対策方法を選ぶには、まず基本となる方法を理解した上で所有する賃貸物件にあわせた空室対策をおこなうことが重要です。
ターゲットを見直す
賃貸経営を成功させるには、できるだけ多くの入居者を呼び込めるかどうかにかかっています。特に周辺に競合物件が多い場合は「物件の差別化」を図る必要があります。
物件の差別化には、たくさんの方法がありますが、まずは現在受け入れている入居ターゲットの見直しをおこないましょう。
周辺の競合物件では受け入れていない入居者層をターゲットにすることで、物件の差別化につながります。なお、ターゲットを見直す際は「需要が多いのに供給が少ない」層をターゲットにすることが重要です。
たとえばペット飼育可物件にしたり、高齢者の受け入れにしたり、また今後高い賃貸需要が見込まれると予測されている外国人留学生受け入れなども、物件の差別化として効果が期待できます。
入居者の費用負担を極力減らす
新規入居時にかかる入居者が支払う費用の軽減も、効果的な空室対策のひとつです。
賃貸物件に入居するには、敷金や礼金のほか、仲介手数料や前払家賃などの初期費用がかかりますが、入居希望者の多くはこれらの費用をできるだけおさえたいと考えています。
そこで敷金・礼金0円キャンペーンやフリーレントで一定期間の家賃を無料にするなど、入居者の費用負担を減らすことで、お金を節約して引っ越ししたい人=入居者獲得につながります。
ただし、フリーレント分の家賃や礼金など、大家さんの収入が減ってしまうため、あまりにも過剰な減額はおすすめできません。また敷金を無料にする場合は、退去時のクリーニング代を別途請求する必要があるため注意しましょう。
内見や募集資料を増やす
インターネットの検索サイトの物件情報や、不動産会社に渡す募集資料を充実させることも大事な空室対策のひとつです。
特に近年の賃貸物件探しはインターネット検索がトレンドです。
新しく部屋探しをする場合、まずは賃貸物件の検索サイトで希望する条件にマッチする賃貸物件を検索し、気に入った物件を内見して賃貸借契約を交わすという流れになります。
入居者を獲得するには、できるだけ多くの人に物件を内見してもらわなければなりません。そのため、内見する・しないの判断材料となる検索サイトに掲載する物件情報は非常に重要です。
掲載情報が古くなっていないか、写真がわかりにくくないか、入居者の気持ちになってチェックし、入居希望者が内見したくなるような物件の写真を増やすのはもちろん、物件の詳細を正しく記載しましょう。
またコロナウイルスの影響によって、直接内覧せずに検索結果の情報だけで賃貸借契約を交わす人が増えています。そういった人に向けて、物件内部を紹介する「オンライン内見」の動画を準備するとよいでしょう。
内見時:室内や共用部の清掃は事前に必ず行う
内見の前には、かならず建物周辺や室内にゴミや汚れがないことを確認しましょう。
物件の第一印象は、入居希望者が入居する・しないを決める重要なポイントです。
特に部屋に行くまでに目につく共用部(エントランス・ゴミ置き場・駐輪場など)は、入念に掃除をおこないましょう。
また室内もクリーニング済みだったとしても、埃がたまっていたり、空気が澱んでいたり、匂いがこもっていることもあるため、換気しておくことをおすすめします。
さらに内見用のスリッパやウェルカムボードなどを用意したり、内見時間にあわせてエアコンで室内を適温にしておいたり、内見者の好感度を高める工夫も効果的です。また夕方以降に内見をする場合は、電気がつく状態にしておくことを忘れないようにしましょう。
仲介会社との関係構築も重要
入居希望者と大家さんをつなぐ窓口になる「仲介会社」も空室対策に大きく関わります。
入居付けに積極的かつ豊富なノウハウを持つ仲介会社であれば入居が付きやすくなります。
また、物件を紹介してもらうためには、営業マンとの人間関係を構築することも大切です。なぜなら営業マンも人間なので、良好な人間関係にある人とは積極的に取引したいと考えるからです。
具体的には、入居付けの相談に乗ってくれたり、物件情報を優先的に入居希望者に紹介してくれたり、空室対策に積極的に参加してくれることが期待できます。
そのため、普段から仲介会社との関係性作りをしておくことが大事です。
訪問の際は手土産を持参するなど礼儀上の気遣いや、広告料やマージンを多く払うなど、仲介会社に働きかけることが空室対策につながります。
入居者に人気の設備を把握して導入検討を
前述のように、最近の賃貸物件探しはインターネット検索が主流です。
特に大手賃貸ポータルサイトの物件検索システムは、希望エリアや家賃額、建物タイプ、間取り、駅からの距離といった定番の条件のほか、多数の設備を検索条件として選択が可能です。
そのため、入居希望者の多くが選択する設備が導入されていない賃貸物件は検索結果に表示されず、よって内見されるチャンスも皆無となります。
もし、人気の設備が物件に備わっていない場合は、入居者に人気の設備を調査したうえで、優先順位の高いものから導入を検討してみるとよいでしょう。
リフォーム・リノベーションで人気物件に
賃貸物件の間取りや設備にも流行り廃りがあります。
そのため築古物件の場合、入居者ニーズと合わない間取りとなってしまい、入居が付かないこともあります。
そういった流行や入居者ニーズに合わない部屋は、リフォームやリノベーションによって空室対策として効果を発揮することがあります。
たとえば、不人気の和室を洋室に大々的にリノベーションしたり、逆に壁紙や照明器具だけを取り換えて和クラッシック風な室内にリフォームしたり、さまざまな手段があります。
リフォームやリノベーションを成功させるには、信頼できる工事会社としっかり打ち合わせをして、どんな部屋にしたいかイメージを伝えることが重要です。
なおリフォームやリノベーションには費用が発生するため、費用対効果を考慮した上で検討する必要もあります
またできるだけ費用をおさえたい場合は、できる部分はDIYで対応することも検討するとよいでしょう。
<リフォーム業者を探せるサービス>
空室対策のアイデア
ここでは空室対策に効果的なアイデアを紹介します。空室対策には費用が発生するものもありますが、なかには少額でできるものもあります。ぜひ参考にしてください。
アイデア1:簡単に取り組めるものから実行
空室対策をおこなう場合、できるだけ簡単で費用がかからないものからはじめるのがコツです。前述した、ターゲットの見直しや、入居者の初期費用の軽減など、少額の費用でできる対策で空室が解消される可能性もあるからです。
効果がなかったら次の方法を試すというように、段階を踏んで対策をおこなうことで、無駄なく効率的な空室対策につながります。
ただし、あれもこれもとやみくもに空室対策をするのは、時間と手間がかかります。
まずは基本的な方法を踏まえ、「空室になる原因」を慎重に探ったうえで、原因を解消できる空室対策をピンポイントでおこないましょう。
アイデア2:チラシやネットの訴求内容の見直し
仲介会社の入り口に貼られた物件情報が記されたチラシを不動産業界では「マイソク」と呼びます。
マイソクには物件の基本情報が記載されていて、賃貸物件を探しに来た人への物件紹介などにも使用される大事な資料です。また、インターネットの検索サイトにもマイソクと同様の物件情報が記載されます。
もし入居付けがむずかしいと感じた場合、マイソクで物件の魅力を伝えられていないことも考えられます。
一度マイソクを見直し、以下の点を確認してみましょう。
・記載の情報は正確か
マイソクは内見者を増やすために必要な媒体です。
そのため、「内見したら記載された内容と違っていた」という事態にならないよう、記載内容はしっかり精査しましょう。
間違いがあると、せっかく来てくれた内見者の信用を失い、成約できる確率が大幅に減少する危険性があるため注意が必要です。
・物件のメリットを伝えているか
立地や周辺環境、設備など、物件を選ぶメリットがしっかり記載されているか確認しましょう。距離などは具体的な数字を書いたり、簡易な地図を記載したり物件との位置関係を示すのも効果的です。
ただし不動産の広告においては、「至近」など主観的で曖昧な表記は使用してはならないという「ルール」があるため注意しましょう。
なお、インターネットの検索サイトには、複数の画像を掲載することができます。
画像は内見につながる大事な情報源です。できるだけ魅力的に見える写真を、外観、共有部、室内各所それぞれ数枚ずつアングルを変えたものを掲載しましょう。
アイデア3:モデルルームを作る
室内をモデルルーム化することで空室対策につながる例があります。
モデルルーム(ホームステージング)とは、空室に家具や家電、装飾品などを配置し、入居後の生活イメージを高めることを目的とした、もともとは売却用不動産物件に使用される販促活動のひとつです
賃貸物件の場合は、その簡易版として小さなインテリアや家具を数点配置し、部屋を魅力的に設えることで内見者を入居につなげることを目的としています。
モデルルームに使用した家具などの保管場所が気になる場合は、業者からレンタルすることも可能です。なかにはレンタルだけでなく、部屋にあわせたインテリアのコーディネートや室内の撮影をしてくれるサービスもあるため、目的にあわせて活用するとよいでしょう。
アイデア4:成功事例を盗む
空室対策の方法には、たくさんの種類があります。その多くが、実践し成功した例をあげたものであり、それらにアレンジを加えたものです。
成功事例は、今後の空室対策のよいお手本として活用しない手はありません。
効果的な空室対策の事例は、空室対策の書籍を読んだり、当サイトのように空室対策について書かれている記事や現役大家さんのブログを読んだりすることで、さまざまな方法を得ることができます。
また大家さん向けの不動産投資セミナーでは空室対策をテーマにした講演などが開催される場合もあります。
所有する物件に効果的な対策方法を見つけるためにも、さまざまな空室対策方法を学びましょう。
成功事例から学ぶ ユニークな空室対策事例
ここでは空室対策の成功事例を紹介します。いずれも効果のある方法です。所有する賃貸物件の空室対策の参考にしてください。
フリーレント活用で入居者の家賃負担を軽減!
フリーレントとは、入居時から一定期間の家賃を0円にするサービスのことです。
フリーレントのメリットは、なんといっても、入居付けのしやすさにあります。入居者にとって、家賃が無料になるのはうれしいサービスなので、引っ越す際は積極的にフリーレント物件を探す入居希望者も少なくありません。
「でもすぐに退去されたら、大家は損するのでは?」と心配する大家さんもいるでしょう。
たしかにフリーレントを実施したものの、フリーレント期間が空けた直後に退去されてしまっては、大家さんの負担が大きくなってしまいます。
そのため、フリーレントでは賃貸借契約書の条文に「定めた期間内に退去した場合は違約金を支払う」など、取り決めを盛り込むのが一般的です。
たとえば「3年以内で退去した場合、フリーレントで免除した分の家賃を違約金として支払う」といった条文を契約書に盛り込むのです。
たとえば、3年以内に退去した場合は、フリーレント期間の家賃を違約金として支払う」と契約書に記載した場合、入居者が1年後に退去しても、大家さんはフリーレント期間分の家賃を受け取れます。
このようにフリーレントを活用すれば、入居者は支払う家賃を軽減でき、大家さんは一部の家賃を受け取れない代わりに一定期間入居者(家賃)を確保でき、両者にとってメリットが得られます。
人気設備No.1の「インターネット無料」で退去も防止!
スマホの普及によって、いまや賃貸物件でもインターネット環境はあって当たり前の設備のひとつとなりました。そんなインターネット設備のなかでも、入居者の注目を集めているのが「インターネット無料」の設備です。
「インターネット無料」とは入居者が無料で使えるインターネット設備を指します。
インターネットを使用するために必要な手続きや月額使用料の支払いは、すべて物件オーナーである大家さんがおこないます。そのため入居者はプロバイダ契約やネット料金の負担なしで、入居後すぐにインターネットを利用できるというメリットがあります。
「全国賃貸住宅新聞」が発表した「人気設備ランキング」の結果では、単身者向け・ファミリー向け賃貸物件ともに「インターネット無料」が1位を獲得しています。
また大手賃貸物件ポータルサイトのほとんどでは、物件検索の条件として「インターネット無料」が選択できるようになっています。
所有する物件にインターネット無料設備を導入していれば、検索結果として表示される回数が増え、入居してもらえる確率も上がり空室対策につながる可能性も高まります。逆に未導入であれば、検索結果に表示されず内見してもらえる機会すらないのです。
すでに入居者から人気のインターネット無料の設備は、今後も増えることが予測されます。もし空室対策として設備の追加を考えている場合は、ぜひインターネット無料を検討してください。
築古戸建てを活用!若者に人気のシェアハウスに
築年数の古い戸建て賃貸の空室対策として効果が期待できるのが「シェアハウス」化です。
シェアハウスとは、1戸の物件に複数の入居者が居住するタイプの賃貸物件で、アメリカなど海外では一般的な賃貸システムです。
日本でも徐々にシェアハウス利用者が増え、2014年にはおよそ300棟だったのが、一般社団法人日本シェアハウス連盟の調査では2019年時点での数は約4,800棟と急成長しています。
大家さんにとって戸建て賃貸をシェアハウスにすることで以下のようなメリットがあります。
・1軒で貸すよりも部屋数ごとの賃料のほうが高くなる可能性がある
戸建てとしての家賃よりも、部屋数×家賃のほうが、受け取れる家賃総額が多くなる可能性が高いです。
・空室リスクが分散できる
戸建てとして賃貸する場合、空室期間の家賃収入は0円です。しかしシェアハウスであれば、部屋ごとに家賃収入を得られるので、1室が空室でもほかの部屋から家賃収入を得られます。
ただし、戸建てをシェアハウスにするには以下の点に注意しましょう。
・家電や家具など備品の用意が必要
シェアハウスに必要な家具や家電は大家さんが用意する必要があります。また各個室には鍵を設置しましょう。
共同で使用するもの:ソファやテーブル、テレビ、冷蔵庫や電子レンジ、調理器具や食器類、洗濯機、掃除機など掃除用具
個室で使用するもの:ベッド、机と椅子、棚など
・共同生活にあたってルールの設定
他人同士が共同生活するためルール決めは必須です。共有部利用時の注意やゴミ処理の方法、迷惑行為の禁止、室内禁煙など、またルールをやぶった際のペナルティも決めておきましょう。
まとめ
賃貸物件の空室対策について、事例を紹介しながら効果的な方法を解説しました。
入居希望者数に比べて賃貸物件が過剰となっている現況の賃貸市場は、「借りて市場」と言われています。そのため、効率的な空室対策は必要不可欠となることが予想できます。
空室対策方法の種類はさまざまですが、やみくもにおこなうよりは空室の原因を探ったうえで的確な方法で空室対策をおこなうと効果的です。そのためには、これまでの空室対策成功事例を参考にするとよいでしょう。
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