アパート経営の連帯保証人トラブルQ&A相続放棄や家族、親・夫婦でおこるリスク
アパートローンを申し込めば、銀行から連帯保証人を求められます。 今まで連帯保証人になったことのない人は、きっと「連帯保証人になっても大丈夫かなあ」と不安に思うはずです。 実は連帯保証人を立てずにローンを利用する方法もきちんとあります。
また連帯保証人の責任やリスクを知ったうえで健全なアパート経営をしていれば、連帯保証人もまったく恐れることはないのです。
今回は、連帯保証人について知りたい知識を「あぱたい」がくわしく解説していきます。
目次[非表示]
- 1.アパートローンを組むには連帯保証人が必要
- 1.1.銀行が求める連帯保証人の条件
- 1.1.1.法定相続人とは
- 1.2.銀行は配偶者に連帯保証人を求める
- 1.2.1.家族以外が連帯保証人になることは可能?
- 2.連帯保証人なしでアパートローンを組むには団体信用生命保険に加入
- 2.1.団体信用生命保険加入のデメリット
- 3.アパート経営における連帯保証人の責任とリスク
- 3.1.連帯保証人は主債務者と同等の返済義務がある
- 3.2.主債務者が亡くなっても返済義務は継続
- 3.2.1.相続放棄しても連帯保証人は解除されない
- 3.3.主債務者と離婚しても返済義務は継続
- 3.3.1.連帯保証人から外れる方法
- 4.アパート経営と連帯保証人にまつわるQ&A
- 4.1.Q:家族から勝手に連帯保証人にされていた!どう対処すべき?
- 4.2.Q:連帯保証人が死亡した場合、家族に支払い義務はある?
- 4.2.1.Q:相続人が複数の場合は
- 4.3.Q:親が連帯保証人と知らずに相続してしまったら?
- 4.4.Q:家族に連帯保証人の地位を継がせない方法はある?
- 5.連帯保証人トラブルが起こりがちな経営状況
- 5.1.アパート経営が赤字
- 5.2.アパートを売却してもローン完済できない
- 5.3.将来を見越した資金計画を立てていない
- 6.まとめ
アパートローンを組むには連帯保証人が必要
不動産投資のなかでもアパートの場合は、銀行のアパートローンの利用が不可欠。アパートローンを組む際には、通常連帯保証人を求められます。
しかし、安易に連帯保証人になると後々トラブルになる可能性も。 また賃貸でアパートを借りる際にも保証会社を利用しないのであれば、基本的に連帯保証人が必要です。 このように不動産と連帯保証人は密接に関係しています。
まずは連帯保証人とはどんな制度なのか確認しましょう!
銀行が求める連帯保証人の条件
アパートローンを利用する際には連帯保証人を求められますが、誰でもなれるわけではありません。 各金融機関によって多少違いはありますが、
- 事業継承者
- 法定相続人
のふたつを条件にしている銀行が多いです。
【みずほ銀行】
事業継承見込みの法定相続人(未成年者を除く)1名以上を連帯保証人としていただきます。
【三井住友銀行】
法定相続人の内、事業承継見込みの方等、原則1名以上の方の連帯保証が必要です。
- 不動産管理会社でお借り入れされる場合、会社代表者および会社代表者の法定相続人の内、事業承継見込みの方等、1名以上の方の連帯保証が必要です。
銀行は支払不能になったときに、代わりに支払いする人を確保したいという思惑は当然あります。しかし、できれば長期間、きちんとアパート経営を続けてほしいとも考えているものです。
また、借主が亡くなった場合、法定相続人(通常、配偶者や子供)は、相続放棄ができます。 相続放棄をされてしまい主債務者が不在になれば、アパート経営は途中で終了です。
放棄しても支払い義務が残るようにして、安易に経営を放棄できないように設定しています。
法定相続人とは
法定相続人とは、被相続人(亡くなった人)の所有する財産(借金などのマイナスの財産も含む)を相続する権利がある人のことをいいます。
順位 |
相続人 |
|
常時 |
配偶者 |
正式な配偶者は、常に相続人となる |
第1 順位
|
子供 |
子供が死亡している場合は、その子供・孫が相続 |
第2 順位
|
直系 尊属 |
父母・祖父母。優先順位は父母が先 |
第3 順位
|
兄弟 姉妹 |
兄弟姉妹が死亡している場合は、その子供・孫が相続 |
表のように、配偶者と親子にまず優先順位があります。
仮に、妻と子供がふたりいて、1,000万円の相続財産がある場合。妻が50%の500万円、子供が25%の250万円ずつをそれぞれ相続します。 もし子供がいなければ、第2順位の父母が相続の権利者です。 しかし、なかには法定相続人になれない人もいます。
- 被相続人を殺したり、脅迫して遺言を作らせたりした場合
- 被相続人や上位の人に対して虐待・侮辱行為をした場合
- 相続放棄をした場合
なお相続放棄をしたい場合は、相続開始を知ってから、3か月以内に手続きをする必要があります。
銀行は配偶者に連帯保証人を求める
銀行は通常、配偶者(夫もしくは妻)に連帯保証人になることを求めます。 なぜならば、ローンの途中で主債務者が死亡してしまった場合、代わりの債務者がいないと困るからです。 仮に配偶者に相続放棄をされてしまったら、銀行はお金を回収できません。
配偶者に対しての連帯保証人の審査基準はあってないようなものです。パート勤務で収入が十分でなくても、無職の主婦でもなれるのが特徴になっています。
家族以外が連帯保証人になることは可能?
家族の賛同が得られない場合、家族以外の人が連帯保証人になることは可能なの?
友人でも知人でも相手が合意してくれれば、誰でもなれます。ただし、連帯保証人になれば、借主の代わりに支払いが発生する可能性があります。 友だちでも保証人になってくれる人は少ないと考えておくべきです。
連帯保証人なしでアパートローンを組むには団体信用生命保険に加入
連帯保証人がいない場合は、銀行が指定する団体信用生命保険に加入することで、ローン借り入れができるかもしれません。
団体信用生命保険とは、契約者がローン途中で亡くなったり重い障害を負ったりした場合に、保険会社がローン残金を支払ってくれる制度です。 その場合ローンがなくなるうえに、アパートは自分のものになります。いざというときに非常にありがたい保険ですね。
団体信用生命保険加入のデメリット
団体信用生命保険には大きなメリットもありますが、当然デメリットも存在します。
- 借り入れ金額に上限がある
- 借り入れ金利が高くなる
- 借り入れ条件が厳しくなる
- 税負担が増える場合がある
みずほ銀行の場合、通常5億円以内の融資上限が1億円以内に変更されます。金利も通常の金利に、0.3%上乗せされた金利での契約が条件です。
合わせて、“融資開始の年齢が71歳未満、完済時は81歳未満” という条件もクリアーしなくてはいけません。 また団体信用生命保険は「生命保険料控除」が適用されません。税負担が増加する場合があります。
出典:みずほ銀行 アパートローン 団体信用生命保険利用時の条件
アパート経営における連帯保証人の責任とリスク
支払いを請求されるなどのトラブルにおちいらないためにも、連帯保証人の責任とリスクについてきちんと理解しておきたいですね。
連帯保証人は主債務者と同等の返済義務がある
最初に、「連帯保証人」と「保証人」の違いを知っておく必要があります。
保証人は連帯保証人にはない権利が保証されていますよ。
たとえば主債務者をとおり越して、いきなり保証人に請求してきた場合、「まずは主債務者に請求してください」と断ることが可能です。
主債務者が資産を持っているのに保証人に請求してきたら、「財産を持っているのだから先に主債務者から返済してもらってください」と拒否できます。
また、保証人が複数いたら負債を人数で割った分だけを支払えばいいのです。
仮に2,000万円の残債があり保証人が5人だとしたら、400万円分だけ支払い義務があります。残りの1,600万円に関しては、一切責任がありません。
しかし、連帯保証人には上記の権利がありません。請求されれば主債務者の状況に関わらずに、必ず返済をしなくてはならないです。
返済を拒否すれば最終的には、不動産や給与などを差し押さえされて強制的に回収されることになるでしょう。 また連帯保証人が複数いたとしても、銀行があなたひとりに請求してきたら、あなたが全額を支払う必要があります。
これは少し極端な例ですが、そのくらい非常に重い支払い責任を負うということを、知っておいてください。
主債務者が亡くなっても返済義務は継続
もしローンの支払いが完了する前に借主が亡くなった場合、支払いはどうなるのでしょうか?
まず知っておきたいのは連帯保証人の契約は、主債務者と連帯保証人との契約ということです。 主債務者が亡くなっても銀行と主債務者の金銭貸借契約は残り、連帯保証人の責任は継続されます。
相続放棄しても連帯保証人は解除されない
連帯保証人が、同時に法定相続人でもある場合を考えてみましょう。
たとえば子供である自分が、親が死亡した際に相続放棄をしたとします。 その時点ですでに連帯保証人になっていたとすれば、その契約は解除されません。
連帯保証人の契約を解除してもらうには、基本的に「自己破産」などの法的な債務整理しかないのです。
自己破産についてはこちらも参考にしてみてください。 参考:債務急済
主債務者と離婚しても返済義務は継続
銀行は、連帯保証人込みという条件で契約します。離婚を理由に連帯保証人を外してくれることはまずあり得ません。 円満な夫婦生活を送っている間はいいのですが、ふとしたきっかけで離婚という道を歩む場合も少なくありません。
通常は夫が主債務者で妻が連帯保証人というパターンが多いと思います。離婚となれば妻が連帯保証人から外れたいと思うのもムリもないことです。
連帯保証人から外れる方法
連帯保証人から外れる方法は、債務整理以外には代わりの連帯保証人を立てるしかありません。 主債務者側の親・兄弟や親族なら、なんとかしてあげたいという情があります。条件さえ合意できれば、あらたな連帯保証人になってくれるかもしれません。
また借り入れ銀行を変更して、ローンを借り換える方法も一案でしょう。 新しくアパートローンを組んで、今までのローンはいったん返済してしまうのです。そうすれば連帯保証人を外すことができます。あとは、その新しいローンを主債務者単独で借り入れできるかどうかです。
連帯保証人を求められる場合は、やはり親族などに新しく連帯保証人になってもらう必要があります。 いずれにしても、連帯保証人から外れるのは簡単ではないので注意しましょう。
アパート経営と連帯保証人にまつわるQ&A
アパート経営をするうえで、連帯保証人の問題から逃れることはできません。 これまで説明してきたように、連帯保証人は重い支払い責任を負います。トラブルにならないように、疑問点はしっかりと解消しておきましょう。
Q:家族から勝手に連帯保証人にされていた!どう対処すべき?
普通に考えると、勝手に連帯保証人にされていたわけですから、その契約は当然無効なはずです。 ただ、「自分の意思ではなく勝手に契約されてしまった」ということを第三者に証明するのが非常にむずかしい場合があります。
その場合でも請求された時に1円たりとも支払ってはいけません。支払った時点で、その契約を正式に認めたことになってしまいます。 次に契約書のコピーを取り寄せてください。ここで明らかにサインが自分の書いたものではなかったり、ハンコが三文判だったりしたら比較的簡単に証明できます。 問題は家族が勝手に実印と印鑑証明を使っていた場合です。
この場合は、証明できない場合もあります。 いずれにしても弁護士の指示に従い、自分だけで対応しないほうがいいでしょう。
Q:連帯保証人が死亡した場合、家族に支払い義務はある?
財産というと現金や不動産などお金につながるプラスのイメージがあります。しかし財産には借金や連帯保証人契約など、マイナスなものもあるのです。
もし相続をすれば、プラスの財産と同時に死亡後の債務も引き継がれます。マイナスの債務が多ければその分損をします。その際は、迷わず相続放棄です。 厳密にいうと「限定承認」といってプラスの財産からマイナスの財産を引いて、プラスが余ったら相続するという方法もあります。
これは非常に手間がかかるので、参考程度に覚えておいてください。
Q:相続人が複数の場合は
相続人が複数いる場合は、相続人全員に連帯保証人契約が継承されるのです。 これがプラスの財産の場合は、割合に応じてわけ合います。しかし、連帯保証人は、ひとりだけに支払い請求されることも十分あり得るのです。
普通はあまり極端なことを銀行はしませんが、そういうリスクがあることだけは頭に入れておいてください。
Q:親が連帯保証人と知らずに相続してしまったら?
こういった場合に有効なのが、「相続放棄」です。ただし放棄できるのは、親が死亡したのを知ってから3か月以内だけ。 3か月以上経ってしまったけれども、それまで親が連帯保証人なのを知らなかった場合も諦める必要はありません。
相続して数年経ってから、急に支払い請求がきてびっくりするという話もよく聞きます。 たとえば自宅の住宅ローンのようにわかりやすい契約であれば書類もそろっているでしょうし、家族も把握しているはずです。
しかし連帯保証人のことは、親だけが知っていて子供は知らなかったという状況は十分にあり得ます。 あらためて相続放棄ができるケースもありますので、早めに弁護士に相談してみてください。
Q:家族に連帯保証人の地位を継がせない方法はある?
「生前贈与」を活用して、連帯保証人を継がせない方法もあるにはあります。
親が子供に財産を生前贈与して、そのあとに相続放棄をすれば、とりあえず連帯保証人を継承しなくて大丈夫です。 ただし、財産と連帯保証額の割合次第では、放棄が認められない場合があります。
たとえば、2,000万円の不動産を生前贈与されたとして、連帯保証額が2,000万円だとしたら、これはアウトの可能性が高いです。 銀行側から見れば、これは悪質な債権逃れでしかありません。 こういった行為は「詐害行為」とよばれ、もし生前贈与が詐害行為と認められてしまえば全額返却する必要があります。
基本的にアパートローンの連帯保証に対して、生前贈与で対抗するのは非常にむずかしいと考えておくべきです。 その際はやはり、債務整理を考慮に入れるしかありません。
連帯保証人トラブルが起こりがちな経営状況
これまで連帯保証人について解説してきましたが、毎月滞りなくローン返済ができていれば、とくに問題はおこりません。
ここではローン返済不能におちいる原因について検証していきます。
アパート経営が赤字
当たり前の話ですが、アパート経営が赤字で十分な利益が出せないと、すぐにローンの返済が滞ってしまいます。 家賃収入がそのまま全部収入になるわけではありません。そこからローンや管理費、税金、保険料などを支払います。
さらに長期の修繕積立金も、毎月計画とおりに貯蓄しなくてはならないのです。 いずれにしても、常に満室であれば大きな赤字は出ないはずです。赤字を解消するためには、とにかく空室を出さないようにしましょう。
アパートを売却してもローン完済できない
アパート経営は長期にわたるので、状況の変化によって途中で売却を検討すべきときも出てくるはずです。 また市場が活発な時期にアパートを売却して、あらたに好条件のアパートを買い直したいという場合もあるでしょう。
アパート経営は「出口戦略が重要」といわれる所以です。 ところが、ローン残債よりも高く売却できない場合、残ったローンの支払い義務は消えません。 その場合は売却しないという選択もあります。しかし売却せざるを得ない場合は、かなり厳しい状況になります。 売却してしまえば、もはや家賃収入もありません。
自分の本業から補填するなり、新しく借り入れをするなりして、なんとか残債を支払わなくてはならないのです。 こういう状況におちいらないように、物件選びの段階で立地や設備などをよく検討してください。なるべく資産価値が下がらないアパートを選びましょう。
将来を見越した資金計画を立てていない
将来必要になる修繕費用も含めた長期計画をしっかりとまとめておくことが、連帯保証人のトラブルを起こさないためには非常に重要です。
アパート経営は現在順調でも、いつどんなことが起こるか誰にもわかりません。今後のアパート経営に1番大きく関わってくるのが、「修繕費用」です。 10〜30年周期で大規模な修繕工事が必要になることは簡単に予測できます。
そのための費用をしっかりと貯蓄しておかなくてはなりません。
国土交通省の「民間賃貸住宅の計画修繕ガイドブック」によれば、30年経過時までにかかる修繕費用は約2,160万円です。 これは単純に計算して毎月約6万円ずつ、修繕費用として貯蓄しなくてはならないということになります。
まとめ
アパート経営において、責任とリスクをよく理解しないまま連帯保証人になってしまう人があとを絶たず、トラブルが多発していています。
まずはきちんと連帯保証人について知識を持ちましょう。 大事なのは、連帯保証人トラブルが起きてしまうような経営状況におちいらないことです。赤字にならないために、健全な経営を目指していきましょう。 こちらの記事でも相続トラブルについて解説しています。