アパート経営を法人化する賢いタイミングは?会社設立で節税対策と相続準備
不動産は大家さんになると家賃収入が生まれます。 収入には税金がかかってくるので成功すればするほど気になるのが「納税」ですね。
法人化すると節税できるらしいけど、今すぐするべき?そう迷われている方も多いと思います。 また、将来的なことを考えると相続税なども不安…対策はある?そう考え、準備されている方もいらっしゃるでしょう。
こちらの記事では、法人化の基本と節税効果、相続準備について徹底解説します。
こちらの記事でも法人化のメリット・デメリットについて解説しています。
アパート経営を法人化【4つのメリットと5つのデメリット】個人のお得な節税効果を徹底解説 [
目次[非表示]
- 1.アパート経営を法人化するには
- 1.1.不動産を所有する会社を設立
- 1.2.不動産の管理委託会社を設立
- 2.法人化のメリット|節税編
- 2.1.【節税1】所得に関する税負担の軽減
- 2.2.【節税2】家族を社員にして節税
- 2.3.【節税3】計上可能な経費が増える
- 2.4.【節税4】赤字の繰り越しが可能
- 3.法人化のメリット|相続編
- 3.1.【相続1】財産の分散と相続税への準備
- 3.2.【相続2】相続手続きの負担が減る
- 4.見落とすと破綻する!法人化の注意点
- 4.1.【注意点1】会社設立に掛かる費用
- 4.2.【注意点2】維持に掛かる費用
- 4.3.【注意点3】ローン残債がある場合
- 4.4.【注意点4】副業なら就業規則を確認
- 5.法人化の旨味があるタイミングはいつ?
- 6.法人化するための5ステップ
- 6.1.【ステップ1】法人の種類を決める
- 6.2.【ステップ2】定款の作成
- 6.3.【ステップ3】登記書類の作成
- 6.4.【ステップ4】法務局で設立登記
- 6.5.【ステップ5】税務署等に開業の届け出
- 7.まとめ
アパート経営を法人化するには
アパート経営をスタートし、そろそろ法人化を…と起業を考える方も多いでしょう。 1000万円を超えたら法人化、最初から法人化、などさまざまな情報が飛び交います。
まずは、先輩オーナーが行っている、法人化するための具体的な会社の設立の方法を確認してみましょう。
不動産を所有する会社を設立
大家さんになると家賃をもらって収益をあげていきます。 それは、不動産所得とされ、所得税がかかります。
長い目で見ると、大家さんが亡くなった時に個人の財産としてみなされ持っているお金に丸ごと相続税が課税されるのです。
ここで考えたいのが不動産所有会社の設立です。
「所得分散効果」とも言われたりしますが、法人で不動産を所有、家賃を管理することでメリットが生まれます。
大家さんだけでなく、家族を役員にすることで役員報酬として家賃収入を分配することが可能です。この際、給与所得控除も受けることが可能です。 もし大家さんおひとりで運営される場合でも、個人の所得税率による課税より、法人税率の方が低い場合が多いでしょう。
もう1点が、相続時にメリットがあります。 例えば、家賃を相続の際の死亡退職金として支給した場合、法定相続人の人数×500万円は相続税が課税されません。
相続にはさまざまな準備が必要ですが、家族のことを思うとこのように事前に準備しておくのも安心の一つといえるかもしれません。
不動産の管理委託会社を設立
管理委託会社の設立は、大家さんは不動産をそのまま所有し、管理業務を法人化した管理委託会社が請け負います。
管理の部分だけを大家さんはその法人に支払います。 大家さんは支払うので所得が減り、法人は売り上げの計上により所得金額を増やすことが可能です。
所得の移転という点ではメリットが限定的ですが、業務を行う法人としては可能性が広がります。 管理委託は、通常5%前後ですが、建物の状態や管理の複雑さによって変動します。
法人化のメリット|節税編
一般的に、賃貸経営を法人化というと注目されるのが「節税」です。 家賃収入に対して、個人の課税と法人の税率を考え、その差が大きいほど節税の効果が高くなります。
【節税1】所得に関する税負担の軽減
税率は、所得によって大きく変わります。 所得にかかってくる具体的な税率を知ることで、法人化するメリットやタイミングを読むことができます。
個人事業主の場合
個人事業主の税金は4つあります。
- 住民税
- 消費税
- 事業税
- 所得税
節税を考えたとき、ポイントとなるのは所得税です。
所得税が低いと、事業税なども低くなります。
では、具体的な数字を見る前に、個人事業主のベーシックな税の仕組みと考え方について学びましょう。
まずは、個人事業主になると税務署に開業届を提出します。 開業届を出したから必ずすべて事業所得になるかと言うと、そうではありません。
営利性や長い期間継続して収入があるかどうかなどで実質的に判断されます。 家賃収入は、毎月ある程度の金額が相当期間入ってくるので、個人事業主の事業所得とみなされやすいでしょう。
では、早速個人事業主の節税について具体的に紹介します。
「収入-経費=所得金額」となるので、個人事業主は、いかに経費を集めるかが重要なポイントです。
事業で使用しているものはもれなく、経費にしていきます。 例えば車のガソリン代や保険やメンテナンスも、事業にかかわる使用した分だけ経費にすることが可能です。
車を使って物件を回ったり、リフォームや退去後の修繕に必要なものを買いに使用した場合など細かくチェックしてみましょう。
所得金額が算出できたら、所得税額を計算します。
所得金額-所得控除×税率-課税控除額=所得税額
ここの所得控除とは、様々な種類があります。
- 基礎控除…納税者一律38万円です
- 青色申告特別控除…10万円または65万円、青色申告者は控除されます
- 扶養控除…扶養する家族がいる場合、基本38万円控除されます
ほかにもさまざまな控除があり、ふるさと納税なども寄付金控除の対象です。
税率は、所得によって変わってきます。 所得金額別の税率は以下のようになっています。
195万円以下…税率5% 課税控除額0円
195万円超え 330万円以下…税率10% 課税控除額97,500円
330万円超え 695万円以下…税率20% 課税控除額427,500円
695万円超え 900万円以下…税率23% 課税控除額636,000円
900万円超え 1,800万円以下…税率33% 課税控除額1,536,000円
1,800万円超え 4,000万円以下…税率40% 課税控除額2,796,000円
4,000万円超…税率45% 課税控除額4,796,000円
個人事業主で大切なことは、まずは所得税額を低く抑えることがポイントとなります。
法人の場合
法人税とは、個人事業主が支払う所得税と同じような性質です。 また、同様に法人の納税者が自から計算して事務所に申告しなければなりません。
さらに、決算終了後2か月以内に税務署に申告して納税しなければいけません。
まずは、法人税の概要をチェックしてみましょう。
- 法人税…800万以下の場合、利益×15% 800万以上の場合、利益×23.2%
- 地方法人税…法人税×10.3%
- 法人事業税…400万以下の場合、利益×5% 400万超の場合、利益×7.3% 800万超の場合、利益×9.6%
- 法人県民税…法人税×1%+均等割り
- 法人市民税…法人税×6%+均等割り
トータルすると利益に30%前後の税金がかかることがわかります。
個人事業主の場合は、所得が増えていくと税率も上がっていきます。
一方、法人税は800万円を境に税率が決まっているので、所得が増えるほど、節税が可能です。
大きな金額であるとともに、法人税に関しては改定の多い税金でもあります。
プロである税理士を顧問に迎えるなど入念に準備を行っておきましょう。
【節税2】家族を社員にして節税
まずは、法人の一般的な税を見てみましょう。
利益:300万
法人実効税率21%
均等割り7万円をプラスするとおよそ70万円になります。
節税をしていない、一般的な法人税です。
例えば、同じ利益で家族3人が役員になった場合、年間100万円づつ支払うとすると、会社の利益は100万円×3人で0円になります。
均等割り7万円プラスしても、法人税等は7万円ということになります。
【節税3】計上可能な経費が増える
ここでの経費は、一般的に皆さんが接する経費とは少し違うかもしれません。 経費というと、雑費や交通費などをイメージしますが、法人としての経費について見てみましょう。
具体的な計上可能な経費としては、以下のようなものがあります。
- 役員報酬
- 役員の退職金
- 法人加入の保険
他にも、出張時の役員の日当や、自宅兼事務所の場合は一部家賃を経費にすることが可能です。
【節税4】赤字の繰り越しが可能
赤字=損失の繰り越しは、確定申告をされている方や事業者にはなじみがある言葉かもしれません。 個人では、不動産の所得に赤字が出て、お給料やほかの所得と合わせてもマイナスの場合は、最大で3年間繰り越すことが可能です。
これが法人の場合は7年間になります。
不動産管理は地道な仕事です。
「空き年」には一気に退去者が増え、リフォーム代がかさんだり、近隣に競合物件ができれば、家賃の値下げや広告料の出費が出ます。
そんな際に、将来黒字になっても赤字分を乗せて節税できれば大きな助けになります。
法人化のメリット|相続編
相続税は、亡くなって相続が開始してから10か月以内に相続税を支払わなければなりません。 また、不動産など資産が多ければ多いほど、相続に対して準備を行わなければなりません。 法人化の最大のメリットである、相続について考えてみましょう。
【相続1】財産の分散と相続税への準備
個人事業の大家さんは、頑張った結果収入が増え、財産が増えると、相続税の増加につながります。
前に記載した通り、法人化して親族に役員報酬として支払いをしておくと、結果的に生前贈与と同様の効果が得られます。
法人を設立し、このアパートやマンションなどの不動産所得を、役員報酬という形で家族に分散することで、親の財産の増加を抑えることが可能です。
また、将来の相続人である子ども世代はこれにより財産が形成できるため、相続税の納税資金などを蓄えることができます。
【相続2】相続手続きの負担が減る
個人の方が亡くなると、相続の際に相続対象の品目リストを作成し、相続対象のみんなが集まり話し合いをしたり、場合によっては弁護士や司法書士なども必要になってきます。 手間がかかるだけでなく、やり方によっては遺恨を残したり家族間の仲が悪くなることもあります。
法人化し、家族を雇用することで不動産の収益を分配しておくことで、亡くなった際に急いで分配しなければいけないなどの負担を減らすことが可能です。
これは大きなメリットで、手間や時間だけでなく残された遺族のストレスも減らすことができるでしょう。
見落とすと破綻する!法人化の注意点
法人にするには、様々な手間と費用が掛かります。
法人にする際に注意するべき4つのポイントをピックアップしました。
【注意点1】会社設立に掛かる費用
会社設立にはいろいろなパターンがあります。今回は一般的な「株式会社」を設立するときの費用を計算してみましょう。
まずは、法定費用です。
- 公証人役場で必要な費用 定款印紙代40,000円と、公証人への定款認証手数料 52,000円が必要になります。
- 法務局で必要な費用 登録免許税150,000円 この際、代表者の印鑑証明や、設立後の謄本取得費用などが別途必要です。
もう1点大きな出費が資本金になります。
現在では、資本金に縛りはなく1円でも可能です。 しかし、借り入れや事業の性質などから、中小企業の多くは100万円以上に設定している会社が多いようです。
【注意点2】維持に掛かる費用
法人を維持するためには、様々なランニングコストがかかります。
- オフィス賃料
- オフィスの光熱費
- 給料
- 弁護士・税理士の顧問費用
法人を運営していくには、このランニングコストの削減がとても大切です。
最近では、経費削減を経営者が一方的に行い、働きづらい環境になっていることも問題視されています。
現場のランニングコストを見直す際は、経費だけでなく働く人の環境も十分に考慮しなければなりません。
【注意点3】ローン残債がある場合
法人化したら、物件の名義を個人から法人に変更することになります。 融資を受けて購入した物件でも、完済していれば問題ありません。
しかし、不動産の建築に当たりローンを組み、残債が残っている場合は、金融機関に相談しなければなりません。
金融機関によっては、法人化に当たっての審査や手続きなどに不慣れなこともあります。借り換えなども併せて検討しながら進めておくとよいでしょう。
様々なケースがありますが、法人名義にするにあたり、個人から法人へ売却を行います。そのため、売買契約にかかわる税金や手数料はが発生するので、その点も考慮しなければなりません。
【注意点4】副業なら就業規則を確認
サラリーマン大家さんの場合、副業が禁止されている場合は要注意です。 パラレルワークや副業が一般化されつつあるとは言われていますが、副業を認めていない会社は多いので、就業規則を必ず確認しておきましょう。
家族で法人化していて、役員報酬などがある場合は、就職時に人事や直属の上司などに入社前に必ず確認する必要があります。
法人化の旨味があるタイミングはいつ?
ここまで、具体的な税金について法人や個人の側面から考えてきましたが、具体的にはどのタイミングで法人化するのが良いのでしょうか?
それは、個人の税率より法人の税率が下回り、節税効果が望めるタイミングです。
法人の税率はトータルすると30%前後になります。 個人の所得税は、900万円超え 1,800万円以下…税率33%で、1,800万円超え4,000万円以下…税率40%です。
検討するポイントとしては、1800万円を超えた時点が一つの目安だと考えられます。
しかし、全てにおいてケースバイケースで、給与職などがあった場合はそれも考慮しなければいけません。
親族に役員報酬などで支払った場合は分散節税ができるので、法人として節税が可能です。 どのくらいの節税が必要かは、法人にした場合に必要なお金やランニングコストなどから計算し総合的に検討していく必要があります。
法人化するための5ステップ
法人化するための具体的な流れを見てみます。 簡単にピックアップしますが、限られた時間内で法人化するには準備をきちんと行うことが大切です。
【ステップ1】法人の種類を決める
法人には種類があります。それぞれの特徴をチェックしてみましょう。
- 株式会社 株式会社は、株主が株を所有し、出資しただけ責任が伴います。 会社の代表者や経営者が株主になっていることが多くあります。
- 合同会社 小資金でできる新しい形の会社です。 特徴は、社員全員が出資して、責任を負います。 業務内容や出資に対する配当も、会社内で一定の規則はありますが、ある程度自由に設定することができます。
- 合資会社 最低2人で設立が可能です。有限責任者と無限責任者が必要なので、それぞれ1人いれば成り立ちます。
他にも一般社団法人、一般財団法人、公益社団などがあります。
【ステップ2】定款の作成
定款とは、会社のルールブックです。 会社法に沿って作成しなければならず、ひな形は公証役場などで確認することができます。 まずは、最低限定めなければいけないことは、以下のような点です。
- 商号
- 本店所在地
- 代表者の名前と住所
- 会社の事業目的
- 出資の財産と金額
さらに以下のことを検討していきます。
- 株式を譲渡するにあたり、制限があるかないかを決めます。これは、公開、非公開と呼ばれます。
- 取締役の人数を決めます。
- 取締役が3人以上の場合、取締役会を設置するかどうか
- 取締役会を設置する場合のみ、監査役を設置するかどうか
以上のようなことを決定していくのが定款の作成です。 書面での作成もできますが、収入印紙代の節約などもかんがみ、現在では専門ソフトやクラウドで作成することも多くなっています。
【ステップ3】登記書類の作成
法人登記を行う際に必要な書類は、会社の種類によって変わってきます。 以下のものは、最低限用意するものになります。
- 定款
- 資本金の払い込み証明書(書面)
- 就任承諾書…設立時の役員の実印を押した書面です
- 役員全員の印鑑証明…発行から3か月以内です。
- 印鑑届出書…法人印(実印)作成のための書類です
- 登記申請書…法務省からダウンロード、または法務局窓口でもらえます。
司法書士などにお願いすることも可能ですが、意外と法務局に問い合わせながら自分でできることも多いので、規模によっては自分で作成することも可能です。
【ステップ4】法務局で設立登記
ここで一番注意しなければいけないのが、登記した日が設立日になるという点です。 小規模だとオンライン申請などが便利ですが、初めてのことだと書類が不足したり不備が出たりすることがあります。
法務局には相談できる窓口もあるので、そのような場所を積極的に活用しましょう。 また、十分に時間的余裕をもって準備することで、不備なく登記を完了できます。
【ステップ5】税務署等に開業の届け出
税務署に開業の届け出をするときは、開業から2か月以内になります。
- 登記簿謄本定款の写し
- 株主名簿の写し
- 設立時の貸借対照表
- 出資者がいる場合は、氏名や出資金額がわかる書類
他にも会社の種類などによって必要な書類がある場合があるので、税務署に確認しながらそろえていきましょう。
まとめ
不動産で収益が上がると、気になるポイントは法人化です。 法人化するタイミングは個人の税金より法人の税金として納めた方がお得になった時です。
そのため、購入時から法人化する場合もあります。まずは焦らずにじっくりと見極めてみましょう。
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こちらの記事でくわしく解説しています。
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