アパート経営の利回りは?【計算方法とROI・CCR】10%はウソ?初期費用・必要経費を含めた目安
アパート経営をはじめとした不動産投資において、「利回り」の知識は必須スキルです。
あなたは利回りについてどの程度理解されていますでしょうか?
「表面利回り」と「実質利回り」の違いを知っているだけでは、実はまだまだ理解が足りないかもしれません。利回りには真の利回りとよばれる「ROI」「CCR」というものも存在するからです。
今回こちらの記事では、利回りの基礎から知っておくべき利回りの深い部分についてまでしっかり解説します。
目次[非表示]
- 1.アパート経営の利回りとは?10%以上が目安!
- 2.【簡易計算】平均相場から考える理想的なアパート経営の利回り
- 3.【詳細計算】アパート経営の実質利回りをシミュレーション
- 3.1.アパート経営の利回りは最終的に8割ダウン!?
- 3.2.利回りの相場
- 4.真の利回り!ROI・CCRを知れば一歩先行くアパート経営が可能
- 5.アパート経営の収入
- 6.アパート経営に必要な初期費用
- 7.利回りより「手残り」を多くするアパート経営5つのコツ!
- 8.アパート経営で高利回りを維持するポイント
- 8.1.空室リスクが低い物件を入手する
- 8.2.適切な管理形態を選ぶ
- 8.3.複数の土地活用プランを比較する
- 9.アパート経営で高利回りを維持するためのメンテナンス
- 9.1.共用部のメンテナンス
- 9.2.原状回復時におこなうメンテナンス
- 10.利回りを見るときの注意点
- 10.1.参考にするべきは実質利回り
- 10.2.空室を考えて計算する
- 10.3.家賃下落を考慮して計算する
- 10.4.金利が上がった場合を考慮して計算する
- 10.5.修繕費を差し引いて計算する
- 11.まとめ
アパート経営の利回りとは?10%以上が目安!
アパート経営の利回りとは、購入した物件から得られる収入の割合を指します。通常、1年間に得た利益が物件を購入するのに要した費用の何割かという計算で算出します。
仮に1000万円の物件を購入して1年間で100万円の家賃収入を得たら、利回り10%という計算です。
アパート経営をはじめとした不動産投資にまつわる「利回り」。あなたも「表面利回り」「実質利回り」という言葉くらいなら聞いたことがあるのではないでしょうか。
表面利回りと実質利回りの違いは、計算式の違いをみれば一目瞭然です。
投資用物件のポータルサイトや広告では、必ず表面利回りを掲載しています。
表面利回りは、物件の購入でかかった費用を1年間に何%回収できるかという目安。 それに対し実質利回りは、物件運営にかかった費用が差し引かれた純粋な家賃収入を算出し、物件の購入費用の何%を回収できるかという指標です。
ただほかにも、さまざまな要素を含めることで少し計算方法が違う実質利回りもあります。
この点はのちほど解説させていただくとして、まずは何%くらいを表面利回りの目安とすべきかみてみましょう。
アパート経営の新築と中古による利回りの違い
下図はLIFULL HOME‘S不動産投資にて公表されている、全国の表面利回り平均のグラフです。
※2019円10月12日時点のデータより作成
東京と長崎の利回り差が13%もあるのは驚きですが、ほかの都道府県はおおむね10%前後といった状況。すべての都道府県を平均すると、全国の平均利回りは10.91%です。
また確認したところ、LIFULL HOME‘S不動産投資に掲載されている「売りアパート」だけで約4,000件。
よって10.91%という数字は、利回りを考えるうえでのひとつの目安と言えるでしょう。
ただし上のグラフは、新築も中古の区別がないすべての物件における平均利回り。
そこで不動産投資情報サイト「楽待」、そしてLIFULL HOME‘S不動産投資にて新築の売りアパートを検索したところ、利回りは以下のとおりでした。
【楽待】(約1,100件)
- 最高利回り:9.84%
- 最低利回り:1.00%
【LIFULL HOME‘S不動産投資】(約110件)
- 最高利回り:9.08%
- 最低利回り:4.06%
- 平均利回り:7.1%
※リゾート地や別荘用などの特殊物件は除いています
もっとも高い利回りでも10%を超えません。新築アパートは、建築費をはじめとした中古アパートとは違う費用がかかり、建築会社の利益も上乗せされます。
よって、新築アパートは通常より利回りが低くなる傾向にあるのが一般的な認識です。
では中古の売りアパートはどうでしょうか。下図は不動産投資と収益物件の情報サイト「健美家」が公表している、「収益物件市場動向(全国)」の最新情報です。
築年数が古くなるほど利回りが上昇しているのは興味深い結果です。築20年を超えると10%を超えますが、築年数が浅いと7%にも届きません。
どちらにしても、新築と中古で比べたときに中古の利回りは高めという結果です。
中古アパートの利回りが高い要因はいろいろと考えられますが、ひとつ明確なのは「建物の価値が低い」という点。
中古アパートは新築と違って建築会社の利益などがカットされています。つまり中古アパートは利回り計算における物件価格が安くなるため、相対的に利回りが高くなるのです。
アパート経営の利回りの種類と計算方法
アパート経営で使用する利回りには、「表面利回り」「想定利回り」「実質利回り」の3種類があり、それぞれ異なった意味を持ちます。利回りの種類の特徴と計算方法を紹介します。
表面利回り
年間の家賃収入を不動産の購入価格で割ったもので、「物件価格に対して満室時の家賃収入がどの程度得られるか」といった目安的要素が強い数値です。
【表面利回りの計算方法】
表面利回り(%)= 年間の家賃収入 ÷ 物件の購入価格 × 100
表面利回りは算出時に諸経費を考慮していません。そのため購入後の実際の利回りは表面利回りを必ず下回るので、あくまで参考として利用しましょう。
想定利回り
物件の購入価格に対し、満室の状態で年間の家賃収入の割合を指します。つねに満室で満額の家賃収入を前提にして計算されるため、期待しうる最大の利益を算出できます。
【想定利回りの計算方法】
想定利回り(%)=(空室なしの年間家賃収入÷物件価格)× 100
不動産会社の物件広告に記載される利回りは、この想定利回りか前述の表面利回りのどちらかがほとんどです。広告の利回りに「想定」と書かれている場合は、「現況空室、記載の家賃で入居が付いた場合」の利回りになります。
実質利回り
実際の収益により近い数値を算出できるのが実質利回りです。
物件購入時の諸費用や運用時の費用を反映して計算されるため、物件選びや運用時の大きな指標となります。
【実質利回りの計算方法】
実質利回り(%)= (年間家賃収入-年間経費) ÷ (物件価格+購入時諸経費)× 100
ただし、家賃以外の諸費用は明確ではないため、あくまでの「実際に近い数値」であることを留意しておく必要があります。
【簡易計算】平均相場から考える理想的なアパート経営の利回り
もしかするとあなたは、利回りが7%や8%だとしても利益が出ていれば問題ないと思われてませんでしょうか?
たしかに手元に残るお金がマイナスにならなければ、少なからず不動産投資で失敗したとは言えません。しかし前述の「表面利回り」と「実質利回り」の違いで考えると、10%未満ではマイナスが発生する可能性が高いと言えます。
アパートをはじめとした賃貸経営では、運営費が15~20%かかるいうのが一般論です。つまり家賃収入から15~20%を引いた額が、手元に残るお金(純利益)となります。
純利益がわかれば、実質利回りの計算が簡単にできます。
以下のような物件を所有すると仮定して、実質利回りを計算してみましょう。
- 物件種別:木造アパート
- 物件価格:3,000万円
- 表面利回り:10%
- 家賃収入(年間):300万円
- 運営費:20%
年間の家賃収入300万円 - 運営費60万円 ÷ 物件価格 3,000万円 = 実質利回り8%
最初の利回りから2%下落しました。それでもマイナスになっていないため、特に問題ないと思われるでしょう。 しかし上記を1か月あたりの収入額に換算すると、決して余裕ではないことがわかります。
1か月あたりの家賃収入 = 物件価格3000万円 × 実質利回り8% ÷ 12か月 = 20万円
アパート経営は運営費以外にも故障破損などによる修繕費がかかりますし、将来の大規模修繕に向けた積み立ても必要です。そもそも、上記まではアパート経営が満室という前提の計算。必ずしも利回り10%になるとは限りません。
つまり急な出費や空室などまで考慮して、余裕がある利回りかどうかを考えなければならないのです。
利回りは本来、上記のように手元に残るお金というイメージで考えなければいけません。そう考えるとやはり、表面利回り10%は最低ラインであると認識したほうがよいでしょう。
【詳細計算】アパート経営の実質利回りをシミュレーション
ここまで利回り10%がひとつの目安であり、最低ラインでもあるとお伝えしました。ただ、前述までのシミュレーションで考慮していない非常に大事な要素があります。
- ここまでの解説が現金一括購入を前提としている
- 純利益から納める所得税や住民税を考慮していない
- 家賃が下落しない前提である
ローンを利用してアパート経営をはじめるなら、実質利回りの計算で算出した純利益からローン返済や税金を払わなければいけません。しかも築年数がたつほど家賃は徐々に下落していきます。それらの要素を含めると、利回り10%では利益どころかマイナスになる可能性が高いのです。
そこであらためて、アパート経営で実際に支出する費用を一覧でみてみましょう。
初期費用 |
物件価格の10% |
運営費 |
家賃収入の15~25% |
ローン返済額 |
家賃収入の50~60% |
税金 |
収入額などによる |
初期費用や運営費は、物件の種類や状態により増減するのはご理解いただけるでしょう。
ご注意いただきたいのはローン返済額と税金。
ローン返済額は借入額や金利により金額は大きく変わりますし、税金は収入額が分からなければ試算できません。しかも「減価償却費」という税法上の制度まで考慮して、はじめて正確な利益が確定します。
よって上表は「その範囲までにおさえるのが理想」という範囲で考えましょう。
では上表の費用目安をもとに、ローンでアパートを購入したら最終的に利回りが何%になるかシミュレーションしてみます。
アパート経営の利回りは最終的に8割ダウン!?
シミュレーションにあたって、物件詳細や各種費用などを以下のように仮定します。
- 物件価格:3,000万円
- 物件種別:木造アパート(4戸)
- 1戸あたり家賃:3万円
- 家賃収入(年間):312万円 ※おおむね利回り10%
- ローン金利:0%
上記の物件を先ほどの費用目安に当てはめてみましょう。
初期費用(物件価格の10%) |
300万円 |
運営費(家賃収入の20%と仮定) |
62.4万円 |
ローン返済額(家賃収入の約50%) |
156万円 |
税金(所得税・住民税) |
16万円 |
※詳しい解説は割愛しますが、税金は大きくはずれない暫定的な金額とお考えください。
初期費用が300万円ですので、物件価格は合計で3,300万円となります。またアパート経営がはじまってから支払う運営費やローン返済、税金の合計は約235万円です。
すると最終的な実質利回りは以下のようになります。
運営費62.4万円 + ローン返済額156万円 + 税金16万円 = 支出合計234.5万円
(家賃収入312万円 - 支出234.5万円合計)÷(初期費用300万円 + 物件価格3000万円)= 利回り2.34%
表面利回り10%は、最終的に約8割ダウンの2.34%まで落ちてしまいました。
年間家賃収入だと77.5万円、月に換算すると約6.5万円しか手元に残らない計算です。
しかも築年数が経過すると、さらに事情は変わってきます。アパートに限らず、賃貸の家賃は10年で1割減少するというのが目安。家賃の下落を加味して計算すると、実質利回りはさらに低くなるのです。
10年目まで |
22年目まで |
30年目以降 |
|
家賃収入 |
312.0万円 |
280.8万円 |
255.8万円 |
運営費 |
62.4万円 |
62.4万円 |
62.4万円 |
税金 |
16.4万円 |
11.8万円 |
29.0万円 |
ローン返済額 |
156.0万円 |
156.0万円 |
156.0万円 |
支出合計 |
234.8万円 |
230.2万円 |
247.4万円 |
手残り(年) |
77.2万円 |
50.6万円 |
8.4万円 |
手残り(月) |
6.4万円 |
4.2万円 |
0.7万円 |
※減価償却期間を考慮して22年目までとしています
「アパート経営の新築と中古による利回りの違い」でご紹介した不動産情報サイト健美家の調査だと、築年数が経過するごとに利回りは高くなっていました。しかし運営費や税金、家賃下落などまで加味すると、上図のように利回りはどんどん下落していくのです。
もちろんアパート経営の戦略や立地条件により、必ずしも上述までのようにはなりません。ただアパート経営をなんら工夫せずに運営しているだけでは、徐々に収益性は下がっていくのが基本と考えておいたほうがよいでしょう。
利回りの相場
前述したように、利回りの目安は10%程度ですが、物件の種類や地域によって、その値は大きく異なります。下記は「不動産投資と収益物件の情報サイト 健美家 ( けんびや )」が四半期ごとに発表している収益物件の市場動向についての調査結果です。
【一棟アパート 利回り(地域別)】
参考:健美家『収益物件 市場動向四半期レポート(2022年7月~9月期)』
数字だけみると、大都市を含む首都圏や東海、関西の物件に比べてその他の地方の利回りが高いことがわかりますが、これは地価や物価の安さから高利回りになっていると考えられます。
しかし利回りが高くても、地域によってはそもそもの賃貸需要が低かったり、利便性が悪かったり、入居付けがむずかしく空室リスクが高くなるケースも少なくありません。とくに人口の流出が著しいエリアは、今後の賃貸需要に大きく関わるため慎重な判断が必要です。
利回りだけで安易に購入するのは危険だということを覚えておきましょう。
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真の利回り!ROI・CCRを知れば一歩先行くアパート経営が可能
さて、ここまでに詳しく解説させていただいた実質利回り。本当はローン返済や減価償却は含まないで計算します。ローンや減価償却費を含んだ場合、本来は「ROI」という別の指標として扱うべきなのです。
実質利回りにローン返済や減価償却を含まないのは、ふたつの理由があります。
- ローンを利用するかどうかは人により違うため、実質利回りという指標をあらわすのに不適切
- 減価償却費は建物の劣化を費用とみなす費用が発生しない経費のため計算には含まない
「ROI」こそアパート経営における本当の利回り
まず実質利回りとROIの違いを計算式で確認してみましょう。
【実質利回りの計算式】
【ROIの計算式】
- 最初に所得税や住民税を算出。
- 年間家賃収入から所得税や住民税、ローンの返済額の全費用を差し引いて、手残り額を算出。
- 手残りに対する利回りを計算します。その際、物件価格だけでなく初期費用も考慮して計算します。
ROIは上記のように何段階かにわけて計算しないと、正しい数値が出せません。特に減価償却費やローンの利息といった少々むつかしい要素も含まれるため、ある程度の慣れが必要と言えるでしょう。
①にてローン利息、②でさらにローン返済額を引くのは税金の計算か否かという違いです。
税金を計算するうえでのローン返済は、利息部分しか経費として認められません。
正しい税金を計算するために、①ではローン利息部分しか差し引いていないのです。その後②にてあらためて純粋な手残り額を計算しますが、その際はローン返済まで含めたすべての費用を差し引きます。
最後に物件の取得費用と手残り額における割合を計算すれば、ROIという利回りが算出できるのです。
前章の「アパート経営の利回りは最終的に8割ダウン!?」でシミュレーションしたのは、まさにこのROIによる計算。ROIは計算するうえで含まない要素がほぼないため、「真の利回り」とも言われています。
「CCR」はアパート経営で求められる最低限の利回り
ここまで解説させていただいた利回りは、家賃収入に対する物件購入費用の割合です。言い換えれば「家賃収入によって、物件購入費用の何%を回収できるか」という指標と言えるでしょう。
上記までのメインが物件購入費用だとするなら、「自己資金」をメインにした利回りも存在します。
「CCR」「自己資本回収率」として知られており、将来的に売却する予定でアパート経営するかたはぜひ覚えておくべき指標です。
CCRの計算方法ですが、前述のROIを理解すれば非常に簡単。なぜなら最後の計算における物件購入費用の部分が、自己資金に変わるだけだからです。
上図のように①と②は、ROIの計算と同じです。最後の③にて、手残りで自己資金の何割が回収できているかを計算してCCRを算出します。
アパート経営に限らず利回りが高いに越したことはありませんが、利回りだけが利益ではありません。価値が落ちづらい物件なら、自己資金回収後に売却する戦略でアパート経営をはじめてもよいでしょう。
アパート経営の収入
ここでは賃貸収入についてシミュレーションをおこないます。
【20室家賃4万円の収入シミュレーション】
・月間家賃収入: 20室 × 40,000円 = 80万円
・年間家賃収入: 80万円 × 12ヶ月 = 960万円
年間家賃収入960万円から経費を差し引き、不動産所得を計算します。今回は毎月25万円(年間300万円)の経費がかかると仮定しました。
960万円 - 300万円 = 660万円(不動産所得)
不動産所得は660万円となるので、下記の所得税率に従って所得税を計算します。
【所得税の税率(令和4年4月1日現在法令等)】
引用:国税庁『No.2260 所得税の税率』
・所得税: 660万円 × 20%(税率)- 42万7,500円(控除額) = 77万2,500円
所得税額は77万2,500円となりました。次に住民税についても計算しましょう。
・住民税: 660万円 × 10% + 5,000円 = 66万5,000円
住民税は66万5,000円です。最後に最終的な収入額を計算してみましょう。
・最終収入額:660万円 - 77万2,500円 - 66万5,000円 = 516万2,500円
最終的な収入は、516万2,500円となることがわかりました。
ただし、上記の計算はあくまでシミュレーションです。実際のアパート経営では、空室による家賃収入の減少や経費が増えることも考えられます。こういった収支の増減を踏まえたうえで、おおよその目安として考えてください。
アパート経営に必要な初期費用
アパート経営をはじめるにあたって、不動産投資物件を購入・建築するために支払う費用を「初期費用」と呼びます。初期費用は、所有している土地にアパートを建てるか、アパートを購入するかによって変わってきますし、その場合は新築アパートにするか中古アパートにするかでも異なります。
下記は、アパートを購入する際に必要となるおもな初期費用の内訳です。
【アパート購入時の初期費用】
・自己資金(頭金)
不動産の購入にあたっては金融機関から融資を受ける際は、頭金として物件価格の1割~3割程度支払うのが一般的です。
・不動産取得税
建物や土地を取得した際は不動産取得税がかかります。固定資産税評価額×税率で計算されます。なお、2024年3月31日までにアパートを建築すると税率が4%から3%に軽減されます。(参考:国土交通省『不動産取得税に係る特例措置』
・印紙税
物件価格によって異なります。なお、契約書の記載金額が10万円を超えるもので、平成26年4月1日から令和6年3月31日までの間に作成されたものについては軽減措置が適用されます。(参考:国税庁『不動産売買契約書の印紙税の軽減措置』)
・登記費用
登録免許税は「固定資産税評価額×税率」で計算します。登記を司法書士に依頼する場合は報酬が必要です。司法書士報酬の目安は10万円~30万円程度と差が大きいため、できるだけ費用をおさえたい場合は報酬額の安い司法書士に依頼しましょう。
・ローン手数料
金融機関から融資を受ける場合は、ローン保証料と事務手数料が必要です。相場は借入額の1~3%程度です。
・各種保険料
アパート経営をはじめる場合は火災保険や地震保険などに加入することをおすすめします。融資を受ける場合は、火災保険の加入を条件とする金融機関もあります。
補償内容によって保険料は異なりますが、火災保険の10年契約の目安は50万円程度です。
・仲介手数料
不動産会社を介して不動産を購入した場合に発生します。仲介手数料は、物件価格によって異なりますが、不動産会社が受け取る仲介手数料には宅地建物取引業法により定められた上限額があります。
【仲介手数料の上限額】
・物件価格が200万円以下:5% + 消費税
・物件価格が200万円を超え400万以下の金額:4% + 消費税
・物件価格が400万を超える金額:3% + 消費税
利回りより「手残り」を多くするアパート経営5つのコツ!
今までの内容を理解すると、最初に解説した表面利回りは何の意味もないかのように思えます。しかし利回りを考えるうえで、すべての物件に共通する目安は必要です。
大事なのは、目安に対して実際に手元に残るお金がいくらであるかを把握すること。
では、どうすれば手元にお金が多く残るアパート経営を可能にできるでしょうか。成功しているアパートオーナーは、以下5つのコツを必ず心得ています。
- 常に満室経営になるよう空室対策を意識しておく
- 利用するローンは可能な限り低金利の金融機関を探す
- 空室対策にもならない無駄な費用は支出しない
- 漏れなく経費計上して節税に努める
- 賃貸需要のあるエリアで利回り10%以上の物件にこだわる
人によっては「絶対に失敗したくないから、現金一括購入」という方針のかたもいます。
たしかに現金一括購入なら、運営費や税金を差し引いた残りの利益はすべて自分のお金。失敗とは縁遠いアパート経営が可能です。
そもそも1棟目でローンを利用して、しっかり実績をつくることも銀行へのよいアピールにつながります。
そう考えたとき、アパート経営では以下の要素をじっくり検討するのが最初の課題と言えるでしょう。
- 物件価格
- 物件価格に対する自己資金割合
- ローン借入額
- ローン金利
- リフォームの必要性
あとは自己資金を回収することに注力するのみ。自己資金さえ回収してしまえば、アパートを売却するか家賃収入を得ていくかという2択しかありません。
アパート経営の利回りを理解するというのは、結果的に将来の成功へとつながるヒントを得るために必要なことでもあるのです。
アパート経営で高利回りを維持するポイント
アパートなどの賃貸物件は、築年数の経過により価値が下がる一方で修繕費などのコストは増加していくのが一般的です。その結果、現行利回りは下落します。
ここではアパート経営を継続するうえで高利回りを維持するためのポイントを3つ解説します。
空室リスクが低い物件を入手する
空室が増えるとそれだけ家賃収入が減ってしまいアパート経営が苦しくなります。空室リスクをおさえるためには、安定した賃料収入を見込める物件を選ぶ必要があります。
具体例として、以下のような物件がおすすめです。
築年数が浅い物件
築年数が経過した物件は修繕費が高額になりやすく、利回りが下がりがちです。そのため修繕リスクの低い築年浅の物件を選ぶことで、修繕コストをおさえることにつながります。
また日頃からこまめにメンテナンスをおこない、高額な修繕費がかかる大きな傷みになる前に修繕することで修繕コストを削減できるでしょう。
ただし、どのようなアパートであっても築10年を超えると設備が傷みだし、大規模修繕が必要になります。大規模修繕には高額な費用が発生するため、いざというときに慌てないためにも、あらかじめ大規模修繕計画を立てたうえで毎月の家賃収入から大規模修繕費用を積み立てておくことが大切です。
賃貸需要の高い物件
駅から近く、交通アクセスのよいアパートは、賃貸需要が高いです。入居希望者は利便性の高さを重視する人が多いため、駅近の物件だと賃貸需要は高まりやすいでしょう。
最寄り駅から徒歩10分以内、近隣に買い物施設や飲食店が多い、周辺環境がよい、など利便性が高い立地の物件は空室ができても次の入居者が決まりやすく、また長く住んでもらえる可能性もあります。
こういった賃貸需要が高い物件は築年数が経っても家賃を維持しやすく、利回りの低下をおさえることにつながります。
また立地だけでなく、物件の設備にも注目しましょう。
たとえば、オートロックや防犯カメラなどのセキュリティ設備や、インターネット無料設備、追い炊き機能付きの風呂など、入居者ニーズの高い設備を設置することで入居者を獲得しやすくなります。
空室が少ない物件
オーナーチェンジ物件を購入する際は、購入時点で空室が少ない物件を選びましょう。空室が多いと利回りは低くなるため、キャッシュフローに悪影響を及ぼします。
また、空室があると次の入居者の募集費用や原状回復費用などのコストが発生するため、キャッシュフローを圧迫します。
そのため、できるだけ最初から満室もしくは満室に近い物件を選ぶことで収益が安定します。
ただし、オーナーチェンジ物件の中には、サクラを入居させて満室に見せかけている場合もあるため注意が必要です。購入する際は、レントロールなどでこれまでの空室率や入居者の入居日などに不自然な点がないかかならず確認しましょう。
適切な管理形態を選ぶ
アパート経営の管理形態には大きくわけて以下の3種類があります。
① 自主管理:物件に関する、すべての管理業務をオーナー自身でおこなう
自主管理はオーナー自身が入居者対応(トラブル対応など)や建物及び設備の修繕・メンテナンスなど、すべての管理業務をおこないます。自分で管理するため管理委託手数料がかからないのがメリットですが、オーナーの負担が大きくなるのがデメリットです。
② 管理委託:管理業務の全般、または一部を不動産管理会社などに委託する
管理委託は不動産管理会社などに管理委託手数料を支払い、管理全般または一部をおこなってもらいます。コストが発生するのがデメリットですが、オーナー自身の負担が少ないため、時間的・精神的な負担を軽減できます。
また管理会社はアパート管理に関して多数のノウハウを持っているため、適切で迅速な対応を期待できるのもメリットです。なお管理委託手数料は、家賃の5%~8%/月4が相場です。サラリーマンなど本業を持つ大家さんにおすすめです。
③ サブリース:管理業務の全般をサブリース業者(不動産会社)に委託する
サブリースは、サブリース業者がアパートを一括借り上げし、入居者へ転貸しする仕組みです。空室の有無に関わらず一定額の賃料が保証されるのがメリットです。
ただし賃料から、家賃の10%〜20%/月が手数料として差し引かれるため、収益が減少するのがデメリットです。
また保証される賃料は定期的に見直されるため、空室率が高い場合などは毎月の賃料が引き下げられるケースもあるため注意が必要です。
以上のように3種類の管理形態それぞれにメリットとデメリットがあります。
管理形態を選ぶ際は、大家さんが専業なのかサラリーマンなのか、物件の規模や自宅からの距離などを考慮したうえで総合的に判断しましょう。
複数の土地活用プランを比較する
土地活用でアパート経営を検討する際は、その地域の賃貸需要がどの程度あるのかかならず確認しましょう。やみくもにアパートを建てても、入居者が見つからなければアパート経営は成り立ちません。
建築費用が高額過ぎたり、賃貸需要が見込めない立地だったり、アパート経営で高利回りが期待できない場合は、ほかの土地活用プランを検討しましょう。
土地活用の方法はアパート経営以外にもさまざまな種類があります。たとえば、駐車場経営やトランクルーム経営などがあげられます。
まずは複数の土地活用プランを比較検討することをおすすめします。
アパート経営で高利回りを維持するためのメンテナンス
アパート経営で高利回りを維持するためには、長期の空室を避けることが大切です。退去者が出てもすぐに次の入居者が決まる物件にするためには、入居希望者が物件の内見時によい印象を持ってもらうことも重要です。
そのためには日頃から、物件のメンテナンスをきちんとおこなっておく必要があります。
ここでは、入居希望者の目線で見た物件のメンテナンスポイントを解説します。
共用部のメンテナンス
日常的なメンテナンスで特に気をつけたいのが共用部の清掃です。
アパートの入口を含めた周辺や階段、ゴミ置き場がきれいに清掃されていると、内見者の多くは好印象を持ってくれます。
逆に共用部が以下のような状態の場合は注意が必要です。
- 建物の周辺や入口付近にゴミが落ちている
- 空室の郵便受けに大量のチラシ類がはみ出している
- 廊下や階段の電球が切れたままになっている
- 駐輪場に古い自転車が放置されている
- ゴミ置き場に収集日以外のゴミが放置されている
- 植栽などの手入れがされていない
万が一共用部が上記のような状態の物件は、内見者に選ばれるのはむずかしいです。すぐさま改善することをおすすめします。
原状回復時におこなうメンテナンス
入居者の退去後におこなう原状回復時には、室内設備のメンテナンスをおこないましょう。退去した入居者の居住年数にもよりますが、長期入居だった場合、エアコンや給湯機、ガスコンロ(IH)などが古くなっていて不具合を起こす可能性があります。
そのままにしておくと新規入居者が使用中に故障などを起こし、クレームになるケースが考えられます。
トラブルやクレームの発生を未然に防ぐためにも、原状回復工事の際は室内設備をしっかりと確認しておくことが大切です。
また資金に余裕がある場合は、TVモニター付きインターホンや洗浄機能付き便座など入居者に人気のある設備を追加することで、より強力な空室対策につながります。
利回りを見るときの注意点
アパート経営で重要な指標となる利回りですが、参考にする際は以下の点に注意しましょう。
参考にするべきは実質利回り
実質利回りは、3種類の利回りのなかでは、実際の運用時の収益にもっとも近い数値を算出できます。アパート物件を選ぶ際、大まかに物件を絞り込むときなどは表面利回りを使い、絞り込んだ物件を細かく比較するときには実質利回りでそれぞれを比較するとよいでしょう。
空室を考えて計算する
アパート経営には空室リスクが切り離せません。そのため、利回りを計算する際は空室率を反映させることで、より実際のアパート経営に近い数値を算出できます。
さまざまな空室率を想定して実質利回りを計算してみるとよいでしょう。
【空室率の計算方法】
空室率(%)=(空室数×空室期間)÷(全体の室数×365)×100
たとえば、全部で20室ある物件で、空室が3室3カ月間(91日)の場合、(3室×91日)÷(20室×365日)で、空室率は約3.7%になります。
【空室率を反映した実質利回りの計算方法】
実質利回り(%)= (年間収入-年間必要経費) ÷ (物件価格+購入時諸経費) × (100-空室率)
家賃下落を考慮して計算する
一般的にアパートの経年によって入居率は低下します。そのため、家賃を下げて対応をします。
家賃額が変わると利回りにも大きな影響を与えるため、家賃が下がることを視野に入れて利回りを計算する必要があります。
金利が上がった場合を考慮して計算する
アパート物件を取得する際に金融機関から融資を受ける際、「変動金利」を選択した場合は
定期的に金利が見直され、その都度、金利が変わります。そのため、金利が上昇した場合を想定したうえで利回りを計算する必要があります。
修繕費を差し引いて計算する
アパートは経年によって修繕費用は増加する傾向にあります。特に約10年ごとにおこなう外壁・屋根材・水回りなどの大規模修繕には数百万単位の費用がかかります。
そのため、来るべき大規模修繕に向けて、毎月の家賃収入から修繕費用を積立てて準備しておくことが重要です。
この毎月の修繕積立金は、実際に大規模修繕に使用するまでは経費計上できません。毎月の収益から差し引いておき、そのことを前提で利回り計算する必要があります。
まとめ
筆者の経験ですが、顧客へ実質利回りを提示した際に「これはローン返済を含めた利回りですか? 」と尋ねられたことがあります。
「含めていない」と回答したところ少々気分を害され、私に対する疑念すら抱かれたようでした。
しかし今回解説させていただいたROIを説明したことで納得を得られ、取引につながったということがあります。
アパート経営は数字だけ追い求めると失敗する可能性があります。アパートに住むのは「人間」だからです。 数字の話は慣れれば誰でも理解できます。
数字を理解したら、入居者さんや管理会社と円満なコミュニケーションを心がけるのが大事です。
考えるべきことがお金だけにとどまらないおもしろさは、アパート経営ならではの醍醐味と言えるかもしれません。