アパート経営の利回りや最低ライン・計算方法について解説
アパート経営を成功させるには、購入する不動産がどのくらいの収益力があるのか常に意識しておくことが重要です。そんな不動産の収益力を計る目安になるのが「利回り」です。
利回りとは、「投資した金額に対する利益の割合」を表す数値を指し、複数の種類があります。
今回はアパート経営の利回りについて、種類ごとの役割や計算方法の解説、利回りの最低ラインなどをまとめました。また実際の数字をあてはめた利回り計算例も紹介します。
アパート経営の成功のためにも、当記事を参考に利回りの重要性を把握してください。
目次[非表示]
- 1.アパート経営の利回りとは?
- 1.1.そもそも利回りとは
- 1.2.アパート経営の利回りは収益性を図る参考値
- 1.3.高利回りだから利益が多いではない
- 2.アパート経営の利回りが変動する要因
- 3.アパート経営の利回りの種類と計算方法
- 3.1.表面利回りとは・計算方法は?
- 3.2.想定利回りとは・計算方法は?
- 3.3.実質利回りとは・計算方法は?
- 4.アパート経営の利回りの最低ライン
- 4.1.一棟新築アパートの利回り傾向
- 4.2.一棟中古アパートの利回り傾向
- 4.3.新築ワンルームマンションの利回り傾向
- 4.4.中古ワンルームマンションの利回り傾向
- 5.利回りの計算例
- 6.アパート経営の収入
- 7.アパート経営を成功させるためのポイント
- 8.まとめ
- 9.この記事を読んだ方に人気のお役立ち資料一覧
アパート経営の利回りとは?
アパート経営で用いられる利回りは、不動産の収益力を計る目安として使われる数値です。ここでは利回りの持つ意味について解説します。
そもそも利回りとは
利回りとは、「投資した金額に対する利益の割合」を表す数値です。アパート経営などの不動産投資だけでなく、投資の世界では一般的に使用される言葉です。
アパート経営においての利回りは、不動産の取得費に対して1年間の家賃収入がどれくらいの割合であるかを示したものであり、物件の収益力を見る指標のひとつとして重要な役割を持ちます。
アパート経営の利回りは収益性を図る参考値
利回りは、アパート経営をおこなうにあたって重要な指標となりますが、あくまでも目安にするのが正しい利用方法です。
特に不動産広告に記載されている利回りは、アパート経営の経費が反映されていない「表面利回り」や「想定利回り」がほとんどです。「利回り10%」と書かれていても、毎月発生するさまざまな費用を含めると、利回りは大幅に下がりマイナスに転じることもあるため注意が必要です。
では掲載されている利回りが、費用を考慮して計算する「実質利回り」なら信頼できるかというと、そう簡単ではありません。
表面利回りの高い物件は、経費が多く見積もられて計算されていることや、販売価格を下げて利回りを高く見せている場合もあるのです。
利回りが高ければ、それだけ大きなリターン(収益)が見込めるということになりますが、利回りの数値だけを見て不動産を購入すると思わぬ失敗につながりかねません。
まずは、利回りの数値が示す意味を把握し、かならず自分自身で利回りを計算してみましょう。そのうえで、物件選びのひとつの目安として、利回りを利用することをおすすめします。
高利回りだから利益が多いではない
利回りは収益性を判断するための指標ですが、「高利回り=儲かる物件」ではありません。
利回りは「投資した金額に対する利益の割合」を示しているため、投資額が少なければ利回りが高くてもリターンが少ないのは当然です。
また、なんらかの理由で物件価格が下がったために利回りが高くなっている可能性も考えられます。この場合、物件価格が下がった理由によっては入居付けがむずかしく空室が長期化し、提示された利回り通りの利益を得られない恐れも十分ありうるのです。
不動産を選ぶ際は利回りが高い物件を選びたくなりますが、重要なのは利回りの高さではなく、自分が求める利益を得られるかどうかです。けっして利回りの数値だけで物件を選ばないようにしましょう。
アパート経営の利回りが変動する要因
アパート経営の利回りは、常に一定ではありません。なぜなら、退去者が出て家賃収入が減ったり、経年劣化などの要因によって家賃額が下落したり、費用の増減など収入と支出の額が変動するためです。
ここではアパート経営の利回り計算に影響のある、収入の種類と初期費用・ランニングコストを紹介します。
家賃収入
アパート経営のメインとなる収入は「家賃収入」ですが、それ以外にも大家さんの収入となるものがあります。アパート経営で収入としてあつかわれるおもな収入には、以下のようなものがあります。
・家賃収入
・礼金(新規入居者が支払う)
・更新料(契約更新時に入居者が支払う)
・その他(アパート敷地内に設置した自動販売機の売り上げなど)
初期費用
アパート経営をはじめるにあたって、不動産投資物件を購入するため支払う費用を「初期費用」と呼びます。おもな初期費用には、以下のものがあります。
・アパートの取得費用(頭金)
・不動産取得税
・印紙税
・登記費用(登録免許税、司法書士報酬など)
・ローン等の事務手数料(金融機関から融資を受ける場合)
・各種保険料(火災保険や地震保険など)
・仲介手数料(不動産会社を介して不動産を購入した場合)
ランニングコスト
アパート経営をおこなううえで、さまざまなランニングコスト(維持費用)がかかります。ここでは、一般的なアパート経営に必要なランニングコストを紹介します。
・ローン返済費(金融機関から融資を受けた場合)
・光熱費(アパートの共有部の水道・電気代など)
・各種保険料(火災保険や地震保険など)
・管理委託費(アパートの管理を委託している場合)
・修繕費・リフォーム費(故障や劣化の修繕、原状回復など)
・所得税・住民税
・固定資産税・都市計画税
・事業税(事業的規模の場合)
アパート経営の利回りの種類と計算方法
アパート経営で使用される利回りには、「表面利回り」「想定利回り」「実質利回り」の3種類があります。それぞれ計算に用いられる項目が異なり、それぞれの数値が表す役割も違います。
ここでは、3つの利回りの違いについて解説します。
表面利回りとは・計算方法は?
表面利回りは、物件価格に対して年間家賃収入の割合を表します。
計算は年間家賃収入を物件価格で割るだけと非常にシンプルです。
【表面利回りの計算方法】
表面利回り(%)=( 年間家賃収入 ÷ 物件価格 ) × 100
不動産会社の物件広告に掲載されている利回りは、この表面利回りか想定利回りのいずれかです。計算式から見てわかるようにアパート経営にかかる諸費用を考慮していないため、表面利回りの数字は実質的な利回りよりも高くなります。
表面利回りはあくまでも、「物件価格に対して、どれだけ家賃収入を得られるか」の参考として利用しましょう。
想定利回りとは・計算方法は?
想定利回りは、物件価格に対して満室状態での年間家賃収入の割合を表します。
表面利回りとほぼ同じと考えられやすいですが、想定利回りは「満室を想定した場合の年間家賃収入」が用いられているため、期待しうる最大の利回りを求められます。
【想定利回りの計算方法】
想定利回り(%)=( 満室時の年間家賃収入 ÷ 物件価格 ) × 100
不動産広告に記載されている利回りに「想定」と書かれている場合は、現況の空室については考慮されていません。想定利回りだと気付かず、数字だけで物件を購入してみたら空室だらけだったという事態も考えられるため注意が必要です。
実質利回りとは・計算方法は?
実質利回りは、不動産投資にかかる経費を考慮して計算します。年間の家賃収入から費用(管理費や保険料、税金など)を差し引いた実質的な家賃収入を、物件購入時にかかった諸経費を含めた金額で割ることで算出できます。
【実質利回りの計算方法】
実質利回り(%)=( 年間家賃収入 - 諸経費 )÷( 物件価格 + 諸費用 )× 100
実質利回りは、ほかの利回りとは異なり費用を考慮して算出するため、実際のアパート経営の収益に近い数値を表します。
実際のアパート経営でかかる経費は物件によって異なるため、表面利回りや想定利回りの数値が高くても実質利回りの数値とは大きな差が出ることも少なくありません。
表面利回りや想定利回りの数値がどんなに高くても、実質利回りが低い物件は収益性が低いと考えられます。収益性の高い物件を選ぶには、実質利回りを自分でしっかりと計算したうえで数値の高い物件を選びましょう。
アパート経営の利回りの最低ライン
アパート経営において利回りと最低ラインの目安は以下のようになります」。
・実質利回り:5%以上
・最低ライン:3~3.5%程度
ここでは、新築・中古一棟アパートと新築・中古区分ワンルームマンションについて、利回り傾向や目安についてまとめました。
なお、ここで紹介する利回りは一般的な数値です。いずれの不動産も都市部か地方かによって目安となる利回りが異なることをご留意ください。
一棟新築アパートの利回り傾向
新築ゆえに販売価格が高くなるため、新築一棟アパートの利回りは低くなる傾向にあります。
その代わり、いわゆる「新築プレミアム」として中古より家賃を高く設定できるのがメリットです。ただし、エリアの家賃相場からかけ離れた賃料を設定するのはむずかしく、よほど付加価値のある物件でないかぎり賃料にそれほど大きな差をつけることはできないと考えられます。
新築一棟アパートの利回りの目安は、表面利回りは8%程度、実質利回りは4~6%が理想と言われています。
一棟中古アパートの利回り傾向
新築一棟アパートに比べて、価格の安い中古一棟アパートの利回りは高めになることが多いです。また築年数によって物件価格が下がるため表面利回りが高くなるという特徴があります。
ただし中古一棟アパートの場合、修繕費やリフォームなどの費用が増加するため、実質利回りはそれほど高利回りでないことも少なくありません。
都心部の一棟中古アパートの表面利回りの目安は以下のようになります。
・築10年以下:7%程度
・築10~20年:7~8%程度
・築20年以上:9~10%程度
新築ワンルームマンションの利回り傾向
新築ワンルームマンションの利回り傾向は、都市部と地方で異なります。物価の高い都市部ではマンション価格も高いため利回りが低く、物価の安い地方では利回りが高くなっています。
ただし都市部の好立地の新築マンションは、空室リスクが少なく、不動産投資家に人気があるため利回りが多少低くても購入者は多いです。
一方、地方の新築マンションは高利回りにもかかわらず、空室リスクが高くなります。地方の場合、駅周辺や繁華街を除くと賃貸需要が低く、また家賃相場も低いため、利回りが上がりにくいのが理由です。
新築マンションの一般的な表面利回りは6%が理想です。実質利回りに関しては、都心のマンションなどでは3~3.5%が目安です。
中古ワンルームマンションの利回り傾向
新築ワンルームマンションに比べて、購入価格が低い中古ワンルームマンションの利回りは高くなります。ただし、建物の状況によっては修繕やリフォーム・リノベーションなどが必要な場合もあり、実質利回りはそれほど高くない場合もあります。
また中古物件は空室リスクも高くなります。ただし、立地や物件の状態、賃料次第では一定の賃貸需要が見込めます。
首都圏中古ワンルームマンションの表面利回りの目安は以下のようになります。
・築10年以下:5~6%程度
・築10~20年:6~7%程度
・築20年以上:8%程度
利回りの計算例
ここでは、前述の想定利回り、表面利回り、実質利回りについて、実際に数値を当てはめて計算しました。
なお、シミュレーション用の物件価格などの条件は以下になります。
【シミュレーション用 物件情報】
・一棟アパート(築15年)
・物件価格:6,000万円
・購入時の諸費用:420万円
・家賃(月額):4万円
・満室時の年間家賃収入:480万円
・全戸数:10戸
・現在の空室数:1戸
・ランニングコスト(年間):120万円
想定利回りの計算
想定利回りは、満室時の年間家賃収入をもとにして計算します。今回はアパート戸数が10戸、家賃を4万円に設定しているので、年間の家賃収入は480万円です。
想定利回りは諸経費を計算に含めないため、利回りは以下のようになります。
【想定利回り】
( 480万円 ÷ 6,000万円 ) × 100 = 8%
計算の結果、想定利回りは8%となりました。
では次に表面利回りを計算してみましょう。
表面利回りの計算
表面利回りは、空室を反映させて計算します。
今回は、全10戸のうち1戸が空室なので、年間家賃収入は以下のようになります。
9戸 × 4万円 × 12ヶ月 = 432万円(9戸分の年間家賃収入)
では表面利回りを計算してみましょう。
【表面利回り】
( 432万円 ÷ 6,000万円 ) × 100 = 7.2%
表面利回りは想定利回りよりも低い数値になりましたが、まだ高利回り物件の範囲です。
では、経費を反映させる実質利回りはどうなるか見てみましょう。
実質利回りの計算
実質利回りでは、ランニングコスト(費用)を反映させて計算します。今回はランニングコスト(年間)を140万円と設定しましたが、実際には、かかったランニングコストを細かく集計して計算に反映させます。
年間家賃収入から年間ランニングコストを差し引くと以下のようになります。
( 9戸 × 4万円 × 12ヶ月 )- 120万円 = 312万円
ランニングコストを差し引いたところ、年間家賃収入は312万円です。
では実質利回りを計算してみましょう。なお、購入時の諸費用を420万円としています。
【実質利回り】
312万円 ÷ ( 6,000万円+420万円 )× 100 = 4.9 %
今回のシミュレーションでは、実質利回りが約4.9%であることがわかりました。理想とされる5%には、わずかに届きませんでしたが、最低ラインである3.5%を超えていることから、このアパート物件はまずまずの収益性であると考えられます。
空室率の計算方法
実質利回りの計算に「空室率」を用いることで、さらに精度の高い利回りを求めることが可能です。ただし空室率の計算には、実際の空室日数を把握する必要があります。
空室率の計算方法は下記のとおりです。
【空室率の計算方法】
空室率(%) =( 空室部屋数 × 空室日数 )÷( 全部屋数 × 365 )× 100
アパート経営の収入
アパート経営の収入額はどのくらいになるのか気になるところです。
ここでは利回り計算に使用した例を用いて、収入が実際にどのくらいになるのか、計算してみました。
・全10戸の一棟アパート
・月額家賃4万円(満室時年間家賃収入480万円)
・年間ランニングコスト120万円
年間家賃収入から年間ランニングコストを差し引いた額が不動産所得となり、所得税率が決定します。なおここでは満室を想定して計算します。
480万円 – 120万円 = 360万円(不動産所得)
360万円 × 20%(所得税率) – 42万7,500円(控除額) = 29万2,500円(所得税)
360万円 – 29万2,500円 = 330万7,500円
以上のように手元に残る金額は、年額で330万7,500円になりました。
今回は満室を想定しましたが、空室が増えれば当然ですが収入も減ってしまいます。収入を維持するためにも、空室対策をしっかりおこない満室経営を目指しましょう。
アパート経営を成功させるためのポイント
アパート経営を成功させるには、物件選びが非常に重要です。
特に気を付けたいのが立地です。交通アクセスや駅からの距離、近隣にコンビニやスーパーなどの買い物施設があるかといった利便性のよさ、周辺環境はよいかといったポイントを確認しましょう。
またアパートの間取りや設備が賃貸ニーズにあっているか、ターゲットとする入居者層の
見極めなども重要です。
気になる不動産が見つかれば、かならず実質利回りを計算し、綿密な収支シミュレーションをおこない、どのくらいの収益が見込めるかの確認も忘れてはなりません。
物件選びに失敗してしまうと挽回は簡単ではありませんし、買い直しもむずかしいため、物件は慎重に選びましょう。
まとめ
利回りは、アパート経営の収益性を確認するうえで欠かせない指標です。3種類の利回りのひとつである実質利回りは、経費を考慮して算出するため、実際のアパート経営の収益に近い数値が確認できます。
アパート経営をおこなう場合は、物件種別ごとに目安となる利回りを把握し、物件選びの参考にするとよいでしょう。
アパート経営を成功させるためにも、物件選びの際にはかならず利回りを計算し、不動産の収益性を確認しましょう。