アパート経営のリスクと回避策
アパート経営を含めた不動産投資は、長期間に渡って安定した家賃収入を得られることがメリットですが、投資である以上リスクは存在します。
しかし不動産投資のリスクは、あらかじめリスク対策を立てやすいものも少なくありません。
そこで今回は、アパート経営でよくあるリスク10種とその回避方法について解説します。
アパート経営を成功させるためには欠かせないものばかりです。ぜひ、これからアパート経営をおこなう際の参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.立地選定による空室リスク
- 2.経年劣化の放置による空室リスク
- 3.同エリアの参入数増加による空室リスク
- 4.賃料下落リスク
- 5.借入金の返済リスク
- 6.修繕リスク
- 7.入居者による家賃滞納リスク
- 8.入居者とのトラブルリスク
- 9.金利上昇リスク
- 10.オーバーローンリスク
- 11.アパート経営のリスク回避のためのポイント
- 11.1.立地が悪ければ早期の判断を
- 11.2.信頼のできるハウスメーカーの見極め
- 11.3.空室を起こさないための差別化の工夫
- 11.4.自己資金も万が一の際に用意しておく
- 11.5.管理会社選定も重要
- 12.まとめ
- 13.この記事を読んだ方に人気のお役立ち資料一覧
立地選定による空室リスク
アパート経営の成功は、物件の立地選びの段階でほぼ決定すると言っても過言ではありません。それほど、物件の立地は重要なのです。
建物や設備の問題で空室が多い場合は修繕やリノベーションで入居率を上げることは可能かもしれません。しかし、「駅から遠い」や「周辺環境が悪い」など立地が原因の空室は、個人でなんらかの空室対策を取ることが非常に困難です。
そのため、アパート経営をはじめる際は「好立地物件」を選ぶ必要があるのです。一般的に好立地と呼ばれるものは以下のようになります。
・駅から近い
・近くにスーパーやコンビニがある
・日当たりが良い
・周辺環境がよい
・大学が近い
・大きな工場の近く
・再開発の予定がある
駅やコンビニの近くはもちろんですが、大学や大きな工場の近隣などは、そこに通う学生や務めている人を入居ターゲットとすることで賃貸需要を確保できます。
ただし、大学や工場は移転の可能性があるため、そこだけに賃貸需要を依存しないよう注意しましょう。
また、アパート物件を購入するためには物件の概要だけでなく、さまざまなデータをもとに検討する必要があります。
人口流入の程度や競合物件の数、どのような物件に需要があるのか、エリアの入居者ニーズにあっているかなど、データが多ければ多いほど物件の選定に役立ちます。
再開発の情報などもいち早くキャッチすることで、今後の賃貸需要を見越して物件の取得をすることができます。
「これぞ」という物件を見つけたら実際に現地に行き、物件はもちろん周辺環境をよく確認しましょう。紙面や画面ではわからないことがたくさんわかるはずです。
立地選びを間違ったからといって簡単には買いなおせないからこそ、物件は慎重に選ぶことが大事です。
経年劣化の放置による空室リスク
アパートの建物は経年とともに劣化していきます。外観や内部の古さが目立つと入居希望者に敬遠されますし、入居者の退去の原因となり、空室リスクが高まります。
こういった経年劣化を防ぐためには、日頃からこまめにメンテナンスや修繕をおこなうことですが、それだけではフォローできないため、10~15年周期で大規模修繕をおこなう必要があるのです。
大規模修繕は、外壁や屋根塗装、ベランダなどの防水工事、排水管の清掃、設備等の交換と多岐に渡ります。またその費用も高額です。
大規模工事をおこなわず放置することで雨漏りなどが発生してしまうと、さらに入居付けが困難になり空室が増えます。空室が増えると家賃収入は減ってしまい、修繕したくても費用が捻出できない、負のスパイラルに陥ってしまうことも十分考えられます。
そうなってしまう前に、大規模修繕はかならずおこないましょう。
費用に関しては、いずれ来る大規模修繕を見据えて、あらかじめ費用を積み立てて貯めておくとよいでしょう。
同エリアの参入数増加による空室リスク
周辺に競合物件が増えることで空室リスクが高まります。
現在の日本は、少子高齢化の影響から全国的に空き家が増えてる状態であり、それはアパートも例外ではありません。特に地方は空き家の多さが顕著です。 こういった人口が減少傾向のエリアにアパートが増えることで地域におけるアパートが供給過剰になり、空室リスクが発生するのです。
ただでさえも少ない入居希望者の奪い合いになりますが、そうなるとやはり、立地のよい新築・築浅物件が選ばれやすくなります。立地はそれほど悪くなくても、なんの特色のない平凡なアパートは入居付けに苦労することになります。
このようにアパートの供給過剰からくる空室リスクには、アパートの差別化などの対策方法が効果的です。
差別化の方法としては、ペット可や楽器応相談にする、高齢者や外国人受け入れ、人気設備(オートロックや宅配ボックス、24時間ゴミ出し可能、入居者無料のインターネットなど)の導入などが考えられます。
賃料下落リスク
賃料下落リスクは空室がつづくことで起こります。
入居が付かない場合、賃料を下げて入居者募集をおこない、下げた賃料で入居者が見つかったとしても次の入居者が決まらなければ、さらに賃料を下げざるをえないのです。
家賃下落リスクをおさえるためには空室を減らす必要があります。まず、空室になる原因をとらえ、そのうえで適切な空室対策をおこないましょう。
たとえば築古物件では、部屋の間取りが現代の賃貸ニーズにあわなくなったことが原因で空室が増えることがあります。この場合は、賃貸ニーズの高い間取り(2DKを1LDKなどに変更する)にリノベーションすることで入居付けにつながることも少なくありません。
また、建物の維持や老朽化を防ぐことも大事です。
そのためにも日頃からこまめな修繕やメンテナンスを心がけましょう。日常的に手入れをおこなうことでアパート物件を清潔に保つことができ、入居者の満足度につながるため退去の抑止効果も期待できます。
そして定期的に大規模修繕をおこなうことで、長期に渡って安定した入居付けが可能になる建物を維持できるのです。
借入金の返済リスク
アパート経営をはじめる際のアパート建設費用や物件購入費用は、金融機関から融資を受けるのが一般的です。しかし、借入金額があまりにも高額になると、月々のローン返済額も高くなってしまう恐れがあります。
一般的に不動産投資物件に対する融資限度額は、ローン契約者の年収の7~10倍と言われており、年収500万円の人なら3,500~5,000万円程度の借入が可能です。
しかしローン契約者の属性や資産状況によってはそれ以上の融資を引ける可能性があります。
基本的にアパート経営など、不動産投資物件のローン返済は家賃収入からおこないます。健全な賃貸経営をおこなうには、ローンの返済比率(家賃収入に対する返済額の割合)は50%以下が理想です。しかし借入金が大きい場合、返済比率が大きくなり、毎月のキャッシュフローが圧迫される可能性が高くなります。
すると、家賃収入が減ったり費用が増えたりするとキャッシュフローが悪化し、月々のローン返済ができなくなることがあります。
借入金リスクをおさえるには、アパート経営をはじめる前に収支シミュレーションをしっかりとおこない、どんなケースでもローン返済ができる物件を選ぶことが大事です。
また頭金を多く入れて借入額を減らすという方法もあるので覚えておくとよいでしょう。
修繕リスク
アパート経営をはじめれば、建物が新築でも中古でも、ある程度時間が経てば修繕の必要が出てきます。
日常的な軽微な修繕はもちろん、入退去にともなう室内のリフォーム、エアコンや給湯器など設備の交換、老朽化を防ぐためには大規模修繕もおこなわなければなりません。そして、それらの修繕費用は収入を圧迫し大きな修繕リスクとなりかねません。
修繕箇所や修繕費用をゼロにはできませんが、修繕リスクは、あらかじめ修繕費用を積み立てなどで確保することでリスク対策につながります。
特に大規模修繕は、10~15年周期で外壁や屋根塗装をおこなうなど、多額の費用がかかります。大規模修繕は、物件の傷みや老朽化を防ぐためにも欠かせません。できるだけ早い段階から大規模修繕費用を積み立てておくとよいでしょう。
また、日常的な修繕も、突発的な設備故障などで予期せぬ出費を余儀なくされることもあります。こういった通常の修繕費用も大規模修繕費用とは別に積立てておくと、いざというときに安心です。
入居者による家賃滞納リスク
入居者が家賃を払ってくれない家賃滞納リスクは大きな損失につながります。
まず、家賃が入ってきませんし、退去するまでは(家賃を払ってくれるであろう)新しい入居者の募集もできないため機会の損失につながります。
また、実際には家賃を受け取っていないにもかかわらず、会計上は未収金扱いとなり税金の支払い対象となるのです。
しかし、損失はそれだけではありません。
家賃滞納がそのままつづくなら立ち退き請求や、最悪の場合は強制退去を求める明け渡し訴訟をおこなわなければなりません。裁判には弁護士費用だけでも約40万円が必要です。
判決で強制退去となっても、延滞されていた家賃回収は困難な場合が多いです。
場合によっては室内の残置物の処分もおこなう必要もあるため、そうなるとさらに費用が発生します。
家賃滞納リスクの対策方法として、もっとも有効なのは家賃保証会社との契約を入居条件にすることです。家賃保証会社は、万一家賃滞納があっても入居者に代わって家賃を立て替えて大家さんに払ってくれますし、入居者へ家賃の督促もおこなってくれます。
ただし、家賃保証会社と契約する際は、借主(入居者)が保証料を支払わなければなりません。入居時の初期費用が増えてしまうことで、それを避ける入居者もいるため、できるだけ保証料が安く、かつ、信頼できる家賃保証会社を選ぶ必要があります。
入居者とのトラブルリスク
入居者トラブルのリスクはさまざまなケースがあります。
・騒音トラブル
・禁止されているペットの飼育
・ゴミ放置や悪臭
・契約者以外の居住
入居者によるトラブルのリスクを防ぐには、入居審査で「入居者の性格や属性」をしっかりチェックすることです。内見申し込み時の電話対応、内見時の会話などを通じて「常識的な人であるかどうか」判断しましょう。
なお、入居審査は管理会社がおこなうことが多いため、あらかじめ入居者に求める人物像を伝えておくとよいでしょう。
また入居者トラブルが発生した場合は、できるだけ早期解決を心がけることが重要です。時間が経てばたつほど解決がむずかしくなるケースも多く、対応が悪い場合は入居者が退去してしまうこともあるため注意が必要です。
金利上昇リスク
金利変動リスクは、金融機関からの融資を変動金利で受けた場合に発生します。
変動金利で融資を受けた場合、現況では低金利であっても、将来金利が上昇することで毎月のローン返済額も上昇する可能性があるのです。
金利変動リスクによって毎月のローン返済額が上昇すると、キャッシュフローが少なくなったり、家賃収入よりも返済額のほうが大きくなったりすることが考えられます。そうなるとローンの返済が滞り、最悪の場合は物件を差し押さえられてしまい、アパート経営が破たんする危険性もあるのです。
金利の変動は市場の動向などに連動するかたちでおこるため、いつ、どの程度金利の変動が起こるか予測するのは困難です。
金利上昇リスク対策としては、ローン契約の際に固定金利で組む部分を多くするなどの対処が効果的です。また、頭金を多く入れて借入金を少なくすることでリスクの軽減につながります。
オーバーローンリスク
オーバーローンとは、金融機関から融資を受ける際に「頭金なし」、「諸費用を融資額に含む」ローン契約です。
たとえば、5,000万円の物件の融資を受ける場合、頭金500万円、諸費用350万円が必要だとします。この場合、借入金は4,500万円、自己資金からの支払いは850万円です。
これがオーバーローンの場合は、借入金は5,350万円となり、自己資金の支払いは0円になります。
自己資金なしでアパート経営をはじめられるメリットがある反面、借入金が大きくなるため、月々のローン返済がキャッシュフローを圧迫することにつながります。
キャッシュフローに余裕がない状態で空室が発生して収入が減ったり、なんらかの費用が増えたりすると、一気にキャッシュフローがマイナスになることもありうるのです。
そのままキャッシュフローが改善しなければローン返済が滞り、やがてアパート経営の破たんというケースも十分考えられます。
物件の収益力が高く、手元に補填できる資金がある場合はオーバーローンで融資を受けても順調にアパート経営をおこなえるかもしれません。しかし、少しでも収支が狂うと資金繰りが悪くなる場合は、安易なオーバーローンの利用は避けたほうがよいでしょう。
なおローンの種類には、頭金なしで融資を受けられる「フルローン」も存在します。こちは、諸費用は通常通り支払い、頭金は不要というものです。
オーバーローンほどではありませんが、頭金を入れていないことで物件取得費の全額を借入れているので、月々のローン返済額が大きくなるため注意が必要です。
アパート経営のリスク回避のためのポイント
ここではアパート経営のリスクを避けるためのヒントを紹介します。
立地が悪ければ早期の判断を
所有する土地の立地が悪い場合は、できるだけ早く売却するのもリスク対策のひとつです。特に更地は建物がある場合に比べて固定資産税も高額になるため、売却することで納税義務からも解放されます。
もしアパート経営をおこないたいのであれば、土地を売却したお金で賃貸需要の高い好立地物件を購入するとよいでしょう。
前述のように、アパート経営の成否は立地で決まります。
条件の悪い立地で無理にアパート経営をおこなわず、条件のよい土地に買い替えることはアパート経営の成功につながるのです。
信頼のできるハウスメーカーの見極め
アパート建物は、この先何十年にも渡って家賃収入を得るためにも、しっかりした造りの建物を建設する必要があります。
高品質のアパートであれば、それだけ長持ちし、修繕リスク対策につながります。
そのためにもアパートを建設するハウスメーカー選びは慎重におこないましょう。
ハウスメーカーには、さまざまな種類があります。全国展開している大手もあれば、限定したエリアのみで営業する小規模ハウスメーカーもあります。また、建築する建物の得手不得手もハウスメーカーによって異なります。
また価格面にも注意が必要です。パッケージが安い大手でも、パッケージ外のオプションを付けると割高になる場合も少なくありません。
加えて、竣工後のサポート内容も大事なポイントです。補償内容や保証期間などもしっかりチェックしましょう。
まず、ハウスメーカーの候補をあげ、品質・価格・サービス内容などを比較検討し、最終的に信頼できるハウスメーカーを選ぶとよいでしょう。
空室を起こさないための差別化の工夫
競合物件との差別化は空室対策のひとつとして効果が期待できます。
たとえば、最近ではペットを飼育できるアパートも増えていますが、需要に比べてまだまだ数は少ないのが現状です。周辺にペット禁止の物件が多い場合は、ペット可にすることで差別化につながり、新たな入居者層を取り込むことが可能になります。
外国人や高齢者をターゲットにする場合も同様に、周辺環境によって差別化をおこなうことで入居の間口を広げることができるでしょう。
ほかにも差別化に適した方法は多くあります。所有するアパートの立地や周辺環境にあわせて物件に向く差別化を考えてみるとよいでしょう。
自己資金も万が一の際に用意しておく
アパート経営をおこなう際は、初期費用のほか、ある程度の資金を手元に残しておくことも重要です。
たとえば、入居者の退去がつづくと家賃収入が減ると同時に、退去後のリフォームなどの修繕費用が必要になります。修繕費用をキャッシュフローで賄えない場合は、最悪、退去後の状態のまま内見をおこなわねばならず、入居付けがむずかしくなる可能性があります。
自己資金があれば修繕費用を補填できるため、壁紙の張替えやクリーニングなどしっかりおこなえるので、新たな入居者を獲得できる可能性が高くなります。
アパート経営にはさまざまなリスクがありますが、それらリスクを避けたり軽減したりするには自己資金が非常に役立つことを覚えてきましょう。
管理会社選定も重要
管理会社は、入退去管理をはじめ、アパート経営の大部分を担ってくれる大事な存在です。そのため、入居付けに前向きで、空室対策などの相談にも気軽に乗ってくれる、信頼できる管理会社を選びたいものです。
また、担当者の「人となり」も管理会社を選ぶ大事なポイントになります。
管理会社の実績(管理件数や空室率など)や口コミなどを参考にするほか、実際に会社を訪ねて担当者にヒアリングしてみるとよいでしょう。
まとめ
アパート経営で起こりうるリスクとその対策方法について解説しました。
アパート経営のリスクには、空室リスクに由来する場合が多くあります。各種リスクを最小限におさえるためには、まず空室リスク対策を第一に考えるとよいでしょう。
空室リスク対策の一番の方法は「好立地物件」の入手にあります。アパート経営をはじめる際は、とにかく立地のよい物件を選びましょう。
もうひとつ、リスクをおさえる方法として「自己資金を用意しておく」ことも非常に効果的です。
好立地物件と自己資金。まず、この2点を念頭に置き、当記事を参考にしてアパート経営を成功に導いてください。