大家さん必見 学生向けアパート経営でこれから求められること
学生向けアパートは入居者が在学している間は入居が継続されやすく、また入退去の予測を立てやすいことから、不動産投資のなかでも経営しやすい物件と言われています。
しかし少子化と言われる近年、学生向けアパート経営の先行きに不安を感じている大家さんも多いはずです。
そこで今回は、学生向けアパート経営を成功させるための空室対策方法や差別化について解説します。
現在学生向けアパートを経営中の大家さんはもちろん、これから不動産投資をはじめる人も、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.学生向けアパート経営にこれから求められること
- 2.学生向けアパートのメリット・デメリット
- 2.1.在学中に退去の可能性は低い
- 2.2.卒業と同時に退去の可能性はおおいにある
- 2.3.学校自体の移転の可能性も
- 3.学生向けアパートの空室対策で知っておきたいポイント
- 3.1.仲介会社とのパートナーシップの重要性
- 3.2.学生の心を掴むより親御さんの心を
- 3.3.定期的に学生の動向をチェック
- 3.3.1.留学生の受け入れも積極的に
- 3.3.2.在学期間に合わせた定期借家契約も検討
- 4.学生が部屋選びで重視しているポイント
- 4.1.インターネット環境
- 4.2.バス・トイレが分かれているか
- 4.3.防犯面
- 4.4.その他学生のニーズもさまざま 広く認識しておく
- 5.一般的な空室対策も怠らないように
- 5.1.家賃相場を再確認
- 5.2.必ず内見前に部屋を綺麗にしておく
- 6.まとめ
- 7.この記事を読んだ方に人気のお役立ち資料一覧
学生向けアパート経営にこれから求められること
少子高齢化がすすみ18歳人口が減っている現在ですが、実は大学・短大への進学率は上昇傾向にあります。
2020年度の文部科学省の『学校基本調査(確定値)』によると、大学進学率は54.4%で前年度比に対して0.7ポイント上昇しました。
また大学の学部入学生に短期大学(本科)、専門学校の入学生、高等専門学校4年在学生を合わせた進学率についても前年度を0.7ポイント上回る83.5%となり過去最高となっています。
では学生向けアパートなどの賃貸経営は安泰かというと、そう単純ではありません。
近年になり、学部入学生の減少が目立つ郊外の大学キャンパスが都市部へ移転する事例が増えています。加えて地方大学ではなく、都市部の大学へ進学する学生も増加しています。
これにより、学生需要の減った地方や郊外の学生向けアパート経営においては苦戦を強いられる例が少なくありません。
こういった現況を打破するためには、できるだけ早い段階で入居ターゲットの見直しをおこない、周辺の競合物件との差別化を図る必要があると考えられます。
また新型コロナウイルスの影響から、直接の内見や契約に代わり、オンラインでおこなうケースも増加しています。よってそれらに対応する入居者募集方法の見直しも必要です。
今後、学生向けアパート経営をおこなう際は上記のことを踏まえた上で、不動産物件の選定や入居者の募集方法などをよく検討することが重要となるでしょう。
学生向けアパートのメリット・デメリット
学生向けアパート経営を成功させるためは、学生向けアパートのメリットを活かし、デメリットやリスクを最小限におさえる必要があります。そのためにも、まずはメリットとデメリットをしっかりと把握しましょう。
在学中に退去の可能性は低い
学生向け賃貸物件の入退去時期は、ほぼ決まっています。4年制大学なら4年間、短大や専門学校であれば2年間など、在学中は継続して入居する人が多く、途中退去の可能性は低いため一定の入居率を保ちやすい点がメリットになります。
また卒業によって入居者が退去して空室になっても新入生が入居する確率も高いです。
この入退去サイクルに沿って適切に入居者募集や原状回復工事をおこなえば、安定した入居率の確保が可能になります。
卒業と同時に退去の可能性はおおいにある
前述のように、学生向けアパートの入退去時期はほぼ決まっているため、入居者募集や原状回復工事のスケジュールを立てやすいです。
しかし裏を返せば、最長でも4年間で退去する学生は多く、その都度原状回復のためのリノベーションやクリーニングをおこなう必要があり費用がかかります。
また万一入居者が決まらなかった場合、年度途中から学生の入居者を獲得するのはむずかしく、長期間空室になってしまうリスクも考えられます。
こういったリスクを減らすためは、新入生をターゲットした入居者募集をしっかりおこなうことに加えて、原状回復費用をおさえることが大事です。
学校自体の移転の可能性も
大学への進学率が増える一方で、地方大学や郊外にキャンパスを構える学部は定員割れという事態に陥っています。そのためここ数年は、学生獲得のために地方や郊外から利便性のよい都市部へ移転する大学や学部が増加傾向にあります。
それによって学生をおもな入居ターゲットにしていた賃貸物件は入居者を確保できなくなり、大きな危機に陥ったアパート経営者も少なくありませんでした。
このように大部分の賃貸需要を一か所のみに依存した場合、大学が移転したことで学生向けアパートの経営が困難となってしまうのです。
都市部、郊外にかぎらず、賃貸需要をひとつだけに絞るのはリスクが高くなります。大学移転の可能性をあらかじめ調査したうえで、大学の学生向けだけではなく、ほかのターゲットも呼び込めるよう、好立地物件を選ぶことが重要です。
学生向けアパートの空室対策で知っておきたいポイント
ここでは学生向けアパート経営を成功に導くための空室対策のポイントを紹介します。
仲介会社とのパートナーシップの重要性
学生向けアパートの入居者獲得には、仲介会社の協力は欠かせません。
近隣の大学と提携している仲介会社や、学生向け賃貸物件の仲介を得意とする会社、入居付けに積極的な仲介会社に入居者募集を依頼しましょう。
なお学生向け賃貸物件は入退去サイクルが決まっているだけに、周辺の競合物件の動きに負けないよう、できるだけ早い段階から仲介会社と連携しながら入居者獲得に動く必要があります。場合によっては「合格前予約可賃貸物件」の登録を検討してもよいでしょう。
また近年の賃貸物件探しはインターネット検索が主流です。特に大手賃貸ポータルサイトで希望する条件の物件を検索し、気に入った物件を内見後契約するケースが多いです。
そのため大手ポータルサイトへの登録をおこなえる仲介会社をかならず選びましょう。また「学生向け物件」という検索条件から漏れないよう気を付けましょう。
学生の心を掴むより親御さんの心を
学生向け賃貸物件の多くは、学生本人ではなく、家賃を支払う保護者の意向によって入居が決定します。物件の内見なども保護者同伴がほとんどです。
そのため、高校を卒業したばかりの大事な我が子が住まう環境にふさわしいかどうか保護者目線で厳しくチェックされます。
よって学生向けアパートの空室対策は、学生本人だけでなく保護者にも好印象を与えることが重要です。
特に大事なポイントのひとつが防犯面の充実度です。オートロックや防犯カメラが設置された物件は、セキュリティ面で安心できるため保護者に好まれやすいです。また清潔感のある物件も選ばれやすくなるので、建物周辺の手入れや室内はもちろん、共有部の清掃も怠らないようにしましょう。
定期的に学生の動向をチェック
大学側の変化をいち早くキャッチすることで、効率的な入居付けに役立ちます。特に学部の新設や縮小にともなう定員数の変化などは、入居付けに大きな影響があるため非常に重要です。
留学生の受け入れも積極的に
効果的な空室対策方法のひとつが競合物件との「差別化」です。
なかでも学生向けアパートでは、外国人留学生を受け入れることで近隣の競合物件との差別化につながることが期待できます。
文部科学省が2021年3月30日に発表した、「外国人留学生在籍状況調査」によると、2020年5月1日時点の外国人留学生数は27万9,597人でした。
新型コロナウイルス感染症による影響で前年(2019年)よりも減少しましたが、それでも相当数の留学生が日本に居住しています。
参考:文科省『「外国人留学生在籍状況調査」及び「日本人の海外留学者数」等について』
また、少し前の資料ですが平成25年に文科省でおこなわれた「留学生の住環境の現状」の調査では、日本に居住する外国人留学生の77%が民間宿舎やアパートに入居していると発表しています。
現況は新型コロナウイルス感染症による影響で留学生が減少していますが、2022年3月9日の記者会見で松野官房長官は、「5月末までには希望する外国人留学生の相当程度が、入国できるようになると」いう見通しを発言しました。
こういった背景から今後、来日する外国人留学生が増えることが予想されるため、同時に留学生受け入れが有効な空室対策につながると考えられます。
ただし留学生受け入れには、生活習慣やルールに対する考え方の違いや言語の壁がネックになることが予想できます。それら対策方法をあらかじめ想定し準備したうえで、外国人留学生受け入れをすすめる必要があります。
在学期間に合わせた定期借家契約も検討
学生向け賃貸アパートの効率的な入居付けをするために、「定期借家契約」を利用するのもおすすめです。
定期借家契約とは、あらかじめ取り決めた契約期間の満了にともない契約終了する賃貸契約です。一般的な普通借家契約の場合、借主(入居者)が望めば契約期間の更新がおこなえますが、貸主(大家さん)から正当な理由なしに契約更新を断ることは原則できません。
学生向け賃貸アパートを定期借家契約にすることで以下のようなメリットがあります。
・契約満了時に確実に退去されるので、新規入居募集や原状回復工事のスケジュールが組みやすく、効率的な入居付けができる
・契約期間中は原則として退去できないので家賃収入が確実になる(退去理由がやむ負えない事情の場合はそのかぎりではない)
一方、定期借家契約にはデメリットや注意点があります。
・期間限定の居住なので、相場より賃料を下げないと入居が付かない可能性がある
・家賃滞納などがないかぎり、契約満了まで退去させられない
・契約書とは別にあらかじめ書面を渡して説明する必要がある
・契約満了の1年前から6カ月前までに、貸主から入居者に契約の終了を通知する必要がある
なお、定期借家契約は、貸主と借主双方の合意があれば再契約は可能です。上記を参考にメリットとデメリットを比較検討してみるとよいでしょう。
学生が部屋選びで重視しているポイント
保護者に決定権があるとはいえ、アパートに住む学生にとっても魅力ある物件でなければ選ばれません。
ここでは学生目線で選ばれる物件のポイントを解説します。
インターネット環境
スマホの普及によって、いまや賃貸アパートでもインターネット設備があるのは当然になっています。特に学生は、課題やレポート作成、論文執筆などインターネットを使用する機会が多く、アパートのインターネット環境は必要不可欠です。
なかでも、入居者が無料でインターネットを使用できる「インターネット無料」設備は空室対策方法のひとつとして効果が期待できます。
全国賃貸住宅新聞が毎年おこなっている『入居者に人気の設備ランキング』では、「インターネット無料」が5年連続で1位を獲得するほどの人気設備です。
入居者個人でインターネット契約をおこなう場合、工事費や月額使用料を支払う必要があります。しかしインターネット無料は、費用のすべてを大家さんが支払います。すると入居者の金銭的負担が減るため、学生にとってアパートを選ぶ大きなポイントになるのです。
バス・トイレが分かれているか
学生向けの賃貸アパートには、3点ユニットバス(風呂・トイレ・洗面台)物件が多いため、バスとトイレが独立している物件は選ばれやすくなります。
バスとトイレが別になった物件は、学生・社会人の区別なく人気の設備です。賃貸需要が高まるとともに賃貸物件としての価値も上がり、競合との差別化にもつながるでしょう。
ただし3点ユニットバスの分離工事には、最低でも100万円程度の費用がかかります。また分離工事をおこなうことで、居室部分が狭くなることが考えられます。
分離工事をおこなう際は、メリットとデメリットを踏まえた上で、費用対効果を十分検討する必要があります。
防犯面
学生向けアパートは、安全に子供をひとり暮らしさせたい保護者が物件を選ぶため、防犯面がしっかりした物件が好まれます。オートロックや防犯カメラなど定番のセキュリティのほか、入居者に人気なのがモニター越しに訪問者を確認できる「モニター付きインターホン」です。
また近年では、ドアの開閉をスマートフォンで操作できる「スマートロック」も人気です。スマートロックはあらかじめ設定しておけばオートロックもできるので、鍵をかけ忘れる心配がありません。
こういったセキュリティ面を充実したアパート物件は、学生だけでなく社会人にも需要があるため、入居ターゲットの拡大にもつながります。
その他学生のニーズもさまざま 広く認識しておく
学生向けアパートにかぎらず、築古アパートは入居付けがむずかしいです。そのため入居ターゲット層の賃貸ニーズにあわせてリフォームやリノベーションをしたり、人気の最新設備を導入したりといった空室対策をおこなう必要があります。
たとえば、畳敷きの和室は若い学生には敬遠されやすいです。畳敷の床をフローリングにし、押入れをクローゼットにして和室を洋室にリノベーションすると入居付けがしやすくなります。ベランダの洗濯機置き場を室内に設置する、中途半端な1Kを広めのワンルームにするなどの方法が考えられます。
また宅配ボックスや24時間利用可能なゴミ置き場などの設備も、学生を含めた単身者に人気です。
ただしリノベーション工事や設備の追加には、多額の費用がかかる場合もあります。前述の3点ユニットバス分離工事同様、費用対効果を考慮するとよいでしょう。
一般的な空室対策も怠らないように
リフォームやリノベーション、設備の追加をする前に、所有するアパートの現況を見直すことも重要です。
家賃相場を再確認
アパート経営を長年おこなっているうちに、周辺の競合物件が増加し、それにともなって家賃相場が変動している場合も少なくありません。
特に以前よりも入居付けがきびしくなったと感じたら、まずは周辺の家賃相場を確認してみましょう。
調べ方は、入居募集を依頼している仲介会社に尋ねるほか、インターネットで賃貸大手ポータルサイトの「家賃相場」を確認するとよいでしょう。
家賃相場と同時に競合物件の設備なども調べたいときは、賃貸大手ポータルサイトで所有するアパートと同じ条件(家賃以外、エリア、建物の種類、間取り、広さ、駅からの距離、設備etc.)で物件検索をしてみましょう。検索結果から家賃額だけでなく、所有する物件の設備や利便性など、周辺の競合物件を比較・確認ができます。
もし相場家賃よりも高額な場合は、相場にあわせて家賃を引き下げることで入居付けが容易になる可能性も十分考えられます。
必ず内見前に部屋を綺麗にしておく
入居希望者にできるだけ好印象を持ってもらえるよう、内見前には室内の清掃や空気の入れ替えをおこないましょう。退去後にクリーニングをおこなった場合でも、締め切った室内は埃っぽくなったり、空気が澱んだり、排水溝から臭気が上がったりします。
また内見者を迎えるにあたって、内見用のスリッパの用意や内見時間にあわせてエアコンをつけて室内の温度を快適にするなどの心遣いも効果的です。。
さらに入居希望者が最初に目にする、アパートの外観やエントランスなどの共有部をきれいにしておくことも忘れてはなりません。内見の有無にかかわらず、日頃から定期的に清掃をおこない、住みやすい環境をつくっておくことも大事です。
まとめ
学生をターゲットにすることで、安定した入居需要が見込めるのは学生向けアパート経営のメリットです。しかし一方で、大学の移転などで入居ターゲットの学生がいなくなってしまうと、入居付けがむずかしくなるというデメリットがあります。
また、入居付けがむずかしくなってきたら、リノベーションや設備投資をおこなう前に周辺の家賃相場を確認してみましょう。長年、家賃額を見直していない場合、周辺の競合物件の増加などにともない、設定した家賃が相場にそぐわなくなっている可能性もあります。
学生向けのアパート経営を成功させるには、賃貸需要をひとつだけに依存せず、また学生以外の入居者を引き込めるような物件にすることで、より安定した収益を得ることが可能になります。