空き家や空きビル・空室の活用方法は?ビジネスへの活用事例
人口の減少や少子高齢化にともない、全国各地で空きビルや空き家、空室が増えています。
空室期間がつづくと収益は減少してしまいますが毎月の維持費用は支払う必要があるため、キャッシュフローの悪化が懸念されます。
また、使用していない建物は老朽化が早まる傾向にあるため、できるだけ早くなんらかの空室対策が必要です。
しかし、退去後に通常通りの原状回復工事やクリーニングをおこなっても入居者がなかなか決まらない……。そんな時は視点を変えて、いつもとは違う空室対策方法に目を向けてみましょう。
今回は、空き家や空きビルの空室を活用する方法を11種類紹介します。ほんのわずかなスペースで収益を得たり、リノベーションで物件を生まれ変わらせたり、空室活用方法の事例をぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.空き家や空きビル・空室を持て余している状況
- 2.空き家や空きビル・空室の有効活用例
- 2.1.トランクルーム
- 2.2.貸し会議室
- 2.3.レンタルオフィスやサテライトオフィス
- 2.4.シェアオフィス
- 2.5.民泊
- 2.6.サブスクリプション住宅
- 2.7.物置シェア
- 2.8.貸し農園
- 2.9.小スペースビジネス
- 2.10.太陽光発電
- 2.11.携帯電話の基地局
- 3.まとめ
- 4.この記事を読んだ方に人気のお役立ち資料一覧
空き家や空きビル・空室を持て余している状況
人口減少や少子高齢化に加えてコロナウイルスの影響などを受け、全国各地で賃貸物件の空室や空き家が増加しています。
総務省が平成30年におこなった土地統計調査結果では、全国の空き家数は846万個にものぼり、そのうち賃貸用の住宅の空き家は431万戸と、前回調査の平成25年より2万戸増加していました。
参考:総務省統計局『平成 30 年住宅・土地統計調査住宅数概数集計結果の概要』
この時点での空き家率は全国平均で13.6%だったことから、現在(令和4年3月)では空き家はさらに増えていると予測できます。
空き家になった建物は長期間使用されないことで老朽化が早まる傾向にあります。老朽化がすすんだ空き家は、地震や台風などで倒壊の危険性も考えられるため、行政から指導が来る場合があります。
しかし解体には費用がかかりますし、売却したくても買手が付くとは限らず、結局放置したままというケースも少なくないようです。
放置状態がつづき「特定空家」に指定されてしまうと、「住宅用地の特例」が適用されなくなるため固定資産税があがってしまいます。
このように、解体も売ることもできない空き家などを持て余しながらも、しかたなく維持費用を支払いつづけている大家さんは多いのではないでしょうか。
しかし空き家を維持していくコストなどの負担を考えた場合、先延ばしにせず、できるだけ早い段階で空き家をどうするか決定する必要があります。
空き家や空きビル・空室の有効活用例
前述のように、空室などの空き物件を所有していても維持コストがかさむばかりで、よいことはひとつもありません。
最終的には売却することになるかもしれませんが、その前に少しでも空き家を活用して収益を得られる方法がないか探してみてはいかがでしょうか。
ここでは通常の賃貸とは異なる空き家の活用方法を11種類紹介します。ぜひ参考にしてください。
トランクルーム
「トランクルーム」とは、大小問わず、荷物を預けておける貸しスペースを指します。
トランクルーム市場はこの10数年で急激に成長し、2019年には650億円規模へと大きく拡大しています。
今後もテレワークの普及やオフィス縮小にともないトランクルームの利用者ニーズはさらに拡大する見込みで、2025年には1,000億円を超える規模へと成長が期待されています。
参考:株式会社キュラーズ
トランクルームには、更地に並べたコンテナを倉庫として貸し出すタイプの「屋外型」、建物内部をいくつかの部屋に区切ったタイプの「屋内型」の2種類があります。
なお、トランクルームの想定利回りは、屋外型トランクルームで14%~18%ほど、屋内型トランクルームは15%~20%程度と高利回りが期待できます。
トランクルーム経営は自分自身で経営する場合を除き、ほとんどの場合はトランクルーム業者に土地またはトランクルームを貸し出して、地代や毎月固定の賃料を受け取ります。
トランクルームは居住用物件に向かない土地(日当たりが悪い、幹線道路沿いで騒音がひどい、変形地など)でも経営に支障がないことがメリットです。
また、トランクルーム経営に必要な初期費用は500万円程度と住居用不動産の取得に比べると安価ですし、業者とサブリース契約を結べば初期費用0円ではじめられます。
一方デメリットとしては、トランクルームは固定資産税の小規模宅地等の特例の適用外なので、節税効果を見込めないことです。またトランクルーム需要の低いエリアでは業者が付かない場合があります。
貸し会議室
コロナ禍をきっかけにリモートワークが普及し、オフィスを縮小する企業も増えました。そういった企業は必要に応じて、会議や研修用のスペースを借りておこなうことから、貸し会議室の需要が大幅に伸びています。
なお、貸し会議室を利用するのは会社だけでなく、個人同士の趣味の集まりや習い事、勉強会などで使用するケースも増えています。
貸し会議室を運営するには、所有する物件をレンタルスペース業者にサブリースし毎月一定額の賃料を受け取る方法のほか、運営だけ、または管理だけを業者に任せるなど、さまざまなパターンがあります。
もちろん、オーナー自身が貸し会議室を運営することも可能です。
業者にサブリースするメリットは、家賃保証があるので会議室の利用の有無にかかわらず、毎月一定額の家賃を受け取れることです。また設備費用の負担、運営・管理のすべてを業者がおこなってくれるため、オーナー自身はなにもせずに済みます。その代わり、会議室がフル稼働しても受け取れる賃料は増えません。
オーナー自身で貸し会議室を運営すれば、使用料の全額を自分の収入にできますが、備品の購入費用が必要です。また宣伝や管理などの手間がかかります。
なお、貸し会議室の収入は物件の立地や間取り、利用目的によって1時間あたりの使用料が変動します。たとえば1時間あたり1,000円で貸し出し、1日12時間稼働した場合の1ヶ月の収入は36万円になります。
所有する物件が会議以外、たとえばパーティなどに利用できる場合は、さらに高額の使用料を設定することも可能です。
レンタルオフィスやサテライトオフィス
レンタルオフィスとは、フロアのなかにいくつかの個室を作り、小規模オフィスとして個人や企業に貸し出すスペースを指します。個室の広さはデスクが1、2台置ける程度の広さです。
サテライトオフィスとは、本来は本社などから離れた場所に設置された小規模のオフィスを指します。本社から離れた場所で業務が必要なときなどに支社や支店の代わりに置かれる場合が多く、衛星(サテライト)的な立ち位置から、このように呼ばれています。
会社に決められた会社以外の場所で、モバイルワークをするイメージです。
なおサテライトオフィスとして、レンタルオフィスの1画やマンションの1室などを借りる企業もあります
所有する空き家をレンタルオフィスやサテライトオフィスとして活用するメリットは、物件1棟全部を活用できるという点です。サテライトオフィスとして貸し出すなら、所有する区分マンションでも問題ありません。
デメリットは、レンタルオフィス用にリノベーションをおこなう必要があるため、工事費用や備品の設置費用がかかる点があげられます。
備品類はオーナーが用意する場合が多く、各オフィスに設置するデスクや椅子、棚などのほか、会議スペースの椅子やテーブル、Wi-Fi設備、複合コピー機などが必要です。
なおレンタルオフィスやサテライトオフィスの賃料は、立地やスペースの広さ、サービス内容によって幅があります。
また物件の立地によっては、オフィスとしての利用者が少ない場合もあるため、まずは需要の有無を調べる必要があります。
シェアオフィス
働き方改革やコロナウイルスの影響で、テレワーカーやフリーランスで働く人が増加し、それにともなってシェアオフィスの件数も増えています。
シェアオフィスとは、オープンスペースを複数の人がオフィスとして共有する空間を指します。カフェのようなスペースで個々が仕事をしているイメージです。
レンタルオフィスとの違いは「専用の個室が用意されていない」ことです。なお、簡易なパーテーションでスペースが区切られているタイプや、別料金で個別のブースが利用できるシェアオフィスもあります。
シェアオフィス運営のメリットは、手頃な料金で利用できるため、利用者を呼び込みやすいことです。
デメリットとしては、リノベーションが必要なこと、備品などの費用がかかる点です。また立地によっては利用者を獲得しにくいため注意が必要です。
シェアオフィス運営時の収入額は、施設の規模や設備内容によって変動します。利用料金の相場は、月額料金で8,000~40,000円、一時利用で500円~/1h程度です。
民泊
民泊とは、個人宅の一部やアパート・マンションの空室などを宿泊用施設として利用する宿泊形態を指します。海外では、すでに旅行者の宿泊形態のひとつとして定着しています。
日本でも2018年6月15日に施行された「住宅宿泊事業法(民泊新法)」によって、民泊営業を届け出のみでおこなえるようになり、全国で民泊経営件数が増加しました。
民泊経営は、一般的な賃貸経営に比べて高利回りが期待できる点がメリットです。宿泊料を1泊あたりで設定することができるため、同じ条件の部屋を通常通り賃貸した場合よりも多くの利益を得ることが可能です。
たとえば、月額家賃7万円の区分マンションの年間家賃額は84万円です。1泊あたり6,000円として民泊の営業可能日数である180日間フル稼働した場合の収入額は108万円となり、通常の賃貸よりも収入が増える計算になります。
設定した宿泊料金や稼働率によって収入額は変動しますが、上手に運用できれば通常の家賃収入の2倍程度の収益も期待できます。
デメリットは、民泊を経営するためにはさまざまなルールがあり、また営業には要件を満たす必要があることです。
たとえば、前述のように民泊新法における営業日数の上限は180日となっているため、それを超えての営業はできません。
また民泊をおこなう住居(物件)には、以下の要件があります。
・台所、浴室、トイレ、洗面設備が備え付けられていること
・人の生活の本拠として使用されている家屋
・入居募集がおこなわれている家屋
・住宅の所有者や賃借人、転借人の居住の用に供されている家屋
民泊として使用する物件が賃貸物件の場合、入居者募集中の合間に民泊として貸し出すことはできません。また、購入後一度も居住用として使用されていない物件も民泊に使用できないため注意が必要です。
サブスクリプション住宅
サブスクリプション住宅とは、一定額を支払うことでマンションや一軒家など住む場所を自由に選び、居住できる「定額制住み放題サービス」を指します。イメージとしては、「住む」というよりも「滞在する」形が近いかもしれません。
定住地を決めずに旅行気分で自由に移動しながら仕事をすることができるため、また
敷金や礼金などの費用がかからないことから、近年人気が高まり、利用者が増えています。
サブスクリプションの対象となる住居は運営会社によって異なり、区分マンションや戸建てのほか、シェアハウスなどさまざまです。
サブスクリプション住宅であれば、通常の賃貸需要が低い立地でも選ばれる可能性があります。たとえば田舎の一軒家などは、「ちょっとだけ住んでみたい」という理由から利用者に人気です。
ただしサブスクリプション住宅は、2020年にはじまったばかりの新しいサービスのため、物件オーナーにとってのメリット・デメリットなどが詳しくわかるのはこれからです。
強力な空室対策の一角となるのか、今後の動向を注意深く見守りましょう。
物置シェア
物置シェアとは、荷物を預けたい人に空室や空きビルのスペースを1畳単位などで物置として貸し出すサービスです。
おもな利用方法は「収納スペースのシェアリングサービス」に登録し、貸したい人からの連絡を待ちます。貸したい人から連絡が来たら、預かる日程や料金を相談し、双方が納得すれば商談成立です
物置シェアのメリットは、本当に室内の一角を「物置」として使用するだけなので、トランクルームのようにコンテナや個室をつくる必要がないことです。一棟アパートの1室でも、空きビルの一角でもそのまま活用できます。
また、搬入搬出は預ける側がおこないますし、預かった荷物に対しては保険が掛けられているので安心して預かれます。
デメリットは、預けたい人が近隣にいない場合は収入にならないことです。また物置シェアの1畳あたりの料金相場は5,000円前後ですが、地方によっては相場が低くなる場合があります。
しかし空室で家賃収入0円状態がつづくようであれば、わずかでも収入を得られる物置シェアを試してみる価値はあると考えられます。
貸し農園
その名前のとおり、空いている農地を農園として貸し出します。
都市部では、「庭が狭いけど野菜をつくってみたい」という人に向けた貸し農園が点在しており、かなりの人気です。
ただし、農地は農地法での農業目的以外の使用が制限されているため、そのままでは貸し農園として貸し出しができない場合があります。
空いている農地を貸し農園にするには以下の方法があります。
・専門業者に業務委託する
・特定農地貸付法による方法
・農園利用方式による方法
・市民農園整備促進法による方法
専門業者に業務委託すれば、計画、準備、運営のすべてを任せられるのでオーナーの手間はかりません。
また業者に委託する以外の方法で貸し農園(市民農園)にするには、いくつかの条件があります。営利目的の栽培でないことや貸付期間などのほか、開設のために農業委員会の承認を得るケースもあります。
なお、貸し農園で得られる利益は、1区画あたりの広さやエリアによっても異なりますが、月額5,000~10,000円ほどが相場です。
農地は農地法での農業目的以外の使用が制限されていると書きましたが、農地を転用して違う用途で使うのは特にむずかしく、また売却も買手が付ないことも考えられます。
このように持て余したままの農地があるなら、毎月少しでも収益が出るよう、貸し農園として活用することを検討してはいかがでしょうか。
小スペースビジネス
わずかな小スペースを、インターネットなどを通じて貸し出すことができる仕組みを「スペースシェアリング」と言います。前述の「物置シェア」もスペースシェアリングの一種です。
スペースシェアリングは、スペースの広さや立地によって、さまざまな目的でシェアがおこなわれます。
スペースシェアリングには、おもに以下のような種類があります。
・物品販売向けスペース
雑貨や衣類などを販売します。
・飲食向けスペース
ランチワゴンやテントにて飲食物を販売します。
・マーケティング向けスペース
さまざまなジャンルのセールスやプロモーションをおこないます。
・告知・宣伝
スペースを広告枠として活用します。
スペースシェアリングのメリットは、ほんのわずかなスペースでも活用できる可能性があることで、上記の告知・宣伝などがよい例です。また自動販売機の設置なども、ごく限られたスペースでよく見られます。
デメリットは、立地によってはシェアの需要がないことです。
スペースシェアリング収入は立地や広さによって異なります。たとえば、飲食向けのスペースであれば、およそ数千円~2万円/日程度が相場です。
所有する空き物件の屋上に看板を設置したり、アパート前のスペースに自動販売機を設置したり、わずかでも収益を得られるチャンスです。
太陽光発電
太陽光パネルなどを所有する物件の屋根や屋上、空き地などに設置して、発電した電力を売ることで利益を得ます。
太陽光発電をおこなうには、所有する土地に設置した太陽光パネルで発電し電力を売る「自営方式」のほか、土地を事業者に貸して賃料を得る「土地貸し方式」があります。
土地貸し方式は、太陽光発電に必要な設備は事業者が負担するため、初期費用がかからないのがメリットになります。ただし、収益は自営式よりも落ちるのが一般的です。
自営方式で電力を売る場合のメリットは、「固定価格買取制度」があり、一定量の発電力があれば10年または20年のあいだ固定価格で買い取ってくれる点です。価格は発電量によって異なりますが、1kWhあたり10~17円になります。デメリットは太陽光パネルを設置するための費用負担です。
売電で大儲けはできませんが、今後はさらに再生エネルギーの利用が増える可能性が高いことから、いまから太陽光発電の可能性を調べておくと、近い将来役立つかもしれません。
携帯電話の基地局
所有する物件の屋上に携帯電話の基地局としてアンテナを設置することで賃料を得られます。
ただしアンテナ設置は、基地局として需要があるか電波の受信状況がよいかなど設置の条件があるため、希望してもかならずしも設置できるわけではありません。
アンテナの設置に関しては、携帯会社から提案される場合と、オーナーから申し込む方法があります。
オーナーから申し込む場合は、屋上を活用したいオーナーと屋上を使用した業者をつなぐマッチングアプリなどを利用すると、条件のあう業者を紹介してくれます。
アンテナ設置で得られる額は、5~20万円/月程度と言われています。報酬額が高額の場合、アンテナ以外の機器などが同時に取り付けられるようです。
屋上の形状にも条件がありますが、アンテナを設置するだけで月数万円の収入が得られるチャンスなので、一度マッチングアプリを試してみるとよいでしょう。
まとめ
一般的な賃貸物件の空室対策とは違う目線で、空き家や空きビル・空室の活用方法を紹介しました。建物の活用だけでなく、土地や屋上もさまざまな活用方法があるので、使用できるのであれば、収益化を目指すことをおすすめします。
空室や空き家・空きビルは、所有しているだけで維持費用がかかります。売却できない場合は、できるだけ早く空室対策や活用をおこない、1日でも早く収益を得られるようにしましょう。