賃貸物件の入居者はなぜ退去する?解約理由と予防対策とは?
不動産投資をおこなううえで欠かせない「空室対策」ですが、多くの場合、空室対策と聞くと入居付けに重点を置きがちです。
しかし、「入居者に長期間住んでもらう=退去者を出さない」ことは究極の空室対策方法につながるため、非常に重要です。
退去を予防することができれば空室対策につながります。
そこで今回は「退去者を出さない」ことを前提に考え、「退去理由を知る方法」と「理由別の退去予防方法」について解説します。
なかなか長期入居してもらえず悩んでいる大家さんは、ぜひ当記事を参考に、退去理由を究明し、適切な対策をおこなってください。
目次[非表示]
- 1.賃貸物件の入居者の主な退去理由とは?
- 2.退去せず長く住んでもらうためにできること
- 2.1.退去者向けアンケートの実施
- 2.2.入居者とのコミュニケーション
- 2.3.長期入居特典の付与
- 3.建物に対する不満の解消
- 3.1.建物の修繕設備の交換
- 3.2.部屋に付加価値をつける
- 4.隣人トラブルの解消
- 4.1.契約時にルールを設ける
- 4.2.入居審査を厳しく行う
- 4.3.掲示板、各入居者への連絡
- 5.家賃や条件への不満の解決策
- 5.1.周辺相場を調べ適切な家賃設定をする
- 5.2.更新料の廃止/値下げの検討
- 5.3.ほか条件の緩和検討
- 6.立地に対する不満の解消
- 6.1.物件購入時に立地を正しく選定する
- 6.2.立地以外の訴求ポイントを作る
- 7.費用対効果を適切に判断することが大事
- 8.退去理由と予防策まとめ
賃貸物件の入居者の主な退去理由とは?
入居者が退去するにはさまざまな理由があります。
転勤や結婚などライフスタイルの変化といった、やむ負えない事情の場合は仕方ありませんが、住環境や金銭面でなんらかの不満が退去理由であることは非常に多いと考えられます。
では、どのような不満を感じた場合、入居者は退去を考えるのでしょうか?
ここでは一般的な退去理由について紹介します。
建物に対する不満
退去理由のひとつに、建物の古さや導入されている設備、共有部などに不満がある場合があります。
建物は年月とともに老朽化するため、それにあわせて修繕をおこなう、家賃を下げるなどの対策が必要です。
しかし、大家さんはしっかり対策をしたつもりでも、入居者が「家賃が高すぎる」と感じた場合は、同じ家賃で住める築浅の物件を見つけて退去してしまう可能性があります。
また、設備の劣化によって不具合が頻繁に起こる場合や、建物の防音が不十分で電車や車の通行音が気になるなど、不便に感じる部分が原因で退去することも考えられます。
共有部についても同様で、エントランスや建物周辺の清掃が不十分だったり、駐輪場やゴミ置き場が乱雑だったり、生活する上での不快感が退去理由になる場合も多いです。
立地に対する不満
立地については入居者も納得した上で入居しているはずですが、実際に住んでみると思った以上にストレスだったことから退去する例もあります。
駅や買い物施設が遠い、交通量が多い幹線道路と隣接していて騒音や排ガスがひどくて窓が開けられないなど、日常的に不便や我慢を強いられることが退去理由につながります。
隣人への不満
近隣住民が原因で退去してしまう事例もあります。
一番多いのが騒音被害です。
夜遅くまで騒いでいる、深夜に洗濯機や掃除機を使用している、楽器の演奏音やペットの鳴き声がうるさいなどが該当します。
また、ゴミの分別をしなかったり回収日以外に出したりといった、隣人のマナー違反や迷惑行為から退去する人もいます。
退去せず長く住んでもらうためにできること
退去を防ぐには、退去の原因を取り除くことで長期入居してもらえる可能性が高まります。そのためには退去の理由を把握し、退去される前に不満の芽を摘んでしまう必要があります。
退去者向けアンケートの実施
退去理由を把握するための方法としては「退去者アンケート」がおすすめです。
退去予定者を対象にすることで本音が聞きやすく、大家さんや管理会社が気付かない物件の弱みや問題点を把握することができるので、今後の退去を防止する対策方法を考えるヒントになります。
なお、退去者アンケートを実施する際は、以下の点に気を付けましょう。
・管理会社ではなく大家さんがおこなう(管理会社が退去理由の場合があるため)
・回答者の手間を減らせるよう、選択形式で記述部分を減らす
・小さなお礼を用意する(今までの入居のお礼も兼ねて。300円程度の安価なもの)
入居者とのコミュニケーション
日頃から入居者とのコミュニケーションを心がけておくことで、日常的な挨拶や世間話をしながら「困っていること」や「変わったこと」がないかなど、ヒアリングしやすくなります。
たとえば入居者が、改善して欲しことを大家さんに直接伝え、迅速に対応されれば、不満を解消できると同時に大家さんに対する信頼が増し、結果として退去防止につながるのです。
なお、所有物件が遠方の場合はLINEやメールなどを利用して、いつでも大家さんと連絡を取れるような環境を整えておくと入居者も連絡しやすくなります。
長期入居特典の付与
退去を防ぐため、入居継続年数に応じて特典をプレゼントするのも効果的です。
退去する人の中には、「特に退去理由はないけど、更新料を支払うなら引っ越そう」と考える人は意外に大勢います。
そういった人には、更新時に特典をつけることで入居継続の可能性を上げることができます。
たとえば、更新契約をしてくれた入居者に対して、家具や家電、商品券をプレゼントしたり、1か月分の家賃をフリーレントにしたり、更新料を割り引くなどの方法が有効です。
入居年数の長さによって、特典の価格に差をつけると「お得感」を演出できます。
建物に対する不満の解消
退去理由が明確な場合は、ピンポイントで退去の原因を取り除くことや付加価値を高めることで退去防止につながります。
ここでは、退去理由が「建物」にある場合の対策方法を紹介します。
建物の修繕設備の交換
退去の理由が、建物や設備の不備や故障の場合、生活の利便性にかかわるため、入居者にとって大きな不満点になります。
適宜、修繕をおこなったり交換したりすることで退去理由を排除することにつながります。
また、賃貸物件の一部が使用できなくなった場合の家賃の減額や、賃貸借契約の解除理由になる場合があるため注意が必要です。
参照:国民生活センター『賃貸人の修繕義務と賃借人による修繕/賃借物の一部滅失等による賃料減額』
部屋に付加価値をつける
建物や設備の不満を補うために、部屋の付加価値を高めるもの有効な手段です。
新たな設備を導入するのもよいですが、その場合は費用が発生します。
費用をできるだけかけずに部屋の付加価値を高めるためには、入居者が自由にDIYできる物件(DIY可物件)やペット可物件にする方法があります。
近年愛好者が増えているDIYですが、日本の賃貸物件の多くは退去時に原状回復しなければならず、好きなように部屋を改造することはむずかしいです。
ペット可賃貸も増えてはいますが、まだまだ数が少ないのが現況です。
このように、実施の少ない付加価値を提供することで、競合物件との差別化につながり、入居付けと退去防止、両方に効果が期待できます。
隣人トラブルの解消
退去理由が隣人トラブルの場合、トラブルが深刻化すると被害者側・加害者側の両方とも退去する可能性があるため注意が必要です。
契約時にルールを設ける
隣人トラブルでよくある事例として、騒音やゴミ出しのマナー違反などがあげられます。
隣人トラブルのほとんどは発生してから対処をおこないます。張り紙などで問題が解決する場合もありますが、発生源となる部屋を突き止められず、うやむやになる場合も少なくありません。
そのため、あらかじめ入居ルールを設け、賃貸借契約書に盛り込んでおくとともに、契約時に説明をおこなってルールを徹底してもらうなど、トラブルを未然に防ぐ工夫をするとよいでしょう。
入居審査を厳しく行う
隣人トラブルを未然に防ぐには、入居審査時に家賃滞納のリスクがないかだけでなく、マナーを守れそうな人か、騒音などのトラブルを起こす心配はないかなど、入居希望者の人柄も厳しくチェックしましょう。内見時などの入居希望者の言動、身だしなみをよく見て判断することも重要です。
掲示板、各入居者への連絡
隣人トラブルが発生した場合は、迅速な対応が鉄則です。
まず、共有部の掲示板や各戸にポスティングをおこない「騒音防止のお願い」という形で全入居者に向けて告知しましょう。
騒音の場合、自身が騒音を出している自覚がなく、指摘されることではじめて気が付くことも少なくありません。
ゴミ出しマナーについても、まずは掲示板や各部屋にポスティングで「ゴミ出しマナーのお願い」をしましょう。
その際は、お願いする文章とともに「ゴミ出しのルール」を記載することで、より効果を高めることができます。
貼り紙やポスティングで効果がない場合は、原因となる入居者に個別にお願いすることになります。
その際は、入居者管理を委託している管理会社と相談しながら対応していくとよいでしょう。
家賃や条件への不満の解決策
家賃額など、金銭面での不満は即、退去・引っ越しへとつながる可能性が非常に高いです。
ここでは金額面が退去理由になる場合の解決策を紹介をします。
周辺相場を調べ適切な家賃設定をする
退去理由が「家賃が高い」場合、近隣の家賃相場や競合物件の家賃額を調査し、所有物件の家賃額と比較しましょう。
その結果、周辺よりも明らかに家賃が高額な場合は、次の入居者募集時には家賃の減額を検討するとよいでしょう。
更新料の廃止/値下げの検討
前述のように、特に退去理由はなくても更新を機に退去を決める人は多いです。
これは更新料として賃料の0.5~1ヶ月を支払う必要があるためで、「更新料を払うなら、ゼロゼロ賃貸(敷金・礼金ゼロの賃貸物件)でもっとよい物件へ引っ越そう」と考える人が少なくないためです。
そこで思い切って更新料をゼロにすることを検討してみましょう。
物件そのものに不満がないのであれば、更新料を無料にすることで継続して住むことを選択する人が増える可能性が高まるため、強力な退去防止につながります。
ほか条件の緩和検討
そのほかの金額面での不満としては、管理費などがあげられます。
入居者が支払う管理費は、共有部の清掃や建物のメンテナンスなど充てられますが、支払額に対してサービスが悪いと感じる場合は退去理由のひとつになります。
その場合は、管理委託料の安い管理会社に変更するなど、入居者が負担する管理料の減額を検討するとよいでしょう。
立地に対する不満の解消
立地の悪さが退去理由の場合、立地条件そのものを改善することはむずかしいのが実情です。
しかし、立地が悪い物件でも、付加価値面で退去防止などの空室対策は可能です。
物件購入時に立地を正しく選定する
立地面にかかわる一番の空室対策方法は、不動産投資をはじめる前、収益物件を選ぶ段階で立地のよい物件を選ぶことです。
すでに物件を購入し、賃貸経営を開始している場合は、現在の環境でできうるかぎりの空室対策をおこなう必要があります。
立地以外の訴求ポイントを作る
立地面での不満を解消するには、公共交通機関を利用せずに移動できる、バイクや車の所有を前提に付加価値を高めるとよいでしょう。
雨が当たらない屋根付きのバイク置き場の設置や、物件の戸数分の駐車場の用意などが考えられます。
立地そのものを変更することはできませんが、立地条件が悪いからこその付加価値を入居者に提供することで、効果的な空室対策へとつながるのです。
費用対効果を適切に判断することが大事
退去を防ぐことで空室対策につながることは間違いありませんが、むやみやたらに費用対効果を度外視した方法では効果的な的な空室対策効果につながらず、逆に負債が増えてしまう結果になりかねません。
退去する理由をしっかりと把握し、費用対効果を考慮した上でどのような空室対策をとっていくか、よく検討することが大事です。
退去理由と予防策まとめ
空室対策方法のひとつとして、退去を予防する方法について解説しました。
空室対策では費用対効果が重要です。
退去者アンケートをおこない、退去理由を把握したうえで費用対効果を考慮し、効果的に退去予防をおこないましょう。