賃貸管理における空室期間の平均は?空室期間を短くするためにやるべきことを解説
賃貸アパートやマンションの賃貸管理をおこなううえで、いかに「空室期間を短くするか」は非常に重要なポイントです。空室期間が長くなるには、なんらかの原因が考えられるため、早急の対策が必要となります。
今回は、賃貸物件の空室の原因と、空室期間中にすべきことについて解説します。また平均空室期間と平均入居期間も紹介します。
空室で困ってる大家さんは、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1. 賃貸管理の空室期間と居住期間の平均について
- 2.空室が長引く原因
- 2.1.①相場とかけ離れた家賃設定
- 2.2.②入居条件が厳しすぎる
- 2.3.③内覧の準備が不適切で成約率が下がる
- 2.4.④設備が古い、不十分
- 2.5.⑤競争率が高い
- 3.空室期間にすべきこととは
- 3.1.退去予定日を早めに確認する
- 3.2.新しい入居者の募集をおこなう
- 3.3.設備の点検や修繕・交換
- 3.4.クリーニングや修繕工事
- 3.5.新しい入居者の入居手続き
- 4.まとめ
- 5.この記事を読んだ方に人気のお役立ち資料一覧
賃貸管理の空室期間と居住期間の平均について
賃貸管理をおこなうにあたり、賃料収入が得られない空室期間は極力短くする必要があります。ここでは、平均空室期間と平均居住期間を紹介します。
1. 平均空室期間
賃貸物件は入居者が退去したあとに空室になる期間が必ず存在しますが、平均空室期間はどのくらいなのでしょうか。
【都道府県別 募集期間(平均)】
参考:株式会社タス『賃貸住宅市場レポート2022年2月』
都道府県別「募集期間」2021年12月期のデータでは主要都市の平均募集期間は4~5ヶ月間であり、一番短かったのが東京でですが、それでも募集期間は4.44ヶ月と長期間です。
ほかの府県でも募集期間が5ヶ月以上の場合が多く、愛知県にいたっては6.16ヶ月と半年以上ものあいだ空室がつづいています。これらのデータから、一度退去が決まってしまうとその後は長期の空室期間ができてしまうことがわかります。
ただ、上記データは平均であることから稼働率は賃貸物件によって異なりますし、また繁忙期は空室がすぐに埋まることもめずらしくありません。
いずれにしても空室期間が長引いてしまうときは、空室になる要因を突き止め、なんらかの空室対策が必要であると考えられます。
2. 平均居住期間
空室率に対して、平均的な入居期間はどのくらいなのでしょうか。
【平均居住期間(全国)】
引用:第25回 賃貸住宅市場景況感調査『日管協短観』2020年10月~2021年3月
上記は、2020年度下半期の平均居住期間についての調査結果です。グラフを見ると、入居者の属性によって入居期間に差があることがよくわかります。
まず学生や単身者の平均居住期間は2~4年と短期入居が最も多いです。学生の入居期間が2~4年である理由は在学期間の関係と考えられます。単身者の転居理由は仕事の関係であると予想できます。
一方、4~6年、6年以上の長期間入居の割合が高いのが、ファミリー層と高齢者です。
マイホーム購入などを控えたファミリー層は4~6年の割合が大きくなっているようです。高齢者になると6年以上の入居が全体の6割を超えています。
高齢者は仕事などの転居理由がすくないことや、高齢者受け入れの賃貸物件の少なさから1度入居すると長期入居につながりやすいことがわかります。
空室が長引く原因
賃貸アパートやマンションの空室期間が長引いてしまう原因には、ある程度のパターンがあります。ここでは、空室の原因として考えられる特徴を紹介します。
①相場とかけ離れた家賃設定
家賃が周辺の相場よりも高すぎる場合は入居付けがむずかしく、空室が長引く恐れがあります。
入居希望者にとって「家賃」は物件探しの際の大きな条件のひとつです。そのため、築年数や間取り・グレードなどの条件がほぼ同じ物件を比較した場合、より家賃が安い物件のほうが選ばれやすくなります。
また賃貸物件探しを賃貸ポータルサイトなどでおこなう場合は、あまりにも相場からかけ離れた家賃の物件は検索結果から外れてしまい、候補として目に留まることすらなくなってしまいます。
空室が長引く場合は、現在の家賃が周辺の家賃相場と比較して高すぎないか確認してみましょう。その際は、物件の立地や築年数、間取り、設備内容を考慮して家賃を比較してください。相場の家賃に近づけるだけで入居が決まる場合もあるため、家賃額を見直すことも大事です。
②入居条件が厳しすぎる
高齢者不可・外国人不可・ペット不可・楽器不可など入居条件が厳しすぎると、その分入居者候補の絶対数が少なくなってしまうため空室期間が長引く可能性があります。
特に駅から離れている物件や周辺に嫌悪施設(ゴミ焼却場、火葬場、高圧線鉄塔、墓地など)がある、いわゆる「立地の悪い物件」は、ただでさえも入居付けがむずかしいです。そのため、多少入居条件を緩和しないと入居者が決まらない場合があります。
空室が埋まらないときは、許容できる範囲で入居条件を少し緩めることを検討するのもよいでしょう。
③内覧の準備が不適切で成約率が下がる
内覧数が多いにも関わらず成約に至らない場合は、内覧の準備不足や、物件になんらかの問題があると考えられます。
まず、以下の点を確認してみましょう。
・建物の外観に問題はないか
・共用部の清掃はしっかりおこなわれているか
・室内は清潔に保たれているか
内覧者が最初に目にする外観は特に大事なポイントです。汚れが目立つ場合は高圧洗浄機を使って清掃し、タイルの剥がれなど破損箇所が目立つ場合は修繕しましょう。破損をそのままにしておくと見た目が悪いだけでなく老朽化を早めてしまいます。
共有部や室内が汚れている場合は、あらためてしっかり清掃をおこない清潔な状態を保ちましょう。室内は退去後のクリーニングが済んでいても時間経過によってホコリが積もったり、空気がこもったりしているかもしれません。内覧の前には簡単な清掃や空気の入れ替えをしておくと気持ちよく内覧してもらえます。
また内見者に使ってもらうよう、室内にスリッパを用意したり、空調で室内の温度を調節したり、ほんの少しの気遣いが内見者に好印象を与えます。
なお、清掃や物件の管理が不十分と感じた場合は、管理委託している管理会社の変更も視野に入れるとよいでしょう。
④設備が古い、不十分
入居者が賃貸物件を選ぶポイントのひとつに「設備の充実度」があげられます。そのため、設備が古かったり、あって当然の設備がなかったりなど、設備が原因で空室になってしまう場合があります。
入居者に人気の設備にはトレンドがあります。特にインターネット・Wi-Fi設備は、あって当然であり、逆になければ入居付けは非常にきびしいものとなるでしょう。
また最近では、入居者が無料でインターネットが使える「インターネット無料」設備が入居者に人気です。
引用:全国賃貸住宅新聞『コロナ下でニーズが増えた設備』
人気設備については、上記の「全国賃貸住宅新聞」が毎年おこなっている設備ランキングを参考にしたり、不動産会社に意見を聞いたり情報収集してみるとよいでしょう。
特に周辺の競合物件には導入されている設備が自分の物件に設置していない(または古い)場合は、入居付けに不利になります。競合物件と競えるよう、設備の追加や変更を検討しましょう。
⑤競争率が高い
所有する賃貸物件の周辺に競合物件が多い場合は「供給過多」となり、なかなか空室が埋まらない可能性があります。
特に新築アパートやマンション、リフォーム物件が増えた場合、築年数の経過した物件は入居付けで不利になるため、競争力を高めるための対策をおこなう必要があります。
まず、所有する賃貸物件の「強み」や「不足しているもの」を見きわめ、競合物件と差別化を図りましょう。
入居条件の緩和やフリーレントで入居者の初期費用の軽減や、人気の設備を導入するなど、入居希望者に「住んでみたい」と思ってもらえるようなアピールポイントを増やすとよいでしょう。
空室期間にすべきこととは
ここでは入居者が退去してから新しい入居者を迎えるまでの空室期間中にすべきことを紹介します。入居者がいないからこそできる空室対策もあるので、空室期間を無駄なく活かしましょう。
退去予定日を早めに確認する
入居者の退去予定日を把握できれば、入居中であっても「居住中」物件として入居者を募集することが可能です。そのためには入居者の協力を得て、できるだけ早めに退去の意思確認をおこなうことが重要になります。
一般的な賃貸借契約書では、入居者からの解約通知は1カ月前までとされていますが、契約満了の3ヶ月前あたりに退去予定を確認できれば、その後の原状回復工事や入居募集がスムーズにおこなえます。
特に「繁忙期」である3月に契約満了の場合、前年の12月中に退去予定の確認ができれば、3月入居可能の「居住中」物件として入居募集を開始できます。
退去の有無を事前確認するには、住み心地や要望を尋ねる「入居者アンケート」の実施がおすすめです。アンケートに回答してくれた入居者にはギフトなどの特典を設け、アンケート項目に「退去予定があるか」を記載しておきましょう。
また、契約満了を控えた入居者に「3ヶ月前までに退去予告をしてくれたらお礼を渡す」のも効果的です。
新しい入居者の募集をおこなう
現在の入居者の退去が決まったら、できるだけ早く入居募集を開始しましょう。2~3月の繁忙期には募集開始が1週間違うだけで成約に大きく影響します。
退去が決まっている「入居中物件」として募集する場合は、入居希望者の内見ができないため、募集資料としてできるだけ多くの空室時の物件画像を用意するなど準備も必要です。
設備の点検や修繕・交換
空室になった時点で室内の設備を一通り確認しましょう。
備え付けのエアコンや照明器具、キッチンやバス・洗面台、トイレ、給湯器などの水回り、ドアや窓など、故障や不備があれば交換や修繕をおこないましょう。
クリーニングや修繕工事
入居者の退去後は壁紙の貼り替えや室内クリーニングなど原状回復工事をおこなうのが一般的です。空室期間中は家賃収入が得られないため、新たな入居者を迎えるためにもできるだけ早く工事を終える必要があります。
しかし、4月の入学・就職シーズンを控えた2~3月は、どこの賃貸物件も退去が増えるため原状回復工事を請け負う不動産仲介会社やリフォーム会社の繁忙期にあたります。そのため希望日に工事をしてもらえないことも少なくありません。
繁忙期でも優先して協力してもらえるよう、不動産会社や工事会社とは日頃から良好な関係性を築いておきましょう。また、退去予定を把握できれば、繁忙期前に工事を依頼しておくことも可能です。
なお、大家さんが室内をDIYするケースもみられますが、繁忙期のように時間が勝負の場合は、かぎられた時間内で室内リフォームをおこなうのは非常にむずかしいです。プロ並みのスキルがあれば別ですが、万一失敗してしまうとDIYにかけた費用と時間が無駄になってしまいます。
作業スピードや仕上がり具合から考えても業者に任せたほうが安心です。
新しい入居者の入居手続き
賃貸借契約を結ぶ前に、まずは入居希望者の入居審査をおこないます。
審査項目は以下のようなポイントを審査します。
1:設定した賃料の支払い能力(勤務先や年収、勤続年数など)
2:問題行動の心配のない常識のある人物か(内見時の身なりや言動など)
3連帯保証人情報(勤務先や年収、契約者との関係など)
入居審査をしっかりおこなうことで家賃の滞納や入居者トラブルを避けることにつながります。
なお、不動産業者に管理の業務まで委託している場合、審査は管理会社がおこないますが、それ以外の場合、入居審査は大家さん自身でおこないます。
なお、入居時に家賃保証会社との契約を条件にしている場合は、家賃保証会社も審査をおこないます。不動産会社や大家さんが入居OKでも、家賃保証会社がNGを出す場合もあるため、留意しておきましょう。
まとめ
賃貸物件が空室になる原因や平均空室期間について解説しました。
空室期間が長期化する原因として家賃額や設備不足が考えられるため、家賃の見直しや設備を追加することで、空室の解消につながりやすくなります。
なお、賃貸物件の平均空室期間は4~5ヶ月程度と、予想以上に長期になる可能性があります。入居者の退去予定を事前に把握し、できるだけ早く入居募集をおこなうことで空室期間の短縮につながるでしょう。