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アパート経営の経費を徹底解説!経費で落とせるもの・落とせないものと節税対策のポイント



アパート経営で発生した費用は、確定申告時に経費として計上することで節税につながります。しかし、費用の中には経費にできないケースもあるため注意が必要です。
特にはじめて確定申告をおこなう人は、経費にできるかどうかの判断に迷うことも多いのではないでしょうか。
 
そこで今回はアパート経営の経費として認められるものと認められないものについて解説します。また家事按分の方法や経費を活用した節税テクニックもあわせて紹介します。


目次[非表示]

  1. 1.アパート経営における経費の考え方
    1. 1.1.「アパート経営に直接関係のある費用」であることが基準となる
    2. 1.2.正しく計上すれば節税対策につながる
  2. 2.アパート経営で経費として計上できるもの一覧
    1. 2.1.税金(固定資産税・都市計画税 ほか)
    2. 2.2.減価償却費
    3. 2.3.管理費・管理委託手数料
    4. 2.4.修繕費
      1. 2.4.1.大規模修繕積立金の経費計上のタイミング
    5. 2.5.入居者の募集費用(広告費・宣伝費・仲介手数料など)
    6. 2.6.損害保険料
    7. 2.7.借入金の利息部分
    8. 2.8.専門家への報酬
    9. 2.9.立ち退き料
    10. 2.10.青色専業専従者給与
    11. 2.11.通信費
    12. 2.12.新聞図書費
    13. 2.13.交際費
    14. 2.14.交通費
    15. 2.15.消耗品費
  3. 3.アパート経営で経費として計上できないもの
    1. 3.1.賃貸物件購入代金
    2. 3.2.賃貸物件購入時に発生する仲介手数料
    3. 3.3.団体信用生命保険特約料
    4. 3.4.固定資産税清算金
  4. 4.家事按分で正しい経費を計上する方法
    1. 4.1.家事按分で事業用とプライベート用の経費を割合で分ける
    2. 4.2.家事按分で割合を算出する方法
      1. 4.2.1.面積の割合で算出する
      2. 4.2.2.時間の割合で算出する
      3. 4.2.3.可視化できる割合で算出する
  5. 5.確定申告の基礎知識と経費計上する際の注意点
    1. 5.1.確定申告の流れ
      1. 5.1.1.確定申告に必要な書類を準備する
      2. 5.1.2.決算書または収支内訳書・確定申告書を作成する
    2. 5.2.確定申告の際に必要な書類
    3. 5.3.証拠を残しておく
  6. 6.節税対策としての経費活用法
    1. 6.1.経費はもれなく計上する
    2. 6.2.損益通算で所得税・住民税を節税する
    3. 6.3.法人化することで節税できるケースもある
    4. 6.4.複数のアパートメーカーや建築会社を比較する
  7. 7.まとめ
  8. 8.この記事を読んだ方に人気のお役立ち資料一覧


アパート経営における経費の考え方

アパート経営をおこなう際には、さまざまな費用が発生します。その大部分は経費として計上が可能です。しかし中には経費として認められない費用もあります。
そのため費用によっては経費として計上できる・できないの判断がむずかしいケースもあるでしょう。
 
ここでは、アパート経営で経費になる基準・ならない基準についての考え方を解説します。またアパート経営における経費計上の重要性もあわせて紹介するので、経費への理解を深める際の参考にしてください。


「アパート経営に直接関係のある費用」であることが基準となる

アパート経営で経費になる基準は、「アパート経営に直接関係がある」ことが大前提になっています。
たとえばアパート入居者が退去した後におこなう室内クリーニング費用などはアパート経営に直接関係することが明らかなため、経費として計上することができます。
 
一方でアパート経営と無関係の費用は経費として認められません。
たとえばプライベートで行った旅行の交通費や宿泊代金などは、アパート経営には関係ないため経費として認められないのです。
 
ようするに経費として計上できるか迷った場合は、「その費用がアパート経営に直接関係があったどうか」が判断の基準となります。
 
ただし、アパート経営に関係があっても経費にできない費用は存在します。しかしそれらの費用については、経費計上できない理由がはっきりしていているため迷う心配はありません。
 
詳しくは後述する『アパート経営で経費として計上できないもの』で解説するので、そちらをご覧ください。


正しく計上すれば節税対策につながる

経費を正しく計上することはアパート経営だけでなく、すべての事業において重要です。
 
アパート経営で課税対象となる不動産所得は、年間収入から経費を差し引いて求めます。経費として計上できる費用が多ければ多いほど税金を抑えることができるのです。
 
しかしそれは、経費計上が適切であった場合です。経費として認められない費用を計上してしまうと、ペナルティとして税が課せられるおそれがあります。さらに、悪質だとみなされた場合は刑事罰の対象となる可能性もあるため注意が必要です。
 
反対に経費として認められる費用を計上しなかった場合、本来の納税額より税金を多めに支払うことになり、節税できる機会を失ってしまいます。
 
このように、できるだけ税金を抑えるためには経費にできる費用とできない費用をしっかりと把握して、もれなく経費計上することが大事なのです。


アパート経営で経費として計上できるもの一覧

ここではアパート経営で経費として認められる費用を紹介します。経費計上できる費用は以下のようになります。

  • 税金(固定資産税・都市計画税 ほか)
  • 減価償却費
  • 管理費・管理委託手数料
  • 修繕費
  • 入居者の募集費用(広告費・宣伝費・仲介手数料など)
  • 損害保険料
  • 借入金の利息部分
  • 専門家への報酬
  • 立ち退き料
  • 青色専業専従者給与
  • 通信費
  • 新聞図書費
  • 交通費
  • 交際費  
  • 消耗品費

 
 
それぞれについて詳しく解説します。


税金(固定資産税・都市計画税 ほか)

固定資産税は、毎年1月1日の時点に不動産(土地・家屋)の所有者に課せられる地方税です。不動産だけでなく、償却資産(駐車場舗装・フェンスなど)の所有者にも課せられます。
都市計画税は市街化区域内の土地・家屋に対してかかります。
 
またアパート取得時に発生する印紙税、登録免許税、不動産取得税は、経費として計上することが可能です。
 
ただし、所得税と住民税に関しては、アパート経営をおこなっていなくても収入があれば課せられる税金であるため、経費として認められないため注意しましょう。


減価償却費

減価償却費は、長期間にわたって使用する固定資産の取得額を耐用年数に応じて分割し、毎年計上する費用を言います。
 
アパート経営に置いては建物と設備が減価償却の対象になります。土地は対象になりません。
耐用年数は設備の種類ごとに定められており、建物は構造によって耐用年数が異なります。
たとえば建物が木造の場合、法定耐用年数は22年です。
 
減価償却費は実際の支出がないにもかかわらず経費として計上できるため、強力な節税手段となります。その代わり、償却期間が終了すると計上できる経費が減少するため、急激に所得税の負担が大きくなる可能性があるため注意が必要です。


管理費・管理委託手数料

アパートの管理業務のために支払った費用です。たとえば設備点検にかかった費用やエレベーターの保守点検費用、アパートの管理を業務委託するために管理会社に支払った手数料などが該当します。


修繕費

アパートの建物の破損や設備の故障の際にかかった修理費や交換費です。
また入居者の退去後におこなう室内クリーニングや壁紙などの張り替えにかかる原状回復費(リフォーム費)も修繕費に該当します。
 
ただし、修繕の内容や金額によっては修繕費ではなく、「資本的支出」として減価償却が必要になるケースもあるため注意が必要です。
 
国税庁の『No.1379 修繕費とならないものの判定』によると、「修繕費といわれるものでも、資産の使用可能期間の延長や資産の価値を高めた部分の支出は資本的支出とされる」と定義されています。
 
たとえば、故障した一般的なガス給湯器を追い炊き機能付きの給湯器に交換した場合は修繕費としてではなく、資本的支出として減価償却をおこない減価償却費として毎年の計上が求められるのです。
 
修繕費か資本的支出かについては判断がむずかしい場合も多いため、迷ったときは税理士など専門家に相談することをおすすめします。


大規模修繕積立金の経費計上のタイミング

アパート経営では、建物や設備の価値を維持するために大規模修繕工事をおこなうのが一般的です。大規模修繕工事には高額の費用が発生するため、大規模修繕工事にむけてその費用を毎月の家賃収入から積み立てることが望まれます。
 
では、大規模修繕費として積み立てたお金は、その年の経費として計上できるのでしょうか。原則として、アパート経営における大規模修繕のための修繕積立金は、積み立てている段階では単なる「預金」であるため経費計上はできません。
計上できるのは、実際に大規模修繕工事がおこなわれ、支出があったタイミングになります。
 
ただし、アパートの大規模修繕費の積立てのために「賃貸住宅修繕共済」の掛け金として支払った場合は、その年の経費として計上することが可能です。


入居者の募集費用(広告費・宣伝費・仲介手数料など)

入居者の募集活動にかかった広告費や宣伝費、仲介手数料は経費にすることができます。
 
オンライン広告に掲載するための画像やビデオ撮影の費用や、仲介手数料は別に特別な募集活動をおこなってもらうための広告費(AD)などが該当します。
仲介手数料は、不動産会社の仲介によって賃貸借契約が締結した際、不動産会社に支払う成功報酬です。
 
なお募集活動を不動産会社に依頼した場合だけでなく、オーナー自身でおこなった際に支払った費用も経費計上が可能です。


損害保険料

万が一に備えてアパートで各種保険に加入する際に支払う保険料です。
火災保険や地震保険、施設賠償保険、孤独死保険といった損害保険料は、経費として計上できます。
 
ただし、保険期間を複数年契約にして保険料をまとめて支払っても、その年に経費計上できるのは1年分だけです。
 
たとえば、火災保険を10年契約にし、支払った保険料が120万円だった場合、1年あたりの保険料は12万円分となり、この12万円を10年にわたって経費計上することになります。
120万円全額を1度に経費にできるわけではないので注意しましょう。


借入金の利息部分

アパート経営を始めるにあたって、金融機関から融資を受けた場合、借入金の利息部分は経費として計上できます。ただし経費にできるのは建物分の利息部分のみで、土地分の利息は経費計上できません。
また借入金の元本は経費計上することができないため注意しましょう。


専門家への報酬

税理士や司法書士などにアパート経営に関わる業務を依頼した場合や、入居者トラブルや土地関連の問題などが発生時に弁護士に依頼した際に支払った報酬は、経費として計上できます。
ただし、アパート経営とは関係のない、プライベートな問題で税理士や弁護士に依頼した場合の報酬は経費として認められないため注意しましょう。


立ち退き料

なんらかの理由で入居者に退去してもらいたい場合に支払った立ち退き料は経費にできます。
 
立ち退き料はアパートのオーナーの都合で入居者に退去してほしいときに支払うのが一般的です。たとえば建物の老朽化によるアパートの建て直しや、アパート経営をやめて土地を別の目的で使用する場合などが該当します。
 
なお、家賃の滞納などの契約違反があるなど賃貸借契約を解除できる正当な理由が認められるケースでは立ち退き料は不要です。


青色専業専従者給与

アパートオーナーの家族がアパート経営を手伝っていて給与が発生している場合、家族に支払った給与は「青色専業専従者給与」として経費にできます。ただし、経費として認められるには、以下の要件を満たしている必要があります。

  • 確定申告で青色申告をおこなうこと
  • 事業的規模(「5棟10室」基準)で不動産の貸付をしていること
  • あらかじめ「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署に提出すること
  • 青色申告者と生計を一にする配偶者または親族で15歳以上であること
  • 年間の内6月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事していること
  • 給与設定が妥当な金額であること

 
なお、青色申告をおこなうためには、所轄の税務署に「青色申告承認申請書」を提出しておく必要があります。
上記の要件すべてを満たさない場合は、家族に給与を支払っても経費として認められないため注意しましょう。


通信費

不動産会社や管理会社との連絡に電話や郵便を使用した場合に発生した電話代や切手代などが該当します。
そのほかにも、インターネットを利用してアパート経営に関係のある情報収集をおこなった場合は、インターネット料金も通信費を経費として計上することが可能です。
 
ただし、電話回線やインターネット回線を事業とプライベートで共用している場合、経費として認められるのはアパート経営に関連した部分のみです。
そのため、事業に使用した割合を決めて事業に使用した金額を算出する必要があります。これを「家事按分」と言います。
 
家事按分については、後述する『家事按分で正しい経費を計上する方法』で詳しく解説します。


新聞図書費

アパート経営に関する情報収集や勉強のために購入した新聞や書籍の代金が該当します。
またアパート経営に関する資格取得のための費用も経費にできます。ただし、その資格がアパート経営の業務に必要かどうかで判断されます。
たとえば、宅地建物取引主任士の資格はアパート経営をおこなううえでは直接必要ではないため、経費計上はむずかしいと考えられます。


交際費

アパート経営に関係する人と飲食した際の代金などは交際費として経費として計上することができます。たとえばアパート経営に関係のある不動産管理会社や税理士に贈るお中元やお歳暮などの贈答品や、打ち合わせ時の飲食代などが該当します。
 
また冠婚葬祭で支払った祝儀や香典も経費にできます。このように領収書のない費用については、支出額をメモした覚え書きとともに招待状やあいさつ状などを一緒に保管しておきましょう。


交通費

アパート経営のために移動した際に支払った交通費は経費として計上することができます。たとえば、遠方の物件を見に行くための飛行機代や、セミナーに参加するための電車代などが該当します。
 
また、車を利用した場合は、ガソリン代や駐車料金、高速料金のほか、車検費用や自動車保険料、自動車税なども経費として計上できます。
ただし、車をプライベートでも利用している場合、経費として認められるのはアパート経営に関係した部分のみです。家事按分をおこない、アパート経営で使用した金額を算出しましょう。
 
家事按分については、後述する『家事按分で正しい経費を計上する方法』で詳しく解説します。


消耗品費

ノートやペンなどの文房具のほか、パソコンやプリンター、カメラ、机や椅子など、アパート経営に関係する事務用品は消耗品費として経費にできます。
 
ただし、事務作業に不必要な高スペックで高額なパソコンは消耗品として認められないため注意しましょう。およそ10万円以下であれば消耗品費として計上することができます。
またプライベートと共用する際は家事按分が必要になります。
 
家事按分については、後述する『家事按分で正しい経費を計上する方法』で詳しく解説します。


アパート経営で経費として計上できないもの

アパート経営に関係があっても経費にできないケースもあります。ここではその理由や注意点を解説します。


賃貸物件購入代金

アパートにかぎらず賃貸物件の購入代金は「資本的支出」となるため、経費にはできません。
物件の購入代金のうち建物と設備については減価償却をおこない、減価償却費として一定期間経費として計上することができます。
 
なお、アパートを購入する際に支払った諸費用のうち、損害保険料・不動産取得税・登録免許税・登記費用・司法書士報酬・印紙代・ローン事務手数料・ローン保証料については経費として計上できます。


賃貸物件購入時に発生する仲介手数料

不動産会社の仲介によってアパートなどの賃貸物件を購入した際は、仲介手数料を不動産会社に支払います。
不動産売買に関する仲介手数料は「費用」ではなく「賃貸物件の購入代金」に合算され資本的支出としてみなされ、減価償却されます。したがって経費にはできません。
 
なお仲介手数料は、宅地建物取引業法にて上限額が決められています。400万円を超える物件についての仲介手数料の上限は下記の式で計算できます。
 
仲介手数料の上限額 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税
 
ただし、2024年7月1日より「低廉な空家等の媒介特例」が適用され、売買価格が800万円以下の物件は、一律30万円+消費税(売主・買主の双方を合わせて60万円+消費税)が仲介手数料の上限となります。
 
賃貸借契約締結時に発生する仲介手数料とは扱いが異なるため注意しましょう。


団体信用生命保険特約料

アパートを購入するにあたって金融機関から融資を受ける場合、「団体信用生命保険(団信)」への加入が必要なケースがあります。
団信は、ローンの契約者に万一の事故や病気でローンの返済できなくなった場合に返済義務を免除するという保険です。無借金となったアパートは遺族に引き継がれます。
 
最近では通常の団信よりも補償範囲が広い「特約」付きの団信も増えています。加入は任意で、別途金利の上乗せが必要ですが、がんのほか、心疾患や脳卒中によって所定の状態になった場合に保険の対象となるため注目を集めています。
 
団信の保険料は下記の要件を満たす場合は経費として計上が可能です。
 
①     融資を受ける要件として締結されたものである
②     保険金が債務の弁済にあてられることが担保されている
 
任意で加入する団信特約は、個人の身体の危険があった際への備えであり、アパート経営には直接必要がないとみなされるため特約保険料は経費計上できません
 
ただし、法人が支払った団信特約料は、事業上の経費にすることが可能です。


固定資産税清算金

固定資産税清算金とは、不動産の売買時にその年の固定資産税・都市計画税を、所有日数に応じて買主が売主へ支払うお金を言います。
 
そもそも固定資産税は、その年の1月1日時点で不動産を所有している人に納税義務があります。そのため、年度の途中で不動産を売却した場合でも納税義務者は変わりません。
 
しかし不動産を売却して所有者が変わったのにもかかわらず、元の所有者(売主)が1年分の固定資産税を全額負担するのは不公平と考えられます。
そこで売主と買主で話し合って負担割合を決め、「固定資産税清算金」として支払うのが一般的です。
 
固定資産税に関連する支出ではありますが、固定資産税清算金は経費にすることができません。
なぜなら、年の途中で不動産を売却した場合でも、固定資産税の納税義務者はその年の1月1日時点で不動産を持っていた売主です。
 
買主が固定資産税の精算金を売主に支払った場合でも、それは固定資産税を納税したことにはなりません。そのため経費にできないのです。
固定資産税精算はあくまで不動産売買の条件のひとつであり、購入代金の一部として扱われます。
 
翌年からは物件の所有者となった売主が固定資産税の納税義務者になるため、支払った固定資産税を経費として計上できるようになります。


家事按分で正しい経費を計上する方法

アパート経営で支払った費用を経費として計上する際、プライベートと共用しているものにかかる費用については、アパート経営に使用した費用を算出する必要があります。
これを「家事按分」と言います。
 
ここでは家事按分の方法について解説します。


家事按分で事業用とプライベート用の経費を割合で分ける

家事按分とは、事業とプライベートで共用しているものにかかった費用について事業に使った割合を決め、その額を算出する方法を言います。
 
たとえば、電話料金やインターネット料金などはプライベートを共用しているケースが多いでしょう。また車やパソコン・プリンターなども家事按分が必要な場合があります。
しかし先に述べたように経費として計上できるのがアパート経営に関係した費用のみです。
そのため家事按分で正しい経費を算出する必要があるのです。


家事按分で割合を算出する方法

家事按分でアパート経営の費用割合を出す方法には、以下のような種類があります。

  • 面積の割合で算出する
  • 時間の割合で算出する
  • 可視化できる割合で算出する

 
家事按分する費用の種類に応じて最適な方法で算出しましょう。いずれの方法でも、算出した数字を税務署が認めれば問題はありません。
 
ここでは上記3種類の割合の出し方と家事按分例を紹介します。


面積の割合で算出する

家賃などを家事按分する場合には、面積の割合に応じて家事按分をする方法が向いています。
 
たとえば50㎡の家賃10万円の部屋を住居兼アパート経営の事務所として使用していたとします。
家事按分の割合を求めるには、まず室内のスペースの内、アパート経営関連の業務で使用した分の面積を割り出しましょう。具体的には、業務で利用するデスクや棚などのスペースを算出し、部屋全体の面積から占める割合を算出するのです。
 
業務で利用するスペースが10㎡程度だった場合、50㎡の部屋全体の20%が家事按分の割合になります。
家賃が10万円に家事按分の割合である20%をかけると「10万円×20%=2万円」です。
家事按分をおこなったことで、2万円が経費として計上できるようになりました。


時間の割合で算出する

電話代やインターネット料金などは、利用時間で割合を決めて家事按分されるケースが多いです。
 
インターネット料金を例すると、アパート経営関連の業務でインターネットを利用した時間の割合で算出します。
たとえば1日当たり3時間程度をアパート経営に関する業務でインターネットを使用した場合、3時間÷24時間×100=12.5%となり、この数字が1日当たりのインターネット利用時間を家事按分する際の割合になります。
 
インターネット料金に対して12.5%をかけることで1日あたりのアパート経営で利用したインターネット料金が算出されます。あとは業務日数分の費用を計算し、その金額をアパート経営に関する経費として計上できるようになるのです。


可視化できる割合で算出する

車を家事按分する際は、走行距離を割合として使用できます。
たとえば、1ヶ月間の走行距離が100kmで、そのうちアパート経営の業務での走行距離が60kmだった場合、ガソリン代の60%がアパート経営の経費として計上できるようになります。
 
その場合はアパート経営の業務で移動した距離をメモしたものと、ガソリンを購入した際の領収書を保管しておきましょう。


確定申告の基礎知識と経費計上する際の注意点

アパート経営の経費を計上するためには確定申告が必要です。
サラリーマンにとって確定申告は馴染みが薄いかもしれませんが、アパート経営をおこなううえでは避けて通ることはできません。
 
ここでは確定申告の基礎知識と経費計上する際に注意点を解説します。


確定申告の流れ

確定申告は、原則として毎年2月16日から3月15日が申告期間となります。この期間内に、前年の1月1日から12月31日まで(1年間分)の納税額を申告します。
 
アパート経営で確定申告が必要になるのは、不動産所得が48万円を超える人です。ただしサラリーマンの場合、給与所得とは別に20万円を超える所得があった場合は確定申告が必要になります。
 
確定申告の必要があるにもかかわらず期間内に申告をおこなわなかった場合、無申告税や延滞税などのペナルティが課されるため注意しましょう。


確定申告に必要な書類を準備する

まず確定申告に必要な書類を揃えましょう。
はじめて確定申告をおこなう場合、書類の準備で時間がかかることも多く、書類が揃わず確定申告の期日に間に合わないこともあるため、できるだけ早く準備を始めるとよいでしょう。
 
必要な書類の種類や詳細については、後述する『確定申告の際に必要な書類』で解説します。


決算書または収支内訳書・確定申告書を作成する

確定申告を青色申告でおこなう場合は「青色申告決算書」を、白色申告の場合は「収支内訳書」を作成します。その際はかならず「不動産所得専用」の決算書、または収支内訳書を使用しましょう。
また青色申告で確定申告をおこなう場合は複式簿記で作成する必要があります。
 
次に作成した青色申告決算書または収支内訳書をもとに確定申告書を作成します。
確定申告書には以下のような情報を記入し、納付する税額の計算をおこないます。

  • 収入
  • 経費
  • 社会保険料控除
  • 基礎控除

 
青色申告決算書や収支内訳書、確定申告書の用紙は、下記のいずれかの方法で入手できます。

  • 税務署に直接取りに行く
  • 税務署から郵送で受け取る
  • 申告相談会で受け取る
  • 国税庁のホームページからダウンロードし、印刷する

 
なお国税庁の『確定申告書等作成コーナー』を利用すればパソコン上で青色申告決算書、収支内訳書、確定申告書を作成できます。
 
H4確定申告書を提出する
作成した決算書(または収支内訳書)と確定申告書を提出します。提出は下記いずれかの方法でおこないます。

  • e-Taxで申告する
  • 郵便又は信書便により、所轄税務署又は業務センターに送付する
  • 最寄りの税務署または確定申告会場で直接提出する
  • 最寄りの税務署の時間外収受箱への投函する(窓口が開いている時間帯は投函不可)

 
国税庁ホームページでの「確定申告書等作成コーナー」を利用して青色申告決算書、収支内訳書、確定申告書を作成した場合は、e-Taxによりインターネット経由で送信できます。また印刷して提出することも可能です。


確定申告の際に必要な書類

青色申告決算書、収支内訳書、確定申告書を作成するにあたって、記入の際に必要な書類を揃えましょう。確定申告時に必要になる書類は主に以下のようになります。

  • 源泉徴収票(給与所得がある場合)
  • 賃料入金明細書
  • 賃貸借契約書(敷金と礼金が確認できるもの)
  • 固定資産税の通知書
  • 加入保険の証書
  • 管理委託手数料の領収書
  • 不動産売買契約書
  • 不動産投資ローンの明細書
  • その他の収入が確認できる(給与以外のほかの収入がある場合)
  • 不動産投資に関わる経費の領収書
  • マイナンバーカード(身分証明書)
  • 家賃の送金明細書

 
受ける控除の種類によっては上記以外の書類が必要になるケースもあります。確定申告期間内に提出できるよう必要な書類を把握し、できるだけ早く揃えておくとよいでしょう。


証拠を残しておく

確定申告内容に不明点があった場合は税務署から指摘される可能性があります。よくあるのが「計上された経費の正当性」が指摘されるケースです。
 
そのため、計上した経費がアパート経営に必要な費用であったことを示すための証拠を残しておきましょう。費用を支払った際に受け取った領収書やレシート、出金伝票などを保存しておくと経費として認められやすくなります。
 
出金伝票は、領収書やレシートが発行されない支出を記入する、覚え書きのような役割を持ちます。証拠となるようにできるだけ細かく記入しておくことで、経費として認められやすくなります。以下のような内容を記入しておきましょう。

  • 支払日付
  • 支払った相手の名称
  • 支払った金額
  • 支払理由
  • 一緒にいた人の名前 など

出金伝票は市販されています。書式もさまざまなので、使いやすいものを選ぶとよいでしょう。
 
もし必要な証拠を提出しても経費として認められない場合は、家事按分の割合が高すぎるケースや、そもそもアパート経営とは無関係な費用の可能性もあります。あらためて経費の内容を見直してみるとよいでしょう。


節税対策としての経費活用法

前述したように、確定申告で正しく経費計上することで節税にもつながります。ここでは経費で節税する方法を紹介します。


経費はもれなく計上する

不動産所得は、年間の不動産収入から経費を差し引いて求めます。そのため経費が多いほど、課税される所得金額が圧縮され、納めるべき所得税を軽減することが可能なのです。
 
不動産所得 = 年間の不動産収入 - 年間の経費
 
経費の計上もれがあれば、それだけ節税の機会を失うことになります。経費はもれなく計上して、しっかりと節税につなげましょう。


損益通算で所得税・住民税を節税する

アパート経営で赤字が発生した場合、「損益通算」をおこなうことで所得税や住民税を減らすことが可能です。
損益通算とは、赤字の不動産所得を給与所得などのほかの所得と合算する会計処理のことです。
 
損益通算をすることで、不動産所得の赤字の分だけ課税所得税額が減少するため、先に納付した所得税が還付されるため節税につながります。


法人化することで節税できるケースもある

アパート経営を法人化することで節税につながるケースがあります。
個人に課される所得税は累進課税制のため、アパート経営の収入が増えるとそれだけ課される所得税は増えていきます。
 
個人の場合、課税所得額が900万円を超えると所得税率は33%になりますが、法人税の最高税率は23.4%です。
そのため課税所得額が900万円を超えた場合は法人化することで課せられる税金を抑えることにつながります
 
また、法人は経費にできる幅が広く、赤字を最大9年間繰り越すことができるなど、節税につながるメリットが多いです。
 
ただし法人化するためには費用がかかります。法人化の費用の目安は、株式会社で25~30万円程度、合同会社で10万円~15万円程度です。
加えて法人化した場合、従業員の社会保険加入料の半分を会社が負担しなければなりません。
会計処理も複雑になるため、税理士への支払い報酬が増えるなど、ランニングコストの増加も考えられます。
 
法人化する際には、節税面のメリットとコスト面のデメリットを比較したうえで慎重に判断しましょう。


複数のアパートメーカーや建築会社を比較する

これからアパート経営を始める場合、どういった経費が節税につながるのかといった具体的な節税に関する知識が少ないことがほとんどです
そんなときに頼りになるのが、アパートメーカーや建築会社です。
 
実績のあるアパートメーカーや建築会社は、アパート経営に関する節税ノウハウも豊富なため、節税対策の相談先としておすすめです。
 
まずは複数のアパートメーカーや建設会社に見積もりを依頼して、提供された収支計画を確認して、各々の費用額の妥当性やコスト削減の有無などを比較してみましょう。
複数社の見積り内容を比較することで、それぞれの会社の良し悪しが判断できます。
 
また不明点について丁寧に詳しく説明してくれるか、節税に詳しいかどうかなども、判断ポイントのひとつです。
 
担当者との相性もありますが、信頼できる会社を選ぶことで節税だけでなく、安定したアパート経営をおこなうことにつながるでしょう。


まとめ

アパート経営において、経費にできるものとできないものについて解説しました。一見、経費にできそうな費用が経費として認められないこともあるため、確定申告をおこなう際は注意が必要です。
 
またアパート経営とプライベートで共用している物品にかかった費用については、家事按分をおこなってアパート経営にかかった費用分だけを算出したうえで経費計上することになります。
 
経費をもれなく計上することで節税につながります。節税効果を最大限に得るためにも、経費について理解を深めましょう。

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岩崎
岩崎
不動産ジャンルのライター歴は2年半以上。その間、100本以上のコラム構成・執筆を担当。満室経営を目指す大家さんに役立つ記事をお届けします。

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