【アパート経営】家賃保証のメリットとは?トラブル事例を一挙公開
手間のかかるアパート経営を一切任せられるのがサブリースビジネスです。
一見、「家賃保証」をはじめ、サブリースビジネスの仕組みはオーナーにとって有利なことばかりのように思われますが、そこには落とし穴が…。解釈が難しいサブリース契約の裏まで理解することが成功への秘訣です。
家賃保証と滞納保証、管理委託の違いやトラブル回避術などをご紹介します。
目次[非表示]
- 1.家賃保証と滞納保証、管理委託などの違い
- 2.家賃保証のメリットとは
- 2.1.空室リスクが軽くなる
- 2.2.物件管理の手間が省ける
- 2.3.入居者対応もお任せ
- 3.家賃保証があっても起こったトラブル事例
- 4.家賃保証が悪徳商法と言われる5つの理由
- 4.1.【理由1:家賃の減額】業者の言う家賃保証は30年続かない
- 4.2.【理由2:契約の解除】要求を飲まないと強制解約
- 4.3.【理由3:免責期間】数ヶ月は保証されない家賃
- 4.4.【理由4:業者の倒産】そもそも「保証」の根拠はどこにもない
- 4.5.【理由5:高額な修繕費】建築会社の息のかかったリフォーム会社
- 5.本当に家賃保証は必要?売買契約の前に必要な確認事項
- 5.1.賃貸住宅管理業者登録制度に登録する業者か
- 5.2.周辺の家賃相場と空室率
- 5.3.不利な契約内容になっていないか
- 5.3.1.家賃の見直し時期に関する条項
- 5.3.2.先方都合の解約に関する条項
- 5.3.3.当方都合の解約に関する特約
- 5.3.4.免責期間に関する条項
- 5.3.5.修繕の範囲と費用負担に関する条項
- 6.お飾りの家賃保証に騙されない!企業に依存しないアパート経営
- 7.まとめ
家賃保証と滞納保証、管理委託などの違い
「家賃保証」と「滞納保証」は、空室や滞納があった場合でもサブリース会社から家賃が入金されるシステムになっています。「管理委託」とは、不動産会社に委託料を支払って、管理業務を委託することです。
サブリースの場合、契約している一定期間中は空室や滞納があっても家賃が保証されるので安心ですね。実際には、管理委託を利用する経営者が多いです。
サブリース
サブリースとは、サブリース会社が物件を所有するオーナーから建物を借り上げて、賃料をオーナーに支払うというシステムです。空室があっても、家賃が支払われるのが大きなメリットでしょう。
入居者とサブリース会社間で契約を結び、管理すべてを任せられるため、アパート経営の初心者でも安心なシステムです。
管理委託よりもリスクは大きく軽減できますが、保証料が高いことがデメリットでしょう。
滞納保証
家賃の滞納があった場合でも、サブリース会社から家賃が支払われます。
また、入居者には保証人がいないため、入居者自身の負担で保証契約を結ぶケースが多いです。オーナーが滞納保証を利用するということはほとんどありません。
空室保証
空室保証とは、サブリース会社に保証料を支払うことで一定の家賃が保証されるという仕組みのことです。空室時に収入が減ってしまうことを防ぐためなので、保険のようなものです。
家賃保証料は、周辺相場から求めた家賃がベースに決定されます。保証額は7割~9割位ですが、もっと低い場合もあることを押さえておきましょう。
管理委託
入居者の募集や手続き、家賃の回収など、管理業務を委託することを管理委託と言います。管理委託料は、家賃総額の5%程度です。アパート経営は、管理業務に手間がかかるため、自己管理は困難で、この管理委託を利用する経営者が多いです。
管理委託には、家賃保証や滞納保証がないことを理解しておきましょう。
家賃保証のメリットとは
経営者とサブリース会社との契約は一括借り上げのため、賃料に空室や滞納が影響することはありません。よって、自己管理や管理委託で起きる空室リスクや滞納リスクは回避できます。
家賃収入が安定するということは、ローンの返済にも影響しないというメリットにもなるでしょう。
空室リスクが軽くなる
サブリース契約の最大のメリットは、空室リスクから解放されることです。物件に空室が出た場合でも家賃は保証される仕組みになっています。
保証料は満室時の家賃総額の5%程度です。空室になった場合、オーナー家賃は満室時の家賃の90%程度です。
空室になった場合、資金的にも精神的にも負担が軽くなるのが最も大きなメリットでしょう。
物件管理の手間が省ける
サブリースの場合、物件所有者は管理者にならずに、サブリース会社が管理責任者となります。管理業務全てをサブリース会社に任せることができるシステムです。管理業務の費用もサブリース会社に支払う保証料に含まれます。
アパート経営の中で一番手間のかかる管理業務を任せられるので、サラリーマンや他に本業を持つオーナーはかなりの負担軽減になるでしょう。
入居者対応もお任せ
サブリース契約は、入居者とサブリース会社との契約になります。サブリース会社と入居者がトラブルになった場合、物件所有者との契約には影響がありません。
万が一訴訟問題になった場合でも、物件所有者が訴訟当事者になることはあり得ません。入居者トラブルに強いこともメリットの一つです。
家賃保証があっても起こったトラブル事例
建築請負業A社は、「一括借り上げして30年間家賃を保証する」を武器に、地主たちにアパート建築の巧みな提案をしました。
10年間家賃は変わらないという契約だったのに、リーマンショックによる経営悪化を理由に家賃を減額したため、訴訟トラブルが多発しました。
10年未満で家賃を減額された人たちは1万人以上もいて、悩まされたり追い込まれたりして失敗を嘆いたことでしょう。
《トラブル事例1》シェアハウスブームに便乗するも...
「かぼちゃの馬車」から新生活を始めるはずが…。
「かぼちゃの馬車」とは、スマートデイズが運営していた、女性専用シェアハウスのことです。 「頭金なしで30年間家賃収入を保証」という文句で、多くのオーナーを勧誘しましたが、家賃不払い問題が発覚!
オーナーたちは、スマートデイズなどを相手取り、損害賠償を求めて提訴しました。スマートデイズは、東京地裁に民事再生手続きを棄却された後は、破産手続きです。 オーナー約675名に対する負債は約23億円でした。
《トラブル事例2》地方都市にアパートを建てたが
「10年間は家賃保証という契約にもかかわらず、7年経って16%減額された」。 「家に来て、長時間の交渉があった」。 「地主は、担保として設定していない土地がいつの間にか担保になってしまった」…。
レオパレス物件のオーナーたちからは報告も多く、一部のオーナーはレオパレスに対して、いくつもの訴訟を提起しました。
借地借家法は、基本的には賃借人を保護する内容になっています。賃借人であるサブリース会社の「家賃減額はしない」という文句も無効となってしまう傾向が強いです。
シェアハウスに興味がある大家はこちらの記事も参考にしてください
>>空室対策にシェアハウスは有効【転用までの5ステップ】可能な物件ダメな物件の違いとは
家賃保証が悪徳商法と言われる5つの理由
「30年間一括借り上げで家賃保証をしてくれる!」こんな魅力あるシステムの裏に一体何が…。
- 家賃減額:一括借り上げとは、家賃一律を保証するという意味ではありません。
- 免責期間:入居者を募集する数ヵ月家賃の支払いを免除する期間のことで、1~3ヵ月が一般的です。
- サブリース会社倒産:会社が倒産すると、家賃が支払われなくなります。
- 解約違約金:契約を解約すると、違約金が発生するケースがあります。
- サブリース契約の解除:契約を解除するのは難しく、6ヵ月前までには通知しなくてはならない会社もあります。
【理由1:家賃の減額】業者の言う家賃保証は30年続かない
「最長30年間家賃保証」という売り文句を掲げているので、所有者にとってはメリットのある契約に感じます。
契約して、2年~5年の契約期間後に更新があり、賃料の改定がされることが多いです。契約当初の賃料が保証されることはまずありません。
【理由2:契約の解除】要求を飲まないと強制解約
サブリース業者は、長期的に契約すると利益が取れるため、自由に解約できないように途中解約を禁止するケースがあります。
「6ヵ月前に告知することで解約できる」というのが、国土交通省が定めるサブリース契約のひな形です。
契約更新や解約を巡って裁判になった場合、正当な理由がなければ解約は認められません。しかしながら、それなりの正当理由があれば、強制解約もあり得るでしょう。
【理由3:免責期間】数ヶ月は保証されない家賃
入居者募集中、オーナーへの賃料の支払いを免除するという期間のことで、1~3ヵ月が一般的です。
例えば、免責期間が3ヵ月で、7月1日に契約をした場合、7月~9月の3ヵ月はオーナーへ賃料が支払われません。
また、免責期間には、「免責期間」と「再免責期間」の2種類があって、「再免責期間」は、入居者が退室するたびに免責期間を設けることです。退室が続けば、免責期間後に再度免責期間が訪れることになります。契約の際に、確認しておく必要があります。
【理由4:業者の倒産】そもそも「保証」の根拠はどこにもない
サブリース会社も事業をしている以上、会社倒産は起こり得ます。
サブリース会社が倒産して困るのは、所有者と入居者です。 サブリース会社が倒産した時点で、契約は解除となります。サブリース会社と入居者が結んだ賃貸借契約は、物件の所有者が引き継ぐのが一般的です。 サブリース会社が入居者から預かった敷金などは、回収できないと思っていた方が良いでしょう。
【理由5:高額な修繕費】建築会社の息のかかったリフォーム会社
原状回復費用や大規模修繕の費用は、所有者が負担する契約になっている場合があります。さらに、サブリース会社指定の業者が工事する契約になっている場合は、相場よりも高かったり、上乗せ請求もあり得ます。
修繕費の場合、初めにサブリース会社が提示する物件の収支計画には含まれていないケースが多いです。利益は家賃収入だけなので、収支計画は慎重に行いましょう。 だまされないために、こちらの記事もぜひ参考にしてください
>>アパート経営の詐欺【6つの具体的な嘘から学ぶ】不動産の正しい知識
本当に家賃保証は必要?売買契約の前に必要な確認事項
サブリース契約は普通借家契約となります。普通借家契約の場合、借主の方が保護されているため、家賃改定に関しては借主に不利となる条項は無効です。サブリース会社が賃料減額を要求しても、法律的には問題ありません。
「大丈夫です!家賃保証ですから…」と言われ、その言葉に魅力を感じてしまいますが、結局は家賃保証されていないことになります。サブリース契約を止めたいと思っても、すぐに解約することもできません。サブリース契約をよく理解しておく必要があります。
賃貸住宅管理業者登録制度に登録する業者か
賃貸経営をするオーナーの約8割が管理会社に管理を委託しています。2011年、国土交通省は管理業務についてのルールを徹底させることを目的に、「賃貸住宅管理業者登録制度」を創設しました。
事務所に、管理事務6年以上の実務経験者か賃貸不動産経営管理士を設置することが義務付けられています。重要事項説明等は実務経験者が行うことや、サブリースの借り上げ家賃について、家賃の改定等を説明することが必要です。
この制度に登録している業者は、少なくともルールは守っている業者となるので、この管理業者を選ぶのが賢明でしょう。
管理業者の禁止行為
消費者を保護するために、管理業者には様々な禁止行為が定められています。禁止行為をしている業者は安全な取引をしていないでしょう。
「断定的に判断の提供禁止」とは、利益を生ずることが確実(値上がりしますなど)であると誤解させるような言動、将来の環境や交通などの利便性について誤解させるような言動(隣には家が建たないなど)をしないことです。
重要事項説明の義務
重要事項説明は省くことができないもので、業者は必ず説明する義務があります。権利関係や法令上の制限など、取引の前提として理解しておかなくてはならない事項が多いです。 また、重要事項の説明には書面の交付が法律上の義務とされています。
重要事項説明の制度は、取引当事者の利益を図り、安心して取引ができ、トラブルに巻き込まれないための防御策でもあるのです。
周辺の家賃相場と空室率
サブリースで、「空室時も家賃保証です」と言われると、オーナーにとっては安心な契約のように思われますが、説明と契約の中身は異なるケースが多いです。
立地条件が良く、交通や生活の利便性も良く、人気のエリアでアパート経営をしている場合、空室率も低いです。家賃保証契約を選択しなくても、管理委託で十分なケースもあります。
家賃保証が必要かどうかはよく考えて判断されるのが良いでしょう。
不利な契約内容になっていないか
契約当初の説明と契約書の食い違いが多発しています。損をしないためにも、最初にしっかりと確認しておきましょう。
- 家賃の設定金額と見直しに関する規定
- 契約期間
- 免責期間に関する規定
- 解約時の規定
- 修繕やリフォームに関する規定
- 更新に関する手数料や期間
家賃の見直し時期に関する条項
賃料改定に関する条項の効力について、具体例を挙げます。
・賃料を減額しない条項 一定期間賃料を減額しないという条項は、借主に不利な契約のため、借地借家法により無効となり、借主は減額請求ができます。
・賃料を増額しない条項 一定期間賃料を増額しない条項は、借主に不利ではない内容のため有効です。
先方都合の解約に関する条項
「解約申入れ条項」は、借主が中途解約する場合に適用される条項です。借主からの解約申入れは、6ヵ月前までに貸主に行えば、契約を終了させることができます。
一般的に、「解約申入れ条項」は、借主が契約を終了させたいとする希望日に合わせて、貸主に申し入れるものです。
この「解約申入れ条項」は、中途解約の場合に限らず、期間の満了時に契約を終了させる場合にも適用できます。
当方都合の解約に関する特約
「国土交通省が定めているサブリース契約のひな形では、6ヵ月前に告知することで解約できる」となっています。ところが、実際は正当な理由なくオーナーはサブリース契約を解除できません。
対応策としては、サブリース会社との契約を定期借家契約にして、「契約期間中は、中途解約も家賃減額も請求できない」という特約を付けます。また、期間満了時をもって契約は終了し、更新されることはありません。
免責期間に関する条項
「入居者が決まるまで家賃収入がない」、「宣伝広告の費用がかかる」などを理由に、契約後一定の期間は、サブリース会社からオーナーへの家賃の支払いを免責するという規定を設定しているケースが多いです。
免責規定や免責期間がある場合は、具体的な期間を確認しておく必要があります。
修繕の範囲と費用負担に関する条項
メンテナンスや修繕の範囲と費用に関しては、サブリース会社によって異なってきます。サブリース契約に含まれる修繕というのは、簡易的な修繕に限られているのが一般的です。老朽化による修繕はオーナーの負担になります。
契約の時点で、サブリース会社が負担する修繕の範囲や費用とオーナーが負担する修繕範囲と費用とをはっきりさせておくのが良いでしょう。
お飾りの家賃保証に騙されない!企業に依存しないアパート経営
サブリース契約の「家賃保証」は大きな魅力です。ところが、契約期間中変わらない金額で保証してくれるわけではありません。一般的には、2年の更新時に家賃の金額が見直されます。
家賃保証や滞納保証を狙い目にする手段には騙されないことです。
不動産会社と協力し合って、入居者管理も、建物管理も、資金管理も、自らが行っていく方が安全ではないでしょうか。これもアパート経営のコツの一つです。
まとめ
「家賃保証」を謳うサブリース契約は、一見オーナーにとって有利な契約に思われますが、実際は内容が違っていたりします。
トラブルを避けるためにも、サブリースシステムの仕組みをよく理解して、利用するかを判断しましょう!
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