アパート経営より民泊経営で29万の収益UP!一級建築士が4つの稼ぐポイントと2事例を紹介
民泊を目的としたアパート経営は成り立つのでしょうか? 空室が目立つようになり、空室対策のひとつとして民泊が注目されています。
賃貸物件の供給過剰・競争激化により、大家さんも管理会社も空室は悩みの種。空き家の増加を背景に "民泊" が有効な活用方法として取り上げられることが多くなったのです。
しかし語られることは「〇〇よりは有利」とか「〇〇よりはマシ」などと消極的な評価にとどまっています。 そこで提案です!
アパート経営のカテゴリーとして “民泊” を設定しましょう!
観光業としての立場を主。
そして、賃貸業としての立場を従とする “民泊” 優先の経営戦略でアパート経営を成功させましょう!
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アパート経営だからこそ!民泊経営3つのメリット
そもそも私たちが日ごろ耳にする「民泊」という言葉は通称であり、法律面での正式名称は「住宅宿泊事業」。民泊の流行があまりに早かったため、急ごしらえで制定されたとも言われる法律です。
民泊登録される住宅の種類は「戸建住宅」と「共同住宅」に区分され、共同住宅はアパートの1室もあれば分譲マンションの1室もあります。アパート1棟を戦略的に民泊活用するという前提で考えると、アパート1棟を民泊登録するほうが有利。事業展開においてメリットが大きいのです。
【メリット1】民泊の許可が不要だから違法にならない
民泊事業を開始するには「住宅宿泊事業法」にもとづく都道府県などへの届出が必要。それに対し、旅館やホテルは旅館業法第3条において都道府県の許可が必要とされています。
つまり民泊とホテルや旅館の違いは、許可が必要かどうかなのです。
さらに住宅宿泊事業法をヒモ解いていくと、届出が受理される「住宅」は以下の要件を満たす必要があります。
現に人の生活の本拠として使用されている家屋 |
|
入居者の募集が行われている家屋 |
|
随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋 |
|
出典:民泊制度ポータルサイト・e-Gov 住宅宿泊事業法施行規則
ではさらに「戸建」「共同住宅の1室」「アパート1棟」を上記の住戸でわけてみます。
戸建 |
共同住宅の1室 |
アパート全体 |
|
生活の本拠である家屋 |
〇 |
〇 |
|
入居者募集している家屋 |
〇 |
〇 |
〇 |
随時居住している家屋 |
〇 |
〇 |
アパート1棟と共同住宅の1室で民泊をおこなう際の違いをご覧ください。
アパートの1室 |
---|
大家さんに「転貸許可」を得る必要。 賃貸契約で転貸を禁止するケースがほとんどで、 不特定の人が出入りする民泊を許可する大家さんは多くありません。 |
分譲マンションの1室 |
管理規約で民泊禁止している管理組合が多い。 やはり民泊許可を得ることはむつかしいと言えます。 |
アパート1棟 |
アパートオーナーは所有物件であるアパートを民泊に活用することに対し、 誰の許可も必要ありません。 |
住宅宿泊事業法で「入居者募集している家屋」と定められています。アパート1棟でも宿泊希望者を募集すると同時に賃借人も募集が必要。とはいえ自分の意思で民泊をはじめられる気軽さは、ほかの共同住宅との大きな違いです。
こういった届け出さえあれば民泊は誰でも可能ですが、実際は無届出の民泊がまだまだ多いのが現状。
管理組合に無断で民泊事業をおこなっていたり、大家さんや管理会社に無断で民泊をおこなっていたりする賃貸マンションやアパートがあるのです。
【メリット2】事故物件でも民泊なら収益が得られる
ホテルや旅館に宿泊するときに、偶然 "事故"のあった部屋に宿泊することもあります。ただその場合、ホテルのフロントで『事故がありました』という事前説明はありませんよね。理由は、説明義務がないからです。
民泊も同様に、賃貸借契約にもとづいて利用する施設ではありません。つまり仮に「事故物件」だったとしても、問題なく通常料金で使用してもらえるのです。
アパート経営のリスクといわれる「事故物件」。賃貸借契約の場合、「心理的瑕疵」として重要事項説明にて明かさなければいけません。
※ただし、特区民泊は賃貸借契約(定期借家契約)によりますので、告知義務が適用される可能性があるので注意が必要です。
告知義務 とは?
賃貸借契約では契約前に、入居者に対して入居を決断するかしないかを判断する材料として、対象物件についての重要事項を説明することが義務づけされています。 説明するのは宅地建物取引士ですが、大家さんにも実は説明しなければならないことがあります。 大家さんが説明するのは、「過去に事件があった」とか「自殺した人がいた」などの、主に心理的な瑕疵についてです。
【メリット3】とにかく民泊は収益率が高い
住宅宿泊事業法の第2条3項では、民泊の年間営業日数が180日以内とされています。
この法律において「住宅宿泊事業」とは、旅館業法(昭和二十三年法律第百三十八号)第三条の二第一項に規定する営業者以外の者が宿泊料を受けて住宅に人を宿泊させる事業であって、人を宿泊させる日数として国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより算定した日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。
つまり年間の稼働率は50%を切るということ。「稼働率が5割未満で稼げるの? 」という疑問が浮かびますが、実は民泊の収益率は賃貸事業より高いとわかる資料があります。
【厚生労働省が調査した民泊の実態調査の結果における民泊宿泊料金の平均値】
画像引用:全国民泊実態調査の結果について
2018年※(民泊新法が成立する前年)の資料です。民泊新法制定前ですので、無許可物件が民泊に該当します。
では上図のとおり1泊の宿泊料金7,659円をもとに、民泊と賃貸との収益性を比較してみましょう。
ほかの前提条件は以下のとおり
- 住戸タイプは平均4.2人の宿泊を可能にする2LDK
- 民泊の管理は外部委託とし委託料を年間収入の30%
- 宿泊客の募集に係る仲介料を5%
- 賃貸モデルは満室入居を想定し12か月稼働
※修繕費などの経費は民泊・賃貸同様とし除外
民泊モデルケース |
賃貸モデルケース |
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---|---|---|
料金 |
7,659円(1泊) |
8万円(月家賃) |
営業日数 |
180日 |
12ヶ月 |
年間収入 |
137万8,620円 |
96万円 |
ランニングコスト |
41万3,586円(委託費30%) |
36万円(経費30%) ※下欄その他費用も含め |
その他費用 |
6万8,931円(仲介料5%) |
- |
経費合計 |
48万2,517円 |
36万円 |
収支残高 |
89万6,103円 |
60万円 |
民泊は賃貸に比較し外部委託費が多くかかりますが、それでも収支差額は約90万円です。賃貸物件と比べて約30万円もの違いがあり、民泊は収益性の高さがうかがえます。
民泊に課せられている180日という規制が、逆に空室リスクを軽減し賃貸よりも収益性が高まる効果をもたらしているのです。
今さらやって儲かる?民泊事業の実態
「住宅宿泊事業法」は平成30年6月15日に施行され、平成31年6月14日時点で17,551件が登録されています。
【届出件数の推移】
画像引用:住宅宿泊事業法の施行状況
かなりのスピードで届け出件数が増加しています。そうすると民泊新法制定から1年が経過しこれから参入しようとする場合、先行グループとの競合が気になるところ。現状の宿泊実績を見てみましょう。
【宿泊実績の推移】
観光庁が発表した「住宅宿泊事業の宿泊実績について」によると、平成30年12月~平成31年1月の2ヶ月間の、全国での宿泊日数の合計が222,374日、届出住宅あたりでは20.0日という結果が出ています。規制年間稼働率49%を超える好成績です。
また同資料では、海外から多く訪れる観光客が民泊を積極利用していることもみて取れます。
【海外からの宿泊者の国籍内訳】
画像引用:住宅宿泊事業法の施行状況
データの期間は平成31年2月1日~平成31年3月31日です。2月5日は中国が春節でしたので中国のトップは当然ですが、米国や韓国はじめカナダやオーストラリアなどたくさんの外国人観光客が民泊を利用しています。
また各都道府県の「届出件数の分布」の図をみると、「北海道」「沖縄」「東京」「大阪」では、競合が非常に多そうです。
【各都道府県における届け出件数の分布】
東京、大阪はもともと住宅の多いエリアであり、海外から訪れる外国人は観光客だけではありません。民泊事業の届け出件数が多くなってもなんら不思議ではないでしょう。
それに対し、北海道と沖縄の民泊事業の届け出件数が多いのは明らかに観光需要によるもの。事実、北海道はニセコを中心にスキーリゾートなどの開発が活発であり、沖縄は旺盛な観光需要が不動産業界でも注目されています。どちらも公示地価の上昇率が高いことでも有名です。
そう考えると、海外の観光客から注目されている「山陰」「四国」「甲信越」「東北」「九州」など、まだまだ登録件数の少ない地域もあります。
ほかにも「岐阜」や「三重」などの地域も有望株。つまり一見して手遅れかと思える民泊参入も、地域によってはまだまだ参入のチャンスがあると言えるのです。
アパート経営で民泊を活用している2事例
民泊と言えば「Airbnb(通称:エアビー)」。Airbnbは全世界600万件以上の民泊をデータベース化し、宿泊先の検索から宿泊予約、そして予約料金の支払いがワンストップでできるプラットフォームです。
民泊事業の根幹と言えるAirbnbですが、実際にアパート1棟を民泊として経営している事例をご紹介します。
※料金などは2019年6月のデータにもとづくものです。
【事例1:京都】ロケーションが人気の古アパートを活用した民泊
土田ハイツ | |
---|---|
所在地 |
京都府京都市左京区聖護院蓮華蔵町 |
1泊料金 |
4,000円 |
宿泊人数 |
2人 |
築37年のアパートを「賃貸+民泊」として活用しています。普通の賃貸募集は1DK家賃4.1万円でおこなっているとのこと。場所柄もよく予約は2ヶ月先までほぼ埋まってます。
【事例2:岐阜】ホスト自ら対応するアットホームな民泊
真砂センター | |
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所在地 |
岐阜県岐阜市真砂町 |
1泊料金 |
3,500円 |
宿泊人数 |
4人 |
1階店舗、2~3階がアパートとなっている築年数の古いレトロなアパート。家族で経営しており、リクエスト次第でゲストとホストの交流も可能。
アパート経営の民泊で利益を出す4つのポイント
アパートを民泊に活用した事例を紹介しましたが、空室が多くなったアパートならどこでもうまくいくものでもありません。民泊目的の新築アパートを建てる場合も同様です。確実に利益を生む民泊運営には、押さえておきたいポイントがあります。
【ポイント1】民泊の競争率が高すぎないエリアではじめよう!
競合の少ないエリアでおこなうのが鉄則。
まずアパートが建つ地域にどのくらい民泊があるかを、Airbnbのサイトで検索してみましょう。
たとえば下の図は千葉県浦安市付近で登録されている民泊を検索した結果の画面です。既存民泊の分布と料金や設備内容が確認できます。
同一価格帯で競合しそうな物件を確認でき、新築での参入なら立地場所も検討できます。
また競合になりそうな物件ごとに「予約可能状況」を確認するのも、競争度合いを判断する材料です。予約がびっしり埋まっている物件が多いエリアは、需要に対して物件数が少ないあらわれ。そのようなエリアほど狙い目です。
【ポイント2】観光地に近いアパート経営が民泊に向く!
アパート経営で民泊を運営するなら大都市圏よりも観光地のほうが有利です。 さらに、民泊はファミリータイプに人気があつまります。なぜなら家族連れやグループ、カップルの観光客が宿泊するからです。
料金(賃料)設定の違いを考えるとさらに理解が増すでしょう。
- 賃貸は地域の家賃相場によって家賃が決定
- 民泊はホテル・旅館が比較対象。個性的な部屋なら独自に料金設定が可能
また宿泊者の募集ツールAirbnbは観光客需要をメインにしたプラットフォーム。そもそも観光地に狙いを定めることが当然。
【ポイント3】民泊は周辺住民の理解を得る努力が必要!
住宅宿泊事業法第10条では、周辺地域住民からの苦情等への対応を義務づけています。
(苦情等への対応) 第十条 住宅宿泊事業者は、届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せについては、適切かつ迅速にこれに対応しなければならない。
周辺住民からの苦情が大きくなり都道府県の管轄部署までその声が届くようになると、業務改善命令を受けます。もし改善しなければ「業務停止命令」や「住宅宿泊事業の廃止命令」を受けることにもなりかねません。
周辺住民からの苦情の原因は、宿泊者のマナー違反。生活習慣や文化の違う外国人がほとんど。日本人なら当たり前なことが外国人にとっては、まったく理解のできないことってたくさんあります。
外国人にもわかりやすく、守ってもらいたいルールを明文化したのが "ハウスルール" です。
Airbnbでは物件登録をして民泊事業を開始するときに、ハウスルールの設定をするフォームがあります。
- 子供の年齢制限
- ペットの同伴の可否
- 喫煙の可否
- 騒音の注意事項
- トイレの使いかた
- ごみの分別
【ポイント4】民泊利用者に必要な設備で差別化を図ろう!
競合相手の民泊にはない設備やアメニティで差別化を図ることで、収益性の高いアパート経営が可能になります。
アパートには無くてもよいが民泊には絶対必要なもの、それがアメニティや設備です。Airbnbの民泊検索ではアメニティ・設備について条件設定をする、フィルター機能があります。
画像引用:Airbnb
さらに次にあげる設備が設置されていると、より高い利用者ニーズをつかむことができます。
- 冷蔵庫
- IHヒーター
- 浄水器
- Hulu
- 掃除機
- ポケットWi-Fi
日本は海外と違い無料のWi-Fiスポットが非常に限定的。海外からの旅行者がもっともストレスに感じるのが、自由にインターネットにアクセスできないことだと言われています。
アパート経営に無料Wi-Fiインターネット【大家の感想付】宅建士が5つのポイントを解説
まとめ
民泊新法の施行直後は約5千件だった登録民泊が、1年間で約1万7千件になりました。
2018年のインバウンドは3,119万人2,000人と過去最高記録を更新し、2020年オリンピックイヤーでは4,000万人を見込んでいます。
宿泊施設の不足が指摘されるなか、新しい形態とも言える "民泊" はアパート経営におけるもうひとつのビジネスモデル。積極的に参入できる環境も整いつつあります。
民泊は、賃貸業から観光業への転換。築年数が古く入居者の埋まらなかったアパートが、外国人観光客を迎え入れる最高の "おもてなし" を演出する施設に生まれ変わります。
本記事で述べた「アパート経営の民泊で利益を出す4つのポイント」は、どれかが欠けてもビジネスとして成り立たない大事な要素です。緻密な計画と実践で、民泊によるアパート経営をぜひ成功させてくださいね!
参考:不動産投資にはどんな種類がある?理解しておくべきメリットとデメリット | 民泊・Airbnb運営管理代行の株式会社プレイズ