アパート経営不動産投資の返済比率は50%が目安!危険を回避する4つの行動
アパート経営をはじめ、不動産投資で絶対に知っておかなくてはいけないのが、これから「あぱたい」が説明する「返済比率」です。 返済比率が高すぎるとキャッシュフローの悪化時にローンが返済できず、最悪アパートを手放すことにもなりかねません。
まずは、返済比率の計算方法や目安となる安全な返済比率を覚えてください。返済比率が上昇するパターンや返済比率を下げる対応策についても解説していきますから、しっかりと理解していきましょう!
目次[非表示]
- 1.アパート経営するなら知っておかないとまずい「適正な返済比率」とは
- 2.こんなときは要チェック!返済比率が上昇する危険なパターンとは
- 2.1.金利が急上昇した場合
- 2.2.空室が増加した場合
- 2.3.多額の修繕費が必要になった場合
- 3.アパート経営を左右する、返済比率を下げる4つの行動
- 3.1.1.繰上げ返済などで借入額を減らす
- 3.2.2.金利の交渉
- 3.3.3.返済期間の延長
- 3.4.4.減価償却期間が長い物件を選ぶ
- 4.まとめ
アパート経営するなら知っておかないとまずい「適正な返済比率」とは
返済比率とは、ひとことでいうと、「家賃収入における返済の割合」のこと。適正な割合で返済ができているかどうか、ローン融資の際には銀行が必ず返済比率を審査します。
今後のアパート経営を左右する、非常に重要な数字であることを、まず理解しておいてください。
返済比率の計算方法
ローン返済額 ÷ 家賃収入 × 100
返済比率は前述のとおり、家賃収入における返済の割合ですから、上記の式で算出できます。 住宅ローンは、年収によって返済比率の上限がおおよそ決まっていて、平均約35%です。
アパートローンは、年収よりも不動産担保査定額や事業計画の実現性が重視される傾向にあります。そのため、アパートローンの返済比率は特に公表されていません。
しかし、金融機関では必ず返済比率を審査していますので、自分で適正な返済比率を計算して計画に組み込んでいく必要があります。
安全な返済比率は50%が目安
一般的に適正な返済比率は、50%前後といわれています。 わかりやすくいえば、毎月の家賃収入が100万円ならば、返済額を50万円までに抑えましょうということです。 50%の根拠ですが、返済以外に下記の条件を加味して算出します。
- 諸経費(固定資産税・都市計画税・修繕費用など):20%
- 想定空室率:10%
返済比率が50%の場合、合計で80%。余裕資金が20%残ります。仮に空室率が全国平均の20%へ上昇したとしても、まだ10%残りますから、許容範囲内と考えていいでしょう。
返済比率が60%になると、残りはわずか10%だよ。戸数にもよりますが、突発的に1〜2戸空室が増えたら、すぐに赤字へ転落してしまうカニ。しかし、実際には50%の物件をみつけるのは、簡単ではありません。現実的な方法として、最悪でも55%以上の物件には手を出さないことです。
実際には60〜70%の物件を購入している人もたくさんいますが、読者の皆さんは、返済比率50%以下を目指しましょう。
返済比率に影響はあるの?「住宅ローン」と「オーバーローン・フルローン 」
住宅ローンの返済は、アパートローンの返済比率と関係ありません。
- 頭金をきちんと入れている
- 不動産担保として十分に価値がある
- 事業計画がしっかりしている
上記の条件がそろっていれば、問題なく満額融資してもらえるでしょう。 考えてみれば、アパートローンの返済原資は家賃収入です。住宅ローンとはお財布が別なのですね。
アパート経営さえ順調なら、なにも問題ありません。 では「オーバーローン・フルローン」に関してはどうでしょうか。 「オーバーローン・フルローン」は頭金なしで融資してくれるローンですから、返済の負担は大きいイメージがあります。
しかし利回りがよく、返済額を増やせるならば、返済比率を50%以下に抑えることも十分可能です。
オーバーローン・フルローンの詳しい記事はこちら>>アパート経営でオーバーローンフルローンで不動産投資は危険?失敗しない3つのポイント!
こんなときは要チェック!返済比率が上昇する危険なパターンとは
事前にシミュレーションをしても、返済比率が上昇する可能性はゼロではありません。
最初はよくても、いつ返済比率が悪化するかわかりません。まずは金利が上昇した場合をみていきましょう。
金利が急上昇した場合
【金利1.6%と2.6%の場合】
項目 |
金利1.6% |
金利2.6% |
物件価格(購入諸経費込) |
9,000万円 |
9,000万円 |
頭金10% |
800万円 |
800万円 |
借入期間 |
20年 |
20年 |
年間収入(満室時)8万円×10戸 |
960万円 |
960万円 |
年間支出 |
768万円 |
815万円 |
ローン返済(年間、元利均等返済) |
480万円 |
527万円 |
空室率10%・諸経費20%合計 |
288万円 |
288万円 |
年間手取り収入 |
192万円 |
145万円 |
返済比率 |
50.0% |
54.9% |
もし金利が1%上昇したらどうなるのかを比較してみましょう。 上記条件の場合、ご覧のように金利が2.6%を超えると、返済比率は危険領域へ突入。
条件によって上昇率は変動しますが、いずれにせよ金利の動きで返済比率は大きく変化することがおわかりでしょう。
当たり前ですが、金利があがれば返済比率も上昇します。金利の動向は、定期的にチェックが必要です。
空室が増加した場合
【空室率が10%と30%の場合】
項目 |
空室10% |
空室30% |
年間収入(満室時)8万円×10戸 |
960万円 |
960万円 |
年間支出 |
768万円 |
960万円 |
ローン返済(金利1.6%、元利均等返済) |
480万円 |
480万円 |
空室率・諸経費20%合計 |
288万円 |
480万円 |
年間手取り収入 |
192万円 |
0万円 |
返済比率 |
50.0%
|
50.0%
|
空室率・諸経費20%を加えた総合計支出 |
80.0% |
100% |
空室の有無も、返済比率には非常に大きく関わってきます。空室率の全国平均は約20%ですが、「人口減少」と「アパートの過剰供給」の影響で、これからますます空室は増加していくはず。 空室が増加したと仮定して、10%と30%の場合を比較してみます。
返済比率はあくまでも満室時家賃収入で計算しますから、空室が30%に増加しても返済比率に変更はありません。
ただし、当然空室分の家賃が入ってきませんので、空室率30%と諸経費20%を加えたトータルでは±ゼロになってしまいます。
なにか想定外の支出が増えたら、完全に赤字へ転落です。ここでは空室の話をしましたが、年月が経てば「家賃の値下げリスク」も関係してきます。
空室についての詳しい記事はこちら>>アパート経営の破たん【意外に多い間違った3つの認識と現実】4つの賃貸経営術で生き残る
多額の修繕費が必要になった場合
項目 |
金額 |
年間収入(満室時)8万円×10戸 |
960万円 |
年間支出 |
868万円 |
ローン返済(金利1.6%、元利均等返済) |
480万円 |
空室率10%・諸経費20%合計 |
288万円 |
修繕費用(給湯器10万円×10戸) |
100万円
|
年間手取り収入 |
92万円 |
返済比率 |
50.0%
|
空室率・諸経費20%を加えた総合計支出 |
90.4% |
給湯器を全戸(10戸)一斉に交換する場合の収支をみてみましょう。
予定外に100万円支払うことになれば、トータルでは90.4%と、ほとんど余裕がありません。もしも空室が20%になったら、完全に赤字です。
大規模修繕工事は毎月積立しているから、逆に問題になりにくいです。どうしても厳しい場合は、リフォームローンを考慮してもいいと思われます。
アパートの修繕費用に関する詳しい記事はこちら>>【アパート経営にかかる修繕費の目安】屋根等15の費用と築30年アパートの試算
アパート経営を左右する、返済比率を下げる4つの行動
返済比率が55%を超えれば、ローン滞納の危険性が格段に大きくなります。ですから早急に返済比率を下げなくてはなりません。
1.繰上げ返済などで借入額を減らす
【借入金の3%(240万円)繰上げ返済した場合】 ローン返済額511万円 ÷ 家賃収入960万円 = 53.2% 【借入金の8%(640万円)繰上げ返済した場合】 ローン返済額486万円 ÷ 家賃収入960万円 = 50.6%
|
もし手元に余剰資金があるならば、繰上げ返済を試してみてはいかかでしょうか?
借入金が減るわけですから、当然繰上げした分だけ返済が楽になります。 金利2.6%をもとに計算してみましょう。 借入金の8%「640万円」を繰上げ返済すると、おおよそ適正値に改善できました。
しかし、現実的に640万円もの大金をすぐに用意できる人は、そう多くないはず。 ですから、できる範囲で繰上げ返済をしつつ、ほかの方法と組み合わせて適正値に下げるというのが基本的な考え方になります。
2.金利の交渉
金利引き下げは、間違いなく返済比率を改善してくれます。先ほどの金利シミュレーションでも、金利を1%下げれば返済比率が約5%も改善されました。 もし、比較的高めの金利でローンを契約してしまった場合は、金融機関と金利交渉をする価値は十分にあります。
金利交渉がむずかしい場合は、借り換えローンもひとつの方法です。ただし、今よりも安い金利で借り換えができるとは限りません。違約金が発生する可能性もありますから、借り換えが有効かどうかは、きちんとリサーチして判断しましょう。
借り換えローンは、利用が可能かどうかを調べておいて損はないです。
3.返済期間の延長
【返済期間20年と30年の場合】
項目 |
20年 |
30年 |
年間収入(満室時)8万円×10戸 |
960万円 |
960万円 |
年間支出 |
768万円 |
682万円 |
ローン返済(金利1.6%、元利均等返済) |
480万円 |
394万円 |
空室率・諸経費20%合計 |
288万円 |
288万円 |
年間手取り収入 |
192万円 |
278万円 |
返済比率 |
50.0% |
41.0% |
返済期間が伸びれば、その分返済比率は劇的に改善されます。 ただし先ほどの金利交渉も含め、契約条件の変更をすれば、あなたに対する金融機関からの評価が著しく下がると思ってください。
今後その銀行で新たに借入をするのは、かなりむずかしくなるでしょう。 ただそれでも、経営破綻よりは100倍マシですよね。どうしても返済が厳しい場合は、とにかく相談することをおすすめします。
期間延長は返済事故ではないから、困ったらとにかく相談してみましょう。
4.減価償却期間が長い物件を選ぶ
アパートローンの融資期間は、減価償却と密接な関係があります。建物には構造の種類ごとに法定耐用年数が定められています。 これはあくまでも税務上の制度であり、実際の耐用年数とはまったく違うものです。
しかし多くの銀行は、この法定耐用年数の範囲内で融資期間を設定します。 例えば木造の場合、法定耐用年数は22年です。築10年の中古物件なら、残り12年しか返済期間が取れないことに。
【返済期間20年と30年の場合】
項目 |
20年 |
30年 |
年間収入(満室時)8万円×10戸 |
960万円 |
960万円 |
年間支出 |
768万円 |
682万円 |
ローン返済(金利1.6%、元利均等返済) |
480万円 |
394万円 |
空室率・諸経費20%合計 |
288万円 |
288万円 |
年間手取り収入 |
192万円 |
278万円 |
返済比率 |
50.0% |
41.0% |
返済期間20年と30年でシミュレーションしたように、返済期間は長ければ長いほど、返済比率が下がります。ですから計画の段階で、耐用年数が長い構造体(重量鉄骨は34年)の使用も検討すべきです。
また新築物件は、法定耐用年数よりも長い返済期間を認めてもらえる可能性があります。返済比率という面からみると、新築を選ぶのも賢い方法かもしれません。新築木造アパートなら、35年ローンも可能です。
法定耐用年数と減価償却費の詳しい記事はこちら>>アパート経営で耐用年数と減価償却費の関係【国税庁資料より】資産は◯◯して計上がおすすめ
まとめ
アパート経営をはじめたばかりの人は、あまり返済比率を重視していないかもしれません。しかし、今回の記事でみてきたように、返済比率が55%を超えてくると、毎月のキャッシュフローを直撃します。
最終的にローン滞納となれば、いき着くところは「経営破綻」です。 まずは返済比率が上昇する原因をしっかりと頭に入れてください。そして今日「あぱたい」が提案した方法で、返済比率50%以下をキープしていきましょう。
キャッシュフローを意識すると、設備の効率よく選びたいところ。空室対策になる設備についてこちらの記事でくわしく解説しています。
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