アパート経営の嘘?本当?【9つの噂】住宅業界歴30年のプロがデータと経験から解答
アパート経営をはじめ不動産投資は大きな金額がうごきます。期待するリターンの反面リスクがあることも当然です。
どこまでリスクをとるのか? リスクをとらないボーダーラインはどこなのか? 甘い言葉の裏にある真実と危険性を知ると、経営判断する方法が自ずからみえてくるでしょう。
5つの設定したシチュエーションにもとづき、得られる情報の嘘と本当を読み解き、調査した結果についてお伝えします。
目次[非表示]
- 1.【嘘?本当?】家賃保証します(サブリース)は本当?
- 2.【嘘?本当?】不動産投資は安全?
- 2.1.②【嘘】不動産投資にもリスクはある
- 2.2.不動産投資の対処方法・注意点
- 3.【嘘?本当?】アパート経営は相続税対策におすすめ?
- 3.1.③【本当】預金や更地に比べて評価額が低くなる
- 3.2.相続税の対策方法・注意点
- 4.【嘘?本当?】セールストークの甘い誘惑
- 4.1.「自己資金はいりません」、「頭金は0円で」
- 4.1.1.④【本当】しかし借金は増える!
- 4.1.2.「自己資金はいりません」と言われたときの対策方法・注意点
- 4.2.「融資は問題ありません」、「審査は確実です」
- 4.2.1.⑤【嘘】金融機関の融資審査の結果が出るまでわからない
- 4.2.2.「融資は問題ない」と言われたときの対策方法・注意点
- 4.3.「将来の年金代わりになりますよ」
- 4.3.1.⑥【本当であり嘘でもある】物件やオーナーによる
- 4.3.2.年金代わりにするアパート経営の対策方法・注意点
- 4.4.「家賃○○円で入居者がついている」
- 4.4.1.⑦【本当(嘘の場合もあり)】ただし、将来的には家賃は下落していく
- 4.4.2.レントロールの対策方法・注意点
- 5.【嘘?本当?】番外編
- 6.まとめ
【嘘?本当?】家賃保証します(サブリース)は本当?
「サブリース」でネット検索したかたはご存知なはず、知らないかたは「サブリース」で検索してみてください。「大損」「トラブル」「怖い」「失敗」……このような言葉を含んだページタイトルがズラ~と並ぶのをみることでしょう。
家賃を保証するという「サブリース(一括借り上げ)」は “嘘” なのでしょうか? アパート経営に関わる嘘について、まず家賃保証について紐解いてみます。
①【家賃保証がされるのは本当】問題はデメリットの説明が不十分なこと!
サブリース契約(一括借り上げ)トラブルの原因は “契約時の重要事項説明” が不十分であり、大家さんがデメリットをよく理解していないことが多いといわれています。
つまり「家賃保証が嘘」ではなく次のような誤解を生んでいるのです。
- 30年の賃貸借契約だから同じ家賃が30年保証されると思っていた
- 契約期間中は家賃の見直しがないと思っていた
- 家賃引き下げ提案を拒否すると契約解除されることを知らなかった
家賃が減額されたり契約解除されると、大家さんの収入は激減しトラブルになってしまいます。
サブリース会社に抗議しても、契約書にしっかり明記されていると反論され、どうすることもできません。
重要事項の説明をしっかり受けていれば、契約を見送った大家さんが多数いたと考えられ、サブリース会社の誠実性に疑問を持ちます。サブリースが問題視される最大理由がこのようなことだったのです。
賃貸住宅管理業務処理準則が改訂!しかし……
2016年8月、国土交通省は「賃貸住宅管理業務処理準則」を改訂し “重要事項説明” に係る条項を強化しました。改正内容のポイントは以下の3点です。
- 賃貸住宅管理業者は事務所ごとに「一定の資格者」を設置する
- 賃貸借契約時の重要事項説明は「一定の資格者」がおこなう
- サブリース契約の場合、借賃および将来の借賃の変動に係る条件に関する事項を重要事項として明記する
参考:『国土交通省関東地方整備局』賃貸住宅管理業者登録制度改正の概要①
これまでも重要事項説明については「書面を交付」しておこなうことが義務づけされていました。改正により「一定の資格者」がおこなうことになり、サブリース契約において大家さんに誤解を与えることのないよう説明義務が強化されました。
しかし「賃貸住宅管理業務処理準則」を遵守するよう義務づけされているのはごく一部の業者であり、ほとんどの業者はこの処理準則が適用されません。
実は処理準則の適用を受ける業者は、2011年12月よりスタートした「賃貸住宅管理業者登録制度」にもとづき登録した賃貸住宅管理業者だけであり、登録をしていない業者に規制は及ばないのです。
【登録業者の割合】
賃貸住宅管理業者数は約1万1千業者おり、登録業者は3,871業者(2016年6月末現在)いるとのデータがあります。
引用:『最新不動産ニュースサイト「R.E.port」』賃貸住宅管理業務の実態把握へ調査実施 、『消費者庁』賃貸住宅管理業者登録制度の概要
登録率は35.2%と半分以下であり、規制を受けない賃貸管理業者のなかには、一括借り上げをおこなう「サブリース会社」が含まれることはいうまでもありません。
また登録業者であっても処理準則に違反した場合、勧告や登録抹消を受けるのみで実質的な罰則はなく、強制力があるとはいえません。
サブリース契約によるトラブル防止は、大家さん自ら契約内容をすみずみまで把握し納得のうえで契約するよう注意しなければなりません。
サブリース契約の対策方法・注意点
サブリース契約で失敗しないための対策は次のふたつ。
- 徹底的な契約書のチェック
- サブリース会社は登録業者から選択する
一括借り上げにはメリットもあるのは事実。しかしデメリットの大きさがメリットを減殺するほどであれば、サブリース会社からの提案をキッパリと断る勇気も必要です。
【嘘?本当?】不動産投資は安全?
不動産投資は安全な投資である! ……これは本当のことでしょうか?
投資商品には株式取引やFX取引、最近では仮想通貨までが投資対象となっています。投資はリスクがつきもの元金保証はまったくされず、元手をすべて失うこともあるのが “投資” の実際です。
そのなかで「不動産投資」はリスクの少ない安全な投資手法といわれますが、本当に不動産投資にリスクはないのでしょうか?
②【嘘】不動産投資にもリスクはある
不動産投資には次のようにリスクが7つあります。
- 空室リスク 空室が多くなると家賃が減少します。さらに空室増加を防ぐためにおこなう家賃の値下げにより、収入が減少するという負のスパイラル現象に追い込まれることが。
- 災害リスク 地震や台風そして火災などの災害に見舞われ物件が毀損し、修繕費や退去者が増加し収益性が低下する。
- 建物の老朽化・修繕費用リスク 建物の老朽化により修繕費用が嵩み、年間収入のほとんどが支出されることも。
- 立地のリスク 地元の基幹産業を担う企業が経営破たんし、退去者が続出し空室が増えるなど立地上のリスクがある。
- 事故物件リスク 入居者の事故や事件により「事故物件」となってしまい、入居率が極端に低下することも。
- 詐欺リスク 満室物件と説明され購入したが、売主が満室を偽装していたことにより退去者が急増し、ローン返済ができなくなり破たんするリスクが。
- 管理会社リスク 管理会社が倒産し預かり家賃を含めて行方不明になったり、家賃が破産財団に組入れられ回収不能になることも。
絶対安心とか安全というものはありません。不動産投資には以上のようなリスクがあります。
不動産投資の対処方法・注意点
- 空室リスク 空室対策として考えられることは必ず実践し満室経営であっても油断しない。
- 災害リスク 補償範囲を入念に検討し火災保険に加入する。
- 建物の老朽化・修繕費用リスク 修繕費用を計画的に積み立て、突発的な出費にも対応できる準備が必要。
- 立地のリスク 物件の検討時に地域特性を分析し、リスクがとれないと判断した場合は購入を見送る。
- 事故物件リスク 予想や準備などのできないリスクであり回避がむずかしいが「家賃補償保険」に加入する方法が考えられる。参考として『あそしあ少額短期保険』家賃補償保険 では6ヶ月の家賃を補償している。
- 詐欺リスク 物件検討時にはレントロールを鵜呑みにせず、聞き込みなどの現地調査を入念におこなうことと、信頼がおける不動産会社の媒介物件か確認する。
- 管理会社リスク 家賃の集金代行を管理会社に委託する場合は、管理会社の経営状態をチェックすること、あるいは信託口座が利用できる家賃保証会社の家賃保証を利用する。
【嘘?本当?】アパート経営は相続税対策におすすめ?
相続税法の改正により課税対象者が増加したことは、報道などでもすでにご存じのことでしょう。課税対象拡大にともない「アパート経営による相続税対策」や「節税対策」をPRするインターネット広告をよく目にします。
相続税は財産を相続した人が支払う税金ですが、相続税対策を考える人は圧倒的に相続させる人です。相続がおこる前の準備がなければ間に合いません。
そして相続させるなら現金や預金でなく「不動産」が有利であるといわれます。その理由は相続財産の評価が違うからです。
③【本当】預金や更地に比べて評価額が低くなる
アパート経営は相続税対策におススメといわれる理由、いくつかメリットがあげられますが、それぞれの具体的な内容をみていきましょう。
- 土地建物は現金に比べて評価額が低い
- 小規模用住宅用地には減額の特例がある
- 金融機関からの借入で債務控除が適用される
- 定期的な賃料収入が生まれる
【土地建物は現金に比べて評価額が低い】
相続税は課税対象の価格により決定しますが、不動産は時価価格ではなく課税標準額により計算します。土地と建物では課税対象価格の計算方法が異なり、次のように計算し決定されているのです。
土地 |
国税庁が決める路線価により計算する方式または固定資産税評価額に一定の倍率をかけて求める |
---|---|
建物 |
固定資産評価額と同額 |
土地の固定資産税評価額は公示地価(相場価格に近い)の約7割、土地路線価は公示地価の約8割といわれており、現金や預金の場合と異なり実際価格より安く評価されるのです。
【小規模用住宅用地の減額の特例】
相続を受けた土地の用途が、被相続人の事業用または居住用に使われていた場合、次のように課税価格を減額する特例が受けられ税金が安くなります。
減額割合 |
限度面積 |
|
---|---|---|
居住用の宅地 |
80% |
330㎡ |
貸付事業用の土地 |
50% |
200㎡ |
アパート経営をおこなっている場合、相続した土地の課税価格は上表により200㎡までの部分は課税価格が50%になります。
【金融機関からの借入で債務控除が適用】
金融機関からの借入によりアパート経営をおこなっている場合、相続した財産の価格から “借入金などの債務” を差引くことができます。
1億円の相続財産があっても3千万円の借金があると、課税価格は7千万円になるのです。
【定期的な賃料収入が生まれる】
アパート経営から生まれる定期的な収入を、毎年親族に非課税で贈与することが可能。
贈与税には「非課税枠」があり、受贈者ひとりあたり110万円が非課税になります。この制度を活用し毎年の家賃収入から110万円を限度に生前贈与すると、将来訪れる相続時の対象価格を減らすことができるのです。
【相続税対策をしたつもりなのに借金が増えて失敗に終わるケース】
相続税対策になるとすすめられて、未経験なかたがアパート経営をはじめるときは慎重に考えたいですね。 金融機関からの融資まで受けてスタートしたアパート経営が失敗し、担保にいれていた土地建物が競売にかけられ失ってしまうこともあります。
相続税の対策方法・注意点
相続税の節税対策にアパート経営がおすすめといっても、やはりリスクはあります。
-
シミュレーションを念入りにおこなう
- 入居率を最高70%で設定し、50%でも収支のバランスがとれることを確かめる
- 返済比率は50%を上限としできるだけ下げる
- 家賃設定は4年目以降値下げすることを前提に計算する
- 毎年の純利益を積み立て大規模修繕費用の捻出が可能か確認する
-
すでに所有している土地がある場合は賃貸需要について立地調査をおこなう
- 大学・専門学校や事業所の規模やアクセスを調べる
- 公共交通機関や商店街など利便性の優劣を評価する
- 学校や医療機関など生活者目線で “住みたい” と思える地域か判断する
- 競合する物件数と空室状態を確認する
以上のような検討をおこなったうえで「リスクが高い」と判断した場合は、アパート経営を断念するのも大切です。
さらに次の2点についても検討してほしいですね。
- 相続した場合に継承者がアパート経営を継続できる時間やスキルがあるか?
- 20年後~30年後にアパートを売却できる可能性がある地域か?
【嘘?本当?】セールストークの甘い誘惑
中古市場には好条件のアパートが時々でてきます。「儲かる」とか「お得」などの形容詞をつけた物件です。
信用はしないまでもなんとなく気になり、詳細をみていくと「ナルホド! これはいい物件だ! 」と思わず頷く物件もなかにはあるのです。
不動産業者がよく発するこのようなセリフ。どこまで本当なのか? あるいは嘘ばかりなのか? 真相をまとめてみました。
「自己資金はいりません」、「頭金は0円で」
「自己資金はいりません」や「頭金は0円で」このセリフもよくみます。
アパート購入に全額自己資金を投入するケースほとんどありません。ある程度の頭金と金融機関から受ける融資金によるのが一般的。
つまり自己資金のない人はアパートオーナーになれないわけ。ところが「フルローン」可能な物件だと物件価格分は融資できるので、諸費用分の自己資金があると物件は購入できるのです。
なかには「オーバーローン」可能な物件もあり、この場合は諸費用分も含めて融資がでます。自己資金=頭金が0円で物件を取得することができるのです。
④【本当】しかし借金は増える!
金融機関がアパート購入に融資するには、厳密な審査をおこなうのが一般的。申込者の属性(年収、職業、勤務先など)により、金融機関が定めている所定の審査により担保評価をして物件価格の8割とか7割までなどと融資限度額が決まるのです。
しかし、物件によって申込者の属性がよい場合、フルローンあるいはオーバーローンでもOKがでるケースがあります。
自己資金がほとんどなくても融資が引けるのは、一見すごく有利なことと思えますが、逆にいうと借金が通常より多くなってしまいます。借金が多くなるとアパート経営上のリスクが次のように高まる可能性があるといえるでしょう。
- 借金が多くなり返済期間を長くしなければならない
- 返済期間を長くできない場合は毎月の返済額が高くなる
- 返済期間が長かったり返済額が高いと返済に困る確率が高まる
- 返済が困難になると自己資金の持ち出しや、最悪は強制売却により資産を失うことになる
フルローンやオーバーローンでアパートを購入できても意味がありません。
「自己資金はいりません」と言われたときの対策方法・注意点
「自己資金はいりません」などの甘い言葉に乗せられず、経営に失敗する確率が増えるだけ! 収支シミュレーションをしっかりおこない、必要な自己資金は投入して購入の可否を判断することが肝要。
望ましい資金計画は「頭金」を2割~3割用意すること。万一の場合は物件を売却し、借金を全額返済できる状態にしておくことが投資の王道です。
不動産投資は “攻め” ばかりではありません。ときには “撤退” しなければならないこともあります。
物件の売却で借金を整理できると、次の物件を購入できるチャンスも巡ってきます。しかし「任意売却」で借金を整理することになると、次のチャンスは当分望めません。
「融資は問題ありません」、「審査は確実です」
契約前から「融資は問題ない」とか「審査は確実」など、あり得ない話ですが、このように説得して無理やり契約を迫る営業方法が多くみられます。
⑤【嘘】金融機関の融資審査の結果が出るまでわからない
売買物件のなかには金融機関との提携により、融資審査を有利におこなう物件があります。「提携ローン」といいますが、それ以外にも金融機関との関係が良好だと説明し、いかにも簡単に融資が引けることを強調する営業手法があります。
「提携金融機関があるので、審査は確実です」など甘い言葉で信用させ、売買契約を締結させるのですが、たとえ「提携ローン」であっても審査が終わるまではわからないものです。
「早く契約しないとほかに買われてしまう」といったセリフも、このようなときにつかう決まり文句。安易に信用せず警戒するに越したことはありません。
「融資は問題ない」と言われたときの対策方法・注意点
売買契約やアパートの工事請負契約は、融資が完全に受けられることがわかってから契約すべきなのですが、融資審査は “契約後” でなければ本審査はおこなわれません。
そのため売買契約にしても請負契約であっても、「融資が承認されない場合の解除」に関する契約条項が必ずあります。しかし悪質な場合「融資条項」が適用できない契約内容にしたり、無理やり契約締結させるケースが絶えません。
このような不法な行為を防止するために「事前審査の承認」後に契約締結すること。そして「融資が承認されない場合の解除」内容をしっかり確認して契約することが大切です。
あいまいなままに契約し工事をはじめて「家がなくなった」事例があります。注意してください。 参考:『Yahoo! 不動産』大東建託のアパート経営で家を失いました。
「将来の年金代わりになりますよ」
アパート経営をやると将来の年金代わりになりますよ……。老後の必要資金は最低2千万円などが話題になったときも聞いたようなフレーズですが、アパート経営は本当に年金代わりになるのでしょうか? 本当か嘘なのか検証してみましょう。
⑥【本当であり嘘でもある】物件やオーナーによる
アパート経営による収入から、ローンの返済や税金の支払いをし、残りを生活費に充当することは可能です。金額によっては年金代わりになるでしょうし、少なくとも年金を補填する資金になることは間違いありません。
ただしアパート経営をいつからスタートするかという重要な問題と、資金計画の内容によります。
新築アパートでも10年後には大きな修繕費必要な時期になります。20年後までにはまとまった大規模修繕の必要な時期が必ずやってくるでしょう。
40代や50代でアパート経営をスタートさせると、退職するころには大規模修繕の時期と重なり、年金どころか修繕費の捻出が大きな問題となる可能性があるのです。
さらに築20年を経過したアパートは家賃の値下げも余儀なくされ、収益性の低下に加えて「減価償却費」がなくなることによる「節税効果」も失われてしまいます。
年金代わりにするアパート経営の対策方法・注意点
“年金代わりのアパート経営” を企図するのであれば、退職する直前にアパートを取得し満室経営で退職するのが理想的。さらに借入金の比率をできるだけ少なくし、高いキャッシュフローが期待できる状態でなければいけません。
土地を所有しているのであれば新築アパートを選択することもありますが、築浅の中古アパートで投資額を抑える戦略もありそうです。
毎月の必要な資金はいくらなのか、目標とする収入額により取得する物件と必要資金は異なります。取得した物件で何年経営するのか、売却時期を何年後に設定するかの出口戦略も考慮して、将来計画を入念に立てることにより “年金代わりのアパート経営” が実現するでしょう。
「家賃○○円で入居者がついている」
「満室稼働中」のコピーが目立つ物件を目にすることはないでしょうか。あるいはレントロールをみると高めの家賃設定でも入居中の物件があります。
本当かも知れないし嘘かも知れません。どちらでもあっても現在販売中の家賃設定は、来年あるいは再来年には低下することが賃貸事業の常識です。
⑦【本当(嘘の場合もあり)】ただし、将来的には家賃は下落していく
賃料の下落率は “年率1%” と公表している賃貸事業会社があります。
参考:『株式会社ツイン・ビー 賃貸事業部』家賃の下落率ってどのくらい?
参考ページにも記載があるとおり、利便性が非常に高く新規供給の少ないマーケットエリアは、もう少し下落率は小さいかもしれません。しかし一般的な傾向として常識的な下落率ととらえていいでしょう。
現在の入居状態やレントロールの内容が今後もつづくことはありません。下落率を考慮して購入すべきかどうかの判断をすることが肝要。
さらにレントロールに記載されたデータが正しいものかどうか検証する必要もあります。付近相場からみて明らかに高い設定がある場合は、データそのものを疑ってみなければなりません。
(引き渡し時に家賃の清算計算書をみると、清算書記載家賃とレントロール記載家賃の違いに気づきました。問いただすと「間違って1年前のデータにもとづいたレントロールだった」と、嘘のような話が過去にありました。)
レントロールの対策方法・注意点
レントロールを鵜呑みにせず現在時点の相場賃料を “高値” と考え、年率1%の下落率でシミュレーションし将来予測を含めた検討が肝要。
可能であれば実際の家賃を確認することがよいのですが、入居者から直接聞き取ることはむずかしいことです。空室があれば募集中なので、ウェブサイトの物件ページから現在家賃を確認することができるでしょう。
「満室稼働中! 」も疑ってかかることが必要。引き渡し直後に退去するケースも実際にあることです。
【嘘?本当?】番外編
アパート経営をはじめるときやアパートを購入しようと考えるときに、調べてみるとほかにもいろいろ嘘のような話や驚くような本当の話があります。
そのなかからふたつのお話を紹介します。
⑧【嘘】家賃収入があると年金は減額される?
年金受給に関し気になることがあります。「家賃収入があると年金が減額される? 」というもの、これは大きな誤解です。
「在職老齢年金制度」では、厚生年金に加入した状態で働きつづけながら老齢厚生年金を受給すると、賃金と年金額に応じて年金額の一部または全部が支給停止されることが。
例えば60歳から65歳までの間は、賃金と年金額の合計が28万円を上回ると、年金の一部が停止と定めています。
しかしアパートオーナーの家賃収入は賃金ではありませんし、厚生年金に加入しているわけではありませんので、年金が減額されることはありません。
なお「在職老齢年金制度」は2021年に廃止されるかもしれないといわれています。
⑨【本当】広告費無料で入居者を見つける方法がある?
入居者募集は管理会社や媒介業者に依頼することが一般的です。賃貸借契約が成立すると大家さんは不動産会社に仲介手数料の支払いや広告費の支払いをしていますが、無料で入居希望者をみつける方法があります。
無料の地域掲示板の「不動産」カテゴリに「賃貸(マンション/一戸建て)」のサブカテゴリがあり、物件登録しておくと物件探しをしている人からの問い合わせを直接受けることができます。
具体的な入居手続きを希望するようなら、あとは管理会社に対応を任せるようにすると間違いもなく、広告費もかからないで済み大家さんには有難い方法です。
地元の掲示板はこちら→ジモティ
まとめ
アパート経営に関わるさまざまな「うまい話し」や「騙されやすい嘘」について解説しました。ほとんどの情報がインターネットで得られる現代、 “本当の情報と嘘の情報” が入り混じり、気をつけないと大きな過ちを犯すおそれもあります。
間違った情報に振り回されず、正しい判断ができる対策はただひとつ「自分で確かめる! 」こと。
- 営業マンの話を真に受けない
- レントロールを鵜呑みにしない
- 今がよくても明日のことはわからない
アパート経営は20年、30年とつづくビジネス。その間にいろいろな変化やトラブルが待ち受けています。どのような場合でも正しい対処や対策が立てられるよう、 “嘘を見抜く力” を養うことが大切です。