農家のアパート経営はリスクだらけ?大家になって収入ゼロにならない4つのポイント
農家がアパート経営をする⇒失敗するというイメージがついています。 その原因はなんでしょう? それは、これから土地を探す人とは違い、すでに土地を持っているために、立地に関するリスクやデメリットを考慮しないためです。
所有農地をアパート経営に活用できるか、わかりやすく解説します。 今回の「あぱたい」は、農地転用は必要?
近い将来アパート経営をしようか迷っている農家のかたへお届けします。
目次[非表示]
農家がアパート経営をする3つのメリットは?
- 固定資産税や相続税対策などの税金対策ができる
- 新たに土地を購入する必要がない
- 家賃収入が得られる
1.固定資産税や相続税対策ができる
農地を宅地にしてアパートを建てると「小規模住宅用地」に変わり、固定資産税と都市計画税が軽減され結果税金対策につながります。
小規模住宅用地の課税標準の特例 | |
固定資産税の特例率 |
都市計画税の特例率 |
課税標準額の1/6 |
課税標準額の1/3 (東京都は1/2) |
アパート経営は管理費、修繕費などの費用がかかりますが、経費として計上できるので節税につながります。農地は宅地と比べて固定資産税が低く設定されています。
しかし市街地農地(市街化区域内の農地など)は固定資産税が宅地とほぼ差がなく課せられており、当然相続税も高額。 農地・市街地農地にかかわらず相続税が支払えない場合は、相続した農地を売却して相続税を支払うケースが多くなっています。
2.新たに土地を購入する必要がない
アパート経営は、まず土地がなければアパートを建てられません。 すでに土地ありの状態であれば土地購入費用が浮き、初期費用を抑えることができます。
そのぶんアパートの共同設備やセキュリティ、部屋の内装などにお金をかけられる⇒結果グレードの高いアパートになり、入居率があがることも。
3.家賃収入が得られる
作付けされない農地は無収入です。 しかしアパートを賃貸すれば、たとえ満室といかなくても毎月家賃が入ります。 家賃収入でアパートローンの返済をし、完済後の家賃収入は老後資金の蓄えにピッタリです。
農家がアパート経営をするふたつのデメリットは?
土地がすでにあるからこその落とし穴があります。デメリットはふたつです。
- 立地によって入居率が左右される
- 建設費用が必要
1.立地によって入居率が左右される
もともと所有している土地のため、自由に立地を選ぶことができません。 空室が少ないアパートのほとんどは立地の条件がいいです。
住宅ジャーナリストが選んだ『賃貸物件選びでゆずりたくない10のポイント』では「物件の周辺環境」が上位を占めています。
所有している農地の立地がよければ別ですが駅から遠い、坂道が多い、スーパーが近くにないなど借り手が不便と感じれば入居にならず収入にもつながりません。
出典:【ライフルホームズ】賃貸物件選びでゆずりたくない10のポイント
しかし、駅から遠くても勤務地からは近いなど借り手のニーズはさまざま。 長く住んでもらうためには、土地周辺の環境や条件が大切です。そのため、アパート経営の計画段階からしっかりリサーチしておかないといけません。
建設費用が必要
借入額が大きいと、それだけ毎月の返済額も高くリスクが生じるのでどんなアパートを建てるかは十分考慮が必要です。 いくら土地代がゼロとはいえ、資金がなければアパートの建築費用はローンが通常。アパート建設は、規模・設備・内装次第で費用が大きく変わります。
農家がアパート経営で成功するために注意する4つのポイントは?
農家のアパート経営が成功するか失敗するかのわかれ道がここにあります。
- アパートが建てられない場合も? 農地区分を確認!
- 農地周辺に空室アパートが多いのは要注意!
- サブリース契約については十分な配慮を
- 想定されるリスクを把握し、対策を講じておく
1.アパートが建てられない場合も?農地区分を確認!
農用地区域内農地 |
転用 |
農用地区にある土地。 (農用地区=農業の利用確保、生産性の高い農地) |
原則できない |
甲種農地 |
転用 |
市街化調整区域内にある農地のなかで、農業をするには好条件の農地 |
原則できない |
第1種農地 |
転用 |
・10ヘクタール以上ある一塊の農地 ・土地改良事業対象農地 ・農業をするには好条件の農地 |
原則できない (公共性の高い事業は転用できる) |
第2種農地 |
転用 |
・駅から500メートル以内、今後市街地としての見込みがある農地 ・生産性の低い農地 |
第3種農地を転用できない場合は転用できる |
第3種農地 |
転用 |
駅から300メートル以内、都市的施設が整備された区域内、または市街地区域内にある農地 |
できる |
農地をアパート経営のために転用できるのは、原則として第2種・第3種農地です。(第2種は条件あり) それ以外の農地を転用したい場合は、許可の前に『農振除外届け』を出す必要があります。 所有農地がどの区分かわからない場合は、土地所在地役場内の農業委員会に問い合わせましょう。
参考:【農林水産省】農業振興地域制度と農地転用許可制度の概要
2.農地周辺に空室アパートが多いのは要注意!
農地をアパート経営に活用しようと思う前に、周辺に空室のアパートはないでしょうか? 空室が多い場合、アパート自体に需要がない可能性は大。どんなにいいアパートでも、需要のない土地に建てては意味がありません。
農家がアパート経営に失敗するひとつは、農地周辺の空室調査をしていないことです。実際にアパート周辺を歩いてみて、わかる範囲で空室状況を把握しましょう。 インターネットでは地域別に空室率が掲載されています。Googleマップで需要ごとに区切られているので、参考にしてみてください。
3.サブリース契約については十分な考慮を!
サブリースとは又貸し・転貸借契約で、不動産会社が大家さんからアパート1棟を借り上げ、不動産会社が貸主(転貸主)となって借主と契約をすることです。
昨今、サブリースのトラブルは年々増えており高齢の農家をねらって営業をかける不動産業者がいるのも事実。 サブリースの仕組み自体は大家さんにとっても利益につながるものなので、メリット・デメリットそれぞれ十分に考慮して決めましょう。
【メリット】
不動産会社が貸主(転貸主)となるため、契約や管理、入居者の対応などはすべてやってくれる……慣れないアパート経営をする農家にとって、プロである不動産会社が契約や管理を請け負ってくれるのは心強いことです。
サブリースの契約期間中は家賃保証がある……アパート経営で危惧しなければいけない空室対策や家賃滞納などのリスクがありません。
【デメリット】
家賃収入が見直される……サブリース契約開始から一定の年数が経つと家賃収入を見直され、収支計画にズレが生じます。あまりにひどい場合はローンの返済額を下回る可能性もあり。 重要事項説明の義務にバラつきがある……一般的な不動産契約では重要事項の説明が義務づけられています。
しかし、サブリースの重要事項説明を義務づけているのは国土交通省が定めた「賃貸管理業者登録制度」に登録している業者のみになり、登録していない業者にはサブリース契約の重要事項説明の義務がありません。
登録をしていなくてもとくに罰則がないことから、制度開始の2011年度から現在にいたって登録者数は多くありません。そのため契約書はしっかり確認する必要があります。 「賃貸管理業者登録制度」に登録されている不動産業者を検索するシステムがありますので参考にしてみてください。
参考:【国土交通省】宅建業者・宅建業者等企業情報検索システム
転貸主が提案した収支計画に修繕費・原状回復費が入っていないことが多い……修繕費・原状回復費が収支計画に入っていない場合、費用は大家さん負担です。
外壁塗装などの大規模修繕費以外の修繕費や原状回復費は突発的に発生することが多いため、費用を蓄えておく必要があります 。
4.想定されるリスクを把握し、対策を講じておく
アパート経営でおこるリスクが把握できているか、いないかでは収支計画にも大きく差が開いてしまいます。 リスク回避には多少の費用もかかりますので、アパート経営をはじめる前にじっくりシミュレーションをしましょう。
【アパート経営におこる主なリスクと対策術】
- アパート老朽化……家賃収入の5%を大規模修繕費の積み立てにする
- 天災・災害……火災保険+地震保険とセットで加入
- 入居者とのトラブル(家賃滞納、ゴミ・騒音)……保証会社や管理会社に仲介してもらう
- 金利変動で金利が上昇……繰り上げ返済を検討する
まとめ
農家が良質なアパート経営をはじめるには
- アパート経営のメリット・デメリットを把握する
- 今の農地がアパート経営に転用できるか確認する
- 農地周辺のアパート事情を調査
- アパート経営の基本的なリスクを把握し、シミュレーションする
不動産の知識が乏しくても大家さんになったら「不動産事業者」です。サブリースの家賃保証についても、家賃保証があるだけで経営を保証するものではありません。
土地にお金をかけなくていいぶん、立地の調査は必須。 目先の利益ではなく、長く利益が出るアパート経営を目指すことが良質なアパート経営といえます。
あなたの農地がアパート経営に向いている土地なら、まずは計画を立ててみてはいかがでしょうか。