アパート経営に老人の需要はある?高齢者向けにシフトして歓迎された大家の実話付き
今後アパートの空室が増え続ける対策のひとつが、高齢者を入居者対象としたアパート経営です。 高齢者のアパート入居の需要はますます増えてきます。 最近では「サービスつき高齢者向け住宅」(サ高住)も増えて歓迎されています。
でも大家さん、サ高住だけが老人向けアパートではありません。もっと視野を広げた、縛りのないアパート経営を考えてみませんか?
「あぱたい」では、主に単身老人の入居で懸念されるケガや孤独死問題、家賃滞納などのリスク対策を解説。また実際に老人向きアパートで成功されている経営者の話や、65歳以上を対象とした賃貸仲介会社の体験談を紹介します。
目次[非表示]
- 1.これからのアパート経営には老人の入居者が欠かせない?
- 1.1.アパートの空室と高齢者の数について
- 1.2.老人向け賃貸住宅に特化した「サ高住」
- 2.一般賃貸アパートを老人向き物件にするメリット・デメリット
- 2.1.予算や場所など自由に選べるメリットがある
- 2.2.孤独死が与えるダメージが最大のデメリット
- 2.3.リスク対策方法とポイント
- 3.老人が入居しやすいアパート経営の参考に!不動産屋や経営者の体験談を紹介!
- 3.1.老人向きアパート経営者から学ぶ!成功のポイント
- 3.1.1.地道な作業でつかんだ成功!
- 3.1.2.高齢者ニーズを熟知した経営戦略で大成功!
- 3.2.同コンセプトのパクリも歓迎!65歳からの入居者あっ旋を手掛ける「R65不動産」!
- 3.2.1.大家さんの不安やリスクを取り除く提案を!
- 4.まとめ
これからのアパート経営には老人の入居者が欠かせない?
今後、アパート経営を発展させるためには老人の入居者が欠かせなくなります。 所有アパートが高齢者のニーズに合えば、毎月悩んでいた空室対策にも。 ここではアパートの空室と高齢者の数や、少子高齢化とともに増えている「サ高住」をご紹介します。
アパートの空室と高齢者の数について
近年、日本の総人口は減るいっぽう全国の賃貸アパートは空室が増えています。 対して日本の高齢者(65歳以上)は増え続け、2016年の時点で高齢者は総人口の3割近く。 所有していた家では階段の上り下りなど生活動作に不便を感じ、小さめの賃貸に住み替えるなど持ち家にこだわらない高齢者が増えてきました。
そして人生100年時代といわれている現代。65歳以上でも働きたい、自立した生活を送りたいと思っている高齢者も多く存在します。 そんな人たちが部屋を借りたくても年齢制限などで借りられない現状に直面したら……。
老人向けのアパートがあれば入りたいと思うのは自然な心理ではないでしょうか。
そんななか、空室の賃貸アパートを「老人向きアパート」として再生。
高齢者に配慮した部屋づくりを実現し、アパート経営を成功させた大家さんもいるのです。 また、高齢者居住の安定確保に関する法律により「サービスつき高齢者向け住宅(サ高住)」が登場。
アパート経営者からもサ高住の経営が注目されています。 このように老人を対象とした物件が増えていることから、高齢者を歓迎する態勢は今後の空室対策に重要なポイントとなるのです。
老人向け賃貸住宅に特化した「サ高住」
サ高住の特徴はコレ!
- 介護までは必要としない高齢者向け賃貸住宅である
- バリアフリー構造
- 生活相談員が常駐・入居者の安否確認などサポート体制が整っている
- 条件を満たせば補助金がでる
高齢者に配慮した環境を整えるのが重要ですが、そのぶんリフォームの範囲も定まるので予算も組みやすくなります。
また、専有部分に必要な床面積が原則25㎡以上が転用する条件のポイント。 さらに詳しく「あぱたい」ではサ高住の転用方法について解説しています。
記事はこちら>>サ高住で空室対策!賃貸物件からの転用方法と今後の需要やメリット・デメリットを解説
一般賃貸アパートを老人向き物件にするメリット・デメリット
意外かもしれませんが、老人向き一般賃貸アパートは予算や場所など自由に選べるメリットがあります。ただ、孤独死によるダメージのデメリットも忘れてはいけないポイント。 では老人向き物件のメリット・デメリット、リスク対策とその回避ポイントはどんなものなのでしょうか?
空室対策として高齢者入居を考えている大家さんは必読です。
予算や場所など自由に選べるメリットがある
老人向き一般アパートは特別な決まりがありません。そのため入居者は自分の予算に合わせたサービスのある物件を選べます。 移動手段にバスを利用する高齢者も多いので、駅から近くなくてもバス停から近ければ需要があるなど立地条件が緩いのもメリットのひとつ。 また、専有住宅の改修工事費の3割(上限50万円/1戸)を補助金として国が支援する住宅セーフティネット制度を受けられます。
各自治体からも高齢者賃貸住宅への補助金がでます。 東京都墨田区の一例では、バリアフリー構造のための改修に要した工事費用を限度額1住戸あたり20万円まで(浴室またはトイレを設置した場合は1住戸あたり30万円)の補助金が支給されます。
さらに共有部分の改修となれば1棟あたり100万円までの補助金がでます。
孤独死が与えるダメージが最大のデメリット
とくに、単身高齢者の入居に抵抗がある大家さんは孤独死のリスクが真っ先に思い浮かぶのではないでしょうか。 発見が遅れれば、特殊清掃あるいは内装すべてのリフォームを必要とします。また、残置物などは遺族が引き取らないこともあるため、大家さんにとって心理的・経済的負担も。
ほかに、火の不始末から火事に発展するのではないか、不安定な経済面で家賃滞納があるのではないかなど大家さんにとって懸念するリスクが多く生じます。 しかし、こういった問題は事前の対策でリスクを回避できるのです。
リスク対策方法とポイント
- 孤独死対策
あらゆるトラブルを想定・対策を契約前におこなう
- 室内設備の見直し
既存の設備で高齢者の生活に問題がないか確認
- その他の注意事項
上記以外の対策 これらの対策をしっかりおこなうことで、高齢者向けのアパート経営が可能となります。
つまり空室対策に直結します!
孤独死対策
孤独死からくるダメージを最小限に抑えるには、なによりも入居者の異常事態を早期発見すること。 できる範囲で、管理会社や大家さん自身で定期的な巡回や訪問を。また、郵便受け、ドアポストのチェックもポイントです。
入居者が不在のときは近隣住民に聞き取りをしてコミュニケーションをとっておくと、いざというときの情報も得られやすくなります。
最近では見守りサービスも充実してきました。
タイプ |
サービス内容 |
センサー型 |
人感センサーや光熱の使用量などで異常の有無を判断。 |
通報型 |
おもに入居者自身が通報するシステム。ボタンを押すだけなど簡単な操作で通報ができる |
コミュニケーション型 |
業者が電話や訪問で状況を確認してくれるサービス |
単身高齢者で、なにかあったときのための安否確認として高齢者の見守りサービスが増えてきました。月額で受けられるサービスですが、費用の幅も200~10000円以上と広めです。
孤独死によって大家さんの負担をカバーする保険もあります。また孤独死からくる大家さんの経済的なダメージを回避するため、孤独死損害補償保険に加入しておきましょう。
膨大な修繕費や、遺品整理などの事故対応費用が補填対象になります。 大手損害保険会社ではもちろん、火災保険のような少額保険を扱う企業でも、孤独死に関する保険があります。
室内設備の見直し
高齢者ゆえのリスクを設備・備品から見直します。
- ガスコンロをIHにする
- エアコン設置で石油ストーブ・電気ストーブを禁止にする
- 転倒防止のため必要に応じて手すりを配置させる
- ガラスの飛び散りでケガをしないよう飛散防止フィルムを入る
高齢者が部屋をつかうなら……という状況を想定して設備や部屋の見直しをするのが大切です。
その他の注意事項
日ごろから部屋に訪問するよう、民生委員と連絡を密にしておき支援体制を整えます。 家賃滞納の懸念については連帯保証人をつける、保証人がいなければ家賃債務保証会社の加入義務などを徹底します。
アパートの近隣に徒歩でも行けるスーパーや、病院があるのは高齢者にとって安心です。さらにバス停までの距離が近かったり、階段や坂道が少なかったりするとなおいいでしょう。
老人が入居しやすいアパート経営の参考に!不動産屋や経営者の体験談を紹介!
高齢者を迎えることで、空室率が低くなる可能性は十分。そして実際にアパートで自立して生活がしたい高齢者は多く、これからも増えると予想している大家さんもいるのではないでしょうか。
実際に高齢者向きのアパート経営を実現させた大家さんや、高齢者を対象とした不動産会社が存在します。
老人向きアパート経営者から学ぶ!成功のポイント
画像引用:【アマゾン】『多世代居住で利回り30%! 高齢者向きアパート経営法』
本書の筆者のひとりである鈴木かずや氏は、介護事業者との連携で高齢者向けアパートを2棟経営。どちらの物件も介護支援事業者などに向けた内覧会や、事業者からの入居者紹介で満室経営を実現しています。
地道な作業でつかんだ成功!
もともと鈴木さんは茨城県土浦市に住む妻子もちのサラリーマン。不動産投資に興味はあったものの、本業があるのでアパート経営は居住地エリアに限定されます。
はじめての大家になるにはハードルが高いです。そこで専門家のサポートからの意見を取り入れ「介護事業者と大家が連携し、介護サービスを受けている高齢者の入居を受け入れる」という高齢者向きアパートを計画。
大家さんが介護を提供するのではなく、介護事業者が入居者の健康管理をして事故や孤独死のリスク管理をするのです。 しかし、それまでの道のりは、簡単なものではありませんでした。 回った介護施設はおよそ150か所。その9割は「不動産会社じゃないのに怪しい事業じゃないの? 」など取り合ってもらえません。
しかし鈴木さんは諦めず介護事業者の売上にも役立つアパート、ともに歩む経営をしましょうと地道にアプローチし、共感してくれる介護事業者を探しました。 そして努力が実り、いくつかの介護事業者が入居者を紹介したいと申し出てくれたのです。
高齢者ニーズを熟知した経営戦略で大成功!
エリア的に不人気物件でも、高齢者の立場に沿えば需要があると着目。物件購入の前に共感してくれた介護事業者と体制を整え、事業計画書を作成。 その計画書が融資でも優位に働き、有利な条件で融資を受けることに成功しました。
あくまで鈴木さんの物件は高齢者向きアパートとしていながらも、入居者対象を高齢者だけに限定していません。
サ高住は補助を受けると例え空室があっても老人以外は入居できないんだよね……
全年齢を対象にすれば空室リスクが減らせます。介護事業者が定期的に訪問をしてくれるという安心感から、入居を決めた学生も。 このように縛りのない自由な老人向きアパート経営を目指すなら、鈴木さんの成功例は非常によいお手本ですね!
同コンセプトのパクリも歓迎!65歳からの入居者あっ旋を手掛ける「R65不動産」!
画像引用:R65不動産
高齢者が入居できる賃貸住宅はそんなに多くなく、内見すらさせてもらえないのが現実。そんな高齢者の部屋探しをお手伝いするのがR65不動産。不動産管理会社と連携して物件を紹介する仲介会社です。
高齢者と呼ばれる年齢になっても働き、自立していた祖母に影響を受けた株式会社R65代表の山本遼さん。 高齢者側に自立したい気持ちがあっても年齢制限などで入居できない現状と、自分らしく自立した生活を送ってほしいという思いから2015年に同会社を設立しました。
こんな会社はこれから増えていく可能性があります。同じコンセプトの不動産ができることを山本さんは歓迎しています。
大家さんの不安やリスクを取り除く提案を!
山本さんは、高齢者を入居対象とするリスクを恐れていた大家さんに対し、見守りシステムや保険適用の存在などさまざまな提案を実施しています。HPでのブログでも、高齢入居者や大家さんへ有益な情報を常に発信。
高齢者に部屋の提供を考えている大家さんは必見です!
またほかの大家さんや不動産会社には、実際に高齢者が入居者である大家さんの意見も伝え、少しずつ理解者が増えていると山本さんは実感しています。
【高齢者が入居している物件の大家さんの感想】
- 長く入居してくれる
- 生活マナーがいい
- クレームが少ない。感謝される
会社としてはまだ浅いR65不動産ですが、山本さんはやりたいことが次々にでてきているそうで活躍に注目が集まりますね。
今後、R65不動産のような不動産屋さんが増えると、アパート経営者も安心して老人向けアパートを運営していけるのではないでしょうか。
R65 不動産のHPはこちら>>R65不動産
まとめ
老人向けアパート経営はリスク対策が必須。しかし介護業者など専門的なサポートがあれば、大家さんの心理的な負担は軽減され老人向けアパート経営がはじめやすくなるのではないでしょうか。
再開発が進む土地などでは建て替えによる立ち退きを余儀なくされ、住まい探しに苦戦する高齢者が今後も増えると予想されます。 ますます高ニーズになる老人のひとり暮らし。これからのアパート経営に欠かせなくなるのは間違いありません。