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アパート経営の消費税マニュアル!還付の条件や売却による納税義務の有無を事例で紹介


パート経営をはじめて最初の決算時期が近づき、

  • 「家賃には消費税がかからないけど、消費税は納税する義務があるのかな?」
  • 「水道使用料をもらっているけど、消費税はかかる?」
  • 「消費税の節税はできないかな?」

と、消費税に関して気になることが多いですよね。


今回は、消費税納税の義務はあるのか、アパート経営における消費税の関連する取引、消費税の節税方法について詳しく解説。さらにアパート購入時の消費税還付についてもご紹介します。



目次[非表示]

  1. 1.アパート経営に消費税の申告と納付の義務はあるのか?
    1. 1.1. 課税事業者
    2. 1.2.免税事業者
    3. 1.3.消費税の申告と納付はいつまでにするか?
  2. 2.アパート経営で消費税がかかる取引項目は?
    1. 2.1.【一覧表】収入と費用で分けた消費税がかかる取引とかからない取引
    2. 2.2.【注意】見分けがむずかしい消費税がかかる事例3つ
      1. 2.2.1.1.電気・ガス・水道使用料
      2. 2.2.2.3.家具家電使用料
  3. 3.免税事業者のアパート経営では消費税込みの支出金額を経費にする
    1. 3.1.消費税は租税公課として経費になるか?
  4. 4.アパート経営での消費税の【簡単】節税対策
    1. 4.1.原則課税と計算のしかた
    2. 4.2.簡易課税と計算のしかた
    3. 4.3.消費税の節税になるのは原則課税か簡易課税のどちらか?
    4. 4.4.原則課税か簡易課税のどちらかを選ぶときの注意点
  5. 5.アパート経営で消費税の還付を受けられるのか?
    1. 5.1.消費税の還付とは?
    2. 5.2.消費税の還付を受けられる条件
    3. 5.3.アパート購入の消費税還付は事前準備が必要
  6. 6.アパートを売却するとき消費税はかかるのか?
    1. 6.1.消費税がかかるケース
    2. 6.2.消費税がかからないケース
  7. 7.アパート経営では2019年10月の消費税増税に備えよ!
    1. 7.1.    アパート購入時
    2. 7.2.    アパート経営時
      1. 7.2.1. 契約書の書きかた(店舗の家賃と消費税)
    3. 7.3.アパート売却時
  8. 8.消費税増税のときは契約と引き渡し時期でこんなに違う!
  9. 9.まとめ


アパート経営に消費税の申告と納付の義務はあるのか?

アパート経営に消費税の申告と納付の義務はあるのか? アパートオーナーが課税事業者なら、消費税の納税義務があります。


一般的に、家賃に消費税はかからず、アパート経営だけで消費税の納税義務はほとんど生じません。しかし、アパート経営以外に消費税課税対象となる売上が1000万円を超える事業をしていると、消費税納税の義務が生じます。

  • 課税事業者
  • 免税事業者
  • 法人と個人事業主の基準
  • 消費全の申告と納付の期限

に注目して、アパートオーナーのあなたに消費税納税の必要があるかをみていきましょう。



 課税事業者

課税事業者とは消費税の納税義務がある法人もしくは個人事業主です。不動産投資が目的のアパートオーナーでも条件を満たすと、課税事業者になります。


課税事業者の判断基準は以下の3つ。

  1. 基準期間(*1)の課税売上高が1,000万円を超えたか
  2. 資本金が1,000万円以上の法人か
  3. 特定期間(*2)課税売上高が1,000万円を超えたか

*1基準期間とは、個人事業主は前々年、法人は前々事業年度。 *2特定期間とは、「個人事業主は前年1月1日~6月30日」、「法人は前事業年度開始の日以後6ヶ月」の期間。

例外として、上3つの基準を満たさなくても、「消費税課税事業者選択届出書」を提出すると課税事業者となります。


課税事業者の例

月額1万円の駐車場を100台分貸し付けているオーナーは、年間課税売上が1200万円となり、2年後に課税事業者になる。



免税事業者

課税事業者ではないアパートオーナーは免税事業者です。消費税の納税義務はありません。


消費税の申告と納付はいつまでにするか?

課税事業者は、それぞれ次の期間に申告と納付をします。

個人事業主
課税期間の翌年1月1日から3月31日まで
法人
課税期間終了の日(決算日)の翌日から2ヶ月以内




アパート経営で消費税がかかる取引項目は?

アパート経営で消費税がかかる取引項目は?

課税事業者のアパート経営者は消費税納税のために、消費税額を知る必要があります。アパート経営では、消費税がかかる取引と消費税がかからない取引があり、間違えやすい取引もあります。しっかりみていきましょう。



【一覧表】収入と費用で分けた消費税がかかる取引とかからない取引


消費税がかかる取引項目
消費税がかからない取引項目
収入
・居住用以外の建物の貸付(礼金、更新料など含む) ・1ヶ月未満の居住用物件の貸付 ・1ヶ月未満の駐車場の貸付、もしくは単独契約など
・土地の貸付(1ヶ月未満は課税対象) 1ヶ月以上の駐車場の貸付 ・居住用物件の貸付 ・保証金や敷金 ・更新料 ・共用部分の管理料
費用
・ 建物の購入費用(リフォーム代なども含む) ・ 管理手数料 ・不動産仲介手数料(売買、賃貸借) ・住宅ローン事務手数料 ・司法書士などへの報酬
・土地の購入代金 ・利息や保証料 ・火災保険料 ・地代


【注意】見分けがむずかしい消費税がかかる事例3つ

消費税の課税対象の中には見分けのむずかしいものがあります。3つの例を参考に確認していきましょう。

1.電気・ガス・水道使用料

入居者からもらう電気・ガス・水道の使用料は、次のとき消費税がかかります。

  • 一定額を請求する
  • 1戸あたり均一額を受けとる


 2.食事付きの下宿

旅館業法第二条第1項に規定する旅館業に係る施設の貸付に該当すると、課税対象になります。該当しないときは、食事部分のみが課税対象


旅館業法第二条とは?

第二条 この法律で「旅館業」とは、旅館・ホテル営業、簡易宿所営業及び下宿営業をいう。 2 この法律で「旅館・ホテル営業」とは、施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、簡易宿所営業及び下宿営業以外のものをいう。 3 この法律で「簡易宿所営業」とは、宿泊する場所を多数人で共用する構造及び設備を主とする施設を設け、宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業で、下宿営業以外のものをいう。 4 この法律で「下宿営業」とは、施設を設け、一月以上の期間を単位とする宿泊料を受けて、人を宿泊させる営業をいう。 5 この法律で「宿泊」とは、寝具を使用して前各項の施設を利用することをいう。

引用元:e-Gov電子政府の総合窓口(e-Gov)  

3.家具家電使用

空室対策に有効であることから家具家電付きの賃貸物件が増えています。家具家電使用料にかかる消費税は、次のようになります。

  • 入居者の選択によらず家具家電を設置:消費税がかからない
  • 入居者の選択により家具家電を設置:消費税がかかる


免税事業者のアパート経営では消費税込みの支出金額を経費にする

免税事業者のアパート経営では消費税込みの支出金額を経費にする アパート経営では、建物のリフォームや不動産仲介料など消費税のかかる費用を支払います実際のところ、アパート経営がメインのアパート経営者はほとんどが免税事業者で、確定申告では消費税について税込経理方式を使います。

消費税は租税公課として経費になるか?

免税事業者のアパート経営者は消費税を納付しないため、確定申告のときに租税公課を気にする必要はありません。収支計算には税込経理方式を使い、支払った消費税込みの金額をそのまま経費にします。


課税事業者のアパート経営者は経理方式で扱いが異なりますので、確定申告では注意。

  • 税込経理方式:納付する消費税を租税公課として処理
  • 税抜き経理方式:納付する消費税を未払消費税として処理


アパート経営での消費税の【簡単】節税対策

アパート経営での消費税の【簡単!】節税対策

消費税額の計算方法は

  • 原則課税
  • 簡易課税

のふたつ。   


原則課税と計算のしかた

消費税額の計算は基本的に原則課税(一般課税)です。計算式は下記のとおり。

納付税額=課税売上に係る消費税額(課税売上高✕8%)-課税仕入に係る消費税額(課税仕入高✕8%)



簡易課税と計算のしかた

簡易課税では「みなし仕入率」をつかって消費税額を計算します。

簡易課税の計算式は下記のとおり。

納付税額=課税売上に係る消費税額(課税売上高✕8%)-課税売上に係る消費税額(課税売上高✕8%)✕みなし仕入率)

*みなし仕入とは課税売上高に一定の割合をかけたもの。計算や記録を簡便にします。(不動産業のみなし仕入率は40%)

基準期間の課税売上が5,000万円以下の事業者は原則課税ではなく、簡易課税を選択できます。  

消費税の節税になるのは原則課税か簡易課税のどちらか?

原則課税か簡易課税を選べるアパート経営者(基準期間の課税売上が5,000万円以下)は、アパートの経営状況により、節税になる計算方法が違います。


ふたつの例を参考に確認しましょう。 例1

  • 課税売上高︰100万円
  • 課税仕入額︰50万円

のとき、原則課税と簡易課税の消費税額は次のとおり。


原則課税
簡易課税
売上に係る消費税額(A)
100万円✕8%=8万円
100万円✕8%=8万円
仕入に係る消費税額(B)
50万円✕8%=4万円
100万円✕ 8%✕40%=3.2万円
納税する消費税額(A-B)
4万円
4.8万円


例2

  • 課税売上高︰1,000万円
  • 課税仕入額︰100万円

のとき、原則課税と簡易課税の消費税額は次のとおり。


原則課税
簡易課税
売上に係る消費税額(A)
1,000万円✕8%=80万円
1,000万円✕8%=80万円
仕入に係る消費税額(B)
100万円✕8%=8万円
1,000万円✕8%✕40%=32万円
納税する消費税額(A-B)
72万円
48万円

このようにどちらが節税対策になるのかは、一概にいえません。多額の設備投資をおこなうと課税仕入が高額になり、原則課税のほうが消費税額は安くなります

原則課税か簡易課税のどちらかを選ぶときの注意点

簡易課税を選択しなければ、原則課税が適用されます。簡易課税の選択には将来の納税額を左右する注意点があります。


つまり

  • その後2年間に高額の設備投資(アパート購入、大規模改修など)計画
  • 消費税還付を受けられる計画

があるなら、簡易課税では不利になる(消費税還付は簡易課税では受けられない)ため、原則課税を選びます。 事務作業の簡便さと将来の納税額を天秤にかけて、課税制度を選びましょう。


【簡易課税を選択できる条件】

  • 基準期間の課税売上高が5,000万円以下
  • 課税期間開始の前日までに簡易課税選択届出書の提出が必要

【簡易課税のメリット】

  • 消費税の計算が簡単になる
  • 通常のアパート経営であれば消費税が安くなる

【簡易課税のデメリットや注意点】

  • 空室対策で各部屋にエアコンや家具家電を備え付けるなどの設備投資をおこなうと、課税仕入高が高額になり、不利になる可能性がある
  • 2年間は原則課税への変更ができない
  • 消費税の還付が受けられない


  

アパート経営で消費税の還付を受けられるのか?

アパート経営で消費税の還付を受けられるのか? アパート経営でも、一定の条件を満たすと消費税の還付を受けられます。ただし、税制改正があるため、しっかり事前準備と対策が必要。これを怠ると、消費税還付のメリットが消えてしまいます。


以下3つのポイントに沿って解説します。

  • 消費税の還付とは?
  • 消費税の還付を受けられる条件
  • アパート購入の消費税還付は事前準備が必要


消費税の還付とは?

「売上に係る消費税(預かり消費税)<仕入に係る消費税(支払消費税)」になれば、払いすぎた消費税が還ってくる制度。 単純化すると、

  • 課税売上2万円
  • 預かり消費税1600円(税率8%)

の課税事業者が

  • 建物価格1億円
  • 支払消費税800万円(税率8%)

のアパートを購入すると、払いすぎた消費税799万8400円(=預かり消費税1600円—支払消費税800万円)が還付されます。 ただし、誰でも消費税が還付されるわけではありません。 



消費税の還付を受けられる条件

消費税の還付を受けるには原則課税を適用した課税事業者であるのが条件。 注意点は以下です。

  • 1,000万円を超える資産を購入すると3年間簡易課税への変更ができない
  • アパート購入後3年間の通算課税売上割合が50%を超えるようにする

アパート経営では、

  • 簡易課税の支払消費税>原則課税の支払消費税

となりやすいです。


簡易課税へ変更できないことは、将来の支払消費税が増えるためデメリットに。


また、消費税還付を受けたあとの3年間の課税売上割合(=3年の課税売上高/全売上高)が50%を超えないと、還付金から一定額を返納する必要があります。


参考元:国税庁 アパート経営で消費税還付を受けるには、事前の準備と対策が必要です。


 

アパート購入の消費税還付は事前準備が必要

現在の税制下では事業経営者でもこれからアパート購入をするかたでも、消費税還付を受けられる流れは次のとおり。 

  1. 新規の法人を設立して消費税課税事業者(原則課税)の届け出をする
  2. 建物引渡し予定月までに課税売上をあげる
  3. 建物引渡し時の事業年度では非課税売上を最小限にとどめる
  4. 建物引渡し月の月末で事業年度を終わらせる
  5. 消費税の申告では、一括比例配分方式かつ税抜経理方式を採用する
  6. 通算3事業年度で課税売上割合が50%を超えるようにする

アパート購入の消費税還付では税制のスキをついた方法が続出したため、消費税法が何度も改正されました。今後も税制改正が続き、アパート購入での消費税還付は難しくなっていくと予想できます。


実際、金地金取引で課税売上をあげる方法が取り上げられますが、消費税還付が認められなかったケースが一部あります。


参考:金地金取引を利用した「消費税還付」が認められず ~指南した税理士が「消費税還付」等を専門にしていたことも判断材料に~


消費税還付に詳しい税理士などの専門家に、必ず事前に相談して計画を進めましょう。



アパートを売却するとき消費税はかかるのか?

アパートを売却するとき消費税はかかるのか?

課税事業者がおこなう建物の譲渡には消費税がかかり、免税事業者がおこなう建物の譲渡には消費税がかかりません。アパート売却では、建物のみに消費税がかかります。売却時は消費税課税対象でなくとも、2年後に課税事業者になるケースがあることにも注意。



消費税がかかるケース

課税事業者には消費税の納税義務が発生します。  



消費税がかからないケース

  • 個人による不動産の譲渡

1,000万円を超える売却でも、個人で免税事業者ならばその年の消費税課税対象にはなりません。ただし、2年後には課税事業者になります。

  • 法人(免税事業者)

免税事業者の法人はアパート売却で消費税がかかりません。ただし、基準期間もしくは特定期間に課税売上高が1,000万円を超えれば課税対象になります。  



アパート経営では2019年10月の消費税増税に備えよ!

2019年10月に消費税が10%に引き上げられると、アパート購入費用やランニングコストなど課税対象取引でこれまでよりも支払う消費税が増えます。


たかが2%程度ですが、取引金額の大きいアパート経営では影響が大きいですね。

  • アパート購入時
  • アパート経営時
  • アパート売却時

にわけて、消費税増税にともなうリスクをしっかりと把握しておきましょう。


    アパート購入時

アパート(建物)の購入費用は高額で、消費税が課税されます。2%の消費税増税では建物価格5,000万円のアパートなら、100万円もの差が発生します。


    アパート経営時

消費税増税で家賃の引き上げはむずかしく、毎月の管理手数料などのランニングコストは増えて収支を圧迫します。消費税増税への対策として、利用業者やサービスのコスト削減を検討するのもよいでしょう。


事務所や店舗貸付では消費税増税分の家賃収入も上がるはずですが、契約書の内容によっては消費税増税分を引き上げられないケースも。次に紹介する内容をもとに、消費税増税にも対応した契約書の作成をしましょう。



 契約書の書きかた(店舗の家賃と消費税)

事務所や店舗などの消費税がかかる賃貸契約で、消費税増税分の収入を取りもれないようにするためのポイントはふたつ。


1.契約書の金額は税抜きで記載

今後の消費税増税に対応できるよう、賃料(税抜き)などと記載し、消費税は別途徴収する旨を記載

2.契約書に税率改定に伴う条項をいれる

今後のさらなる消費税増税があっても、以下のような条項をいれておくことで増税分をしっかり取れます。

【条項例】

契約期間の途中で消費税率の改定が行われた場合には、消費税率改定後の賃料にかかる消費税については改定後の税率により計算するものとする。

アパート売却時

アパート売却では不動産仲介手数料や専門家への報酬などの費用がかかり、消費税額も高額になります。アパート売却の計画があるなら、増税前に売却すべきでしょう。  



消費税増税のときは契約と引き渡し時期でこんなに違う!

消費税増税のときは契約と引き渡し時期でこんなに違う! アパートの引き渡し時期が2019年10月1日の前後で適用される消費税率が変わります。

  • 10月1日以降の引き渡し

消費税率10%

  • 10月1日以前の引き渡し

消費税率8%


ただし、アパート建築のように契約から引き渡しまで長期間を要する取引には、経過措置があります。


2019年4月1日以前に契約した工事請負契約であれば、引き渡しが10月1日以降でも、消費税率8%が適用されます。  



まとめ

アパート経営でも課税事業者であれば納税義務があります。関係する取引項目も、ご紹介した家具家電使用料のように契約内容によって消費税がかかったり、かからなかったりと難しい面もありますね。


アパート経営において消費税はコストであり、今後の消費税率の引き上げで経営を圧迫しかねません。今回紹介した内容をもとに、しっかりと節税や還付の方法を確認して有利にアパート経営を進めてきましょう。


不動明師
不動明師
賃貸管理&売買仲介経験20年。アパート新築、購入、仲介、リノベーション、大規模リフォームに携わり、自身でも2棟のアパートを所有する不動産オーナー。宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士の資格を有し、不動産経営者に対して役立つノウハウを共有している。

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