アパートの耐用年数とは?減価償却費を正しく計上して節税効果を上げよう
もしあなたがアパート経営の初心者であれば、「耐用年数」「減価償却費」という言葉を聞いたことはあるけれど、詳しくは説明できないかたが多いのではないでしょうか。
耐用年数も減価償却費も経費やローンに関わる重要なもの。アパート経営をする場合にはきちんと理解することが大切。
今回はこちらの記事では、アパート経営において耐用年数と減価償却費の関係をわかりやすく説明します。
また節税に効果的な減価償却費の経費計上についても詳しく解説します。しっかり学んで効率的なアパート経営を目指しましょう。
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アパートの耐用年数とは?
アパート経営における耐用年数とはなにを指しているのでしょうか。 建物ばかりでなくアパートに付属している設備や構築物、器具備品についてそれぞれに耐用年数が設定されています。
耐用年数は法律で決まっている
耐用年数とは税務上法律で決められている「法定耐用年数」のこと。建物の寿命ではありません。
長期にわたり使用する所有物の価値を経費として毎年少しずつ計上するために、国税庁によって種別ごとの耐用年数が定められています。
国税庁では確定申告書作成のために耐用年数の一覧表をホームページで公開しています。
参考:国税庁 耐用年数表
耐用年数はアパート本体だけでなくアパートに付属している設備や構築物、器具備品にも設定されています。またアパート本体の構造によって、設定される耐用年数が変わってきます。例えば木造の場合は22年となっています。
耐用年数はローンの年数とも関わってくるため、アパートの建築を計画する際には構造についてしっかり確認すべきですね。
耐用年数と減価償却費について
アパートは購入してから長期間かけて使用されます。アパート本体だけでなくアパートに付属している設備や構築物、器具備品も同様ですね。
そのためアパート事業ではアパート本体やその付属物について、長期間少しずつ経費として計上できる仕組みがあります。その仕組みのことを「減価償却」といいます。
減価償却費を決めるのがそれぞれの耐用年数です。この減価償却費が、アパート経営の節税においてとても重要な役割を果たします。
耐用年数は融資期間に大きく関わる
耐用年数にはもうひとつ働きがあります。それはローンの融資期間を決めるものです。
融資をする金融機関は、もしローン返済が滞ってしまい返済不能になってしまった場合、抵当権を実行してアパートを売却して残債に充てることになります。
その際に耐用年数を過ぎてしまったアパートであれば当然売却が困難になるため、法定耐用年数を超えて融資期間を設定することはまずありません。
注意したいのは、実際には法定耐用年数より融資期間が短くなるケースが多いことです。 たとえば木造のアパートの耐用年数は22年ですが、融資期間は短縮されて20年というケースは珍しくありません。金融機関との取引実績などにもよりますが、融資期間は耐用年数より短くなると想定しておいたほうがいいでしょう。
アパート経営に関わる建物・設備など資産の耐用年数一覧
アパート建物本体はその構造によって法定耐用年数が変わってきます。特に鉄骨造は骨格材の厚みによってこまかくわかれているので注意しましょう。
以下にアパートの建物本体、アパートに付属している設備や構築物、器具備品の耐用年数の一覧を記載します。いずれも新築であり住居用とします。
建物(建物本体)
種別 |
耐用年数 |
木造 |
22年 |
鉄骨造 骨格材の厚み3mm以下 |
19年 |
鉄骨造 骨格材の厚み3mmを超え4mm以下 |
27年 |
鉄骨造 骨格材の厚み4mm以上 |
37年 |
鉄筋コンクリート造 |
47年 |
鉄筋コンクリート造のアパートは木造アパートの倍以上の耐用年数となっています。また鉄骨造のアパートは骨格材の厚みによって耐用年数は大きく異なります。
ちなみに、建物本体のなかには一体化した設備や備品も含まれていることに注意。
たとえばお風呂(ユニットバスまたは浴槽)、下駄箱、フローリングといった設備や備品は建物と一体化したものとみなされ、減価償却も同時におこなわれます。
建物付属設備
種別 |
耐用年数 |
電気設備のうち蓄電池電源設備 |
6年 |
上記以外の電気設備 |
15年 |
給排水設備 |
15年 |
衛生設備 |
15年 |
ガス設備 |
8年 |
排煙または災害報知設備 |
8年 |
蓄電池電源設備はオール電化でもなければアパートにはあまり使われることがありません。給排水設備や衛生設備とは、水回りの配管、トイレの本体およびその配管を指します。
構築物
種別 |
耐用年数 |
通信ケーブル(光) |
10年 |
通信ケーブル(光以外) |
13年 |
フェンス・へい(金属製・木製) |
10年 |
舗装路面(アスファルト) |
10年 |
最近は無料インターネットなどを導入するアパートも多いため、はじめから通信ケーブルが配線されています。光ケーブルとそれ以外で耐用年数が変わります。
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器具備品
種別 |
耐用年数 |
冷房、暖房、通風設備 |
6年 |
キッチンシンク |
5年 |
ガス器具 |
6年 |
クロス(壁紙) |
6年 |
床類(じゅうたん、畳床、クッションフロア) |
6年 |
インターフォン |
6年 |
エアコンなどの器具備品は購入金額によって計上の仕方が変わるので注意しましょう。
- 購入金額が10万円未満の場合:購入時の経費として一括計上
- 購入金額が10万円以上20万円未満の場合:いったん計上して3年間均等償却
- 購入金額が20万円以上の場合:耐用年数で減価償却
寒冷地ではエアコンではなくボイラーを使用しているアパートもありますが、冷暖房用ボイラーの耐用年数は13年から15年でワット数によって異なります。
クロスや床材といった内装は耐用年数6年となっていますが、そのうちフローリングだけは別です。フローリングについては建物と一体化したものとして減価償却も建物と一緒に行われます。
減価償却費を正しく計上して節税効果を上げよう
アパート経営において所得税の節税は重要な課題です。減価償却費を経費として計上することで大幅な所得の軽減ができるため、減価償却費についてしっかりと理解しておきましょう。
減価償却費は最大限計上する
アパートを購入したら、確定申告で前年度の収入と経費を申告します。この経費にあたるのが減価償却費。減価償却費を最大限に計上することで所得を軽減し、所得税を節税することが可能。
また減価償却費の計算の仕方は新築物件と中古物件で異なります。新築物件の場合は単純に法定耐用年数で割りますが、中古物件の場合は下記の計算式になります。
- 法定耐用年数を超えている場合
耐用年数=法定耐用年数×20%
- 法定耐用年数が残っている場合
耐用年数=残存法定耐用年数+(経過年数×20%) 減価償却費の計算方法は定額法と定率法の2種類あります。
- 定額法:資産の所得価格を耐用年数で均等に配分する方法
- 定率法:資産の未償却残高に耐用年数ごとに定められた率をかけて計算する方法
アパートの建物と建物付属設備については定額法で計算します。等分にわけて計上するため減価償却費は初年度に計上した金額が毎年つづくことになります。最初の確定申告でしっかりと計上することが大切ですね。
減価償却できる資産の種類ごとにわけて計上する
減価償却費を経費として多く計上するためには、できるだけ資産を種類ごとに分解することが重要です。
前項で解説した建物付属設備や構築物、器具備品といった項目は、建物本体に比べて耐用年数が短いもの。つまり、これらを経費計上することで所得が高くなりがちな最初の10年から15年の間、所得税を軽減することができるのです。
建物一括で計上するより資産の種類ごとにわけて計上することで節税になりますので、しっかり分解して計上しましょう。
法定耐用年数よりも長い建物の寿命!さらに長生きさせるには?
法定耐用年数というのは税務上で使用する目安のようなもので、実際の建物の寿命とは異なります。
実際に賃貸の市場をみてみると築22年を超えたアパートは多数あり、中には築30年を超えているものも少なくありません。しかし一方で、築30年前後には取り壊しや建て替えとなっているアパートもみられます。
アパートの建物としての寿命を延ばすには、適切なメンテナンスが不可欠です。メンテナンスで重要なのは水回りの事故や侵入(水漏れや雨漏り)を防ぐこと。定期的な水回り設備の点検や修繕。そして外壁や屋根の手入れが必要です。
メンテナンスをしっかりとすることで、法定耐用年数を超えて長生きできるアパート経営が可能になるでしょう。
まとめ
アパート経営において減価償却費をきちんと計上することは節税につながる大切なものです。法定耐用年数とはその減価償却費を決定するものなので、アパートを購入する場合にはしっかりと事前にシミュレーションしましょう。