オーナーが知るべきマンション・アパートの屋根に太陽光発電を設置する方法を解説
電気代の削減や災害時の停電対策として注目されているのが「太陽光発電システム」です。
近年では一般家庭だけでなく、マンションやアパートなどの集合住宅への導入を検討しているオーナー様も増えています。
実際、太陽光発電システムを備えた新築マンションやアパートだけでなく、既存の集合住宅に後付けするケースも多いです。
しかし中には、「自分の所有するマンションやアパートにも太陽光発電システムは設置できるの?」という疑問を持っているオーナー様もいるかもしれません。
そこで今回は、マンションやアパートに太陽光発電システムを導入することで、どのような物件に太陽光発電システムの導入が向いているのか、詳しく解説します。また「既存の賃貸物件」「既存の分譲マンション」「新築物件」それぞれについて、太陽光発電システムを導入する際の注意点もあわせて紹介します。
所有するマンションやアパートに太陽光発電システムの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
目次[非表示]
- 1.マンションやアパートに太陽光発電を導入するメリット
- 1.1.使われていない屋上を“発電所”に変えられる
- 1.2.共用部の電気料金を大幅にカットできる
- 1.3.余剰電力の売電でキャッシュフローが向上する
- 1.4.エコ物件として資産価値・入居率がアップする
- 1.5.災害時のバックアップ電源として機能する
- 2.太陽光発電に最適なマンション・アパートの条件
- 2.1.5階建て以下の低層建物
- 2.2.南向きに適度な勾配がある屋根を持つ建物
- 2.3.オーナーの判断で導入できる賃貸物件
- 3.マンション・アパートで太陽光発電を設置する際の手順
- 3.1.既存の賃貸マンション・アパートの場合
- 3.2.既存の分譲マンションの場合
- 3.3.新築マンション・アパートの場合
- 4.マンション・アパートで太陽光発電を運用する際の注意ポイント
- 5.【屋根の形状別】マンション・アパートに太陽光発電を導入する際の注意点
- 5.1.スレート屋根の場合
- 5.1.1.ヒビ割れに注意
- 5.1.2.アスベスト含有に注意
- 5.2.陸屋根(平屋根)の場合
- 5.2.1.高温になり発電効率が低下するおそれがある
- 5.2.2.雨漏りのリスクがある
- 6.マンション・アパートに太陽光発電の導入時に利用できる補助金・助成制度
- 7.まとめ
- 8.この記事を読んだ方に人気のお役立ち資料一覧
マンションやアパートに太陽光発電を導入するメリット
マンションやアパートに太陽光発電を導入すると、次のようなメリットが得られます。
- 使われていない屋上を“発電所”に変えられる
- 共用部の電気料金を大幅にカットできる
- 余剰電力の売電でキャッシュフローが向上する
- エコ物件として資産価値・入居率がアップする
- 災害時のバックアップ電源として機能する
それぞれについて詳しく解説します。
使われていない屋上を“発電所”に変えられる
マンションやアパートなど集合住宅の屋上は、安全のために立ち入りが禁止されているケースがほとんどです。そのため有効活用できず「スペースがもったいない」と考えているオーナーは少なくありません。
そのような屋上や、これまで活用方法のなかった屋根に太陽光発電システムを導入することで、デッドスペースだった場所を発電所として有効活用ができます。
太陽光発電システムで発電した電気は、マンションやアパートで使用したり、余剰電力を売却して収入を得られたり、大きなメリットにつながるでしょう。
共用部の電気料金を大幅にカットできる
太陽光発電システムで発電した電力は、マンションやアパートの共有部分で使用することも可能です。
マンションやアパートに設置される照明や防犯カメラなどは24時間稼働しているため、つねに電力を消費します。
太陽光発電システムで発電した電力を使用することで、共有部の光熱費の一部をまかなうことができます。その結果、電気代の節約につながり、電気料金を削減することができるでしょう。
余剰電力の売電でキャッシュフローが向上する
前述したように太陽光発電システムで発電した電力は、マンションやアパートで使用することができます。その際、余った電力を「固定価格買取制度(FIT)」を利用して買い取ってもらい売電収入を得ることも可能です。
なお、固定価格買取制度(FIT)とは、太陽光発電などで発電した電力を電力会社に固定価格で買い取ってもらう制度のことです。
売電収入はマンションやアパートの家賃収入に含まれます。月々の家賃収入が増えればキャッシュフローに余裕が生まれ、安定した賃貸経営につながるでしょう。
下記は、固定価格買取制度(FIT)の2025年度の太陽光発電による買取価格・期間などをまとめたものです。
【2025年度の価格表(太陽光・調達価格1kWhあたり)2025年4月現在】
参考:資源エネルギー庁『買取価格・期間等(2025年以降)』
なお、電力の売電価格は、発電設備の容量によって異なります。また年度ごとに変動する場合もあるため、資源エネルギー庁のホームページなどでその都度、確認しましょう。
エコ物件として資産価値・入居率がアップする
マンションやアパートに太陽光発電を導入することで「(建築物省エネルギー性能表示制度)」や「ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)」の認証を受けられる可能性があります。
BELSやZEHとして認められれば、環境に配慮した「エコ物件」としてアピールできるため、物件の資産価値の向上や入居率アップが期待できます。
ただし、BELSやZEHの認証を受けるためには、それぞれに定められた要件を満たさなければなりません。太陽光発電を導入するだけでは認証を受けられない場合もあるため注意しましょう。
災害時のバックアップ電源として機能する
地震や台風などの自然災害で停電した場合でも、太陽光発電を「自立運転モード」に切り替えるだけでマンションやアパートで電気を使用することができます。
太陽光発電による発電のみでは建物全体の電力をまかなうことはむずかしいですが、エントランスや廊下など共有部分に最低限の電力を供給できるため、居住者の安全や安心につながります。
太陽光発電に最適なマンション・アパートの条件
太陽光発電を導入するには、マンションやアパートの建物の構造・形状が重要となります。
ここでは、太陽光発電の導入に最適なマンションやアパートの特徴を解説します。
5階建て以下の低層建物
太陽光発電システムの設置に適しているのは低層のマンションやアパートです。
日当たりのよい高層マンションのほうが太陽光発電に適しているように思いますが、高層マンションの屋上は風が強く、太陽光パネルの取り付け方法を強化するなど、追加の対策が必要なケースがあります。
また屋上まで機材などを運搬する必要があるため、導入コストが割高になってしまいます。
一方、低層のマンションやアパートであれば、余分な費用が発生しにくく導入費用を抑えることが可能です。
具体的な目安は7~8階建て(約20メートル)未満の高さの建物になりますが、5階建て以下の低層物件が太陽光発電を設置するのに最適な高さであると考えられます。
南向きに適度な勾配がある屋根を持つ建物
切妻屋根のように傾斜のある屋根を持つ建物は太陽光発電の設置に適しています。加えて日照時間を考慮すると屋根が南向きであれば、発電効率も高くなります。
また太陽光発電パネルを設置する際には屋根に穴を開ける必要がありますが、屋根に傾斜がついている建物は排水処理がしやすく、雨漏りリスクが低減するでしょう。
オーナーの判断で導入できる賃貸物件
賃貸マンションやアパートの場合、太陽光発電を導入するかどうかはマンション(アパート)オーナー自身の判断のみで決定できます。そのため短時間かつスムーズに太陽光発電を導入できます。
一方、分譲マンションや賃貸の区分所有マンンションのように多数の所有者がいる場合、自分だけの意見で設備の追加や変更などはできません。マンション管理組合などが主導して要望などを取りまとめたり、手続きをおこなったり、決定までに時間がかかります。またかならずしも要望が通るとはかぎりません。
マンション・アパートで太陽光発電を設置する際の手順
太陽光発電をマンションやアパートに導入する際は、物件の種別によっては許可が必要になるケースもあります。
ここでは太陽光発電を導入するにあたって、物件種別ごとに必要な手続きなどについて解説します。
既存の賃貸マンション・アパートの場合
前述したように、賃貸マンションやアパートに太陽光発電を導入するかどうかはオーナー自身で判断・決定するため、基本的に許可などを取る必要はありません。
ただし、太陽光発電システムを設置する際に工事の音が響く場合もあります。騒音トラブルを未然に防ぐためにも、あらかじめ入居者へお知らせしておくと安心です。
既存の分譲マンションの場合
分譲マンションの屋上に太陽光発電を設置する場合、マンション管理組合の集会決議などで合意を得る必要があります。そのため、決定までに時間がかかるケースがあります。また、かならずしも合意に至るとはかぎらず、その場合は設置を見送ることになるでしょう。
なお、分譲マンションの場合は、居住者が自室のベランダに太陽光発電を設置できるケースもあります。ただしこの場合でも、一定数以上の居住者の承諾を得なければなりません。
なお、自室のベランダに太陽光発電を設置する場合の費用は居住者自身で負担します。
新築マンション・アパートの場合
マンションやアパートを新築する場合、太陽光発電の設置の決定はオーナー自身でおこなえるため特別な許可などは不要です。また入居者もまだいないため、お知らせなどをする必要もありません。
新築の建物の場合、設計段階で太陽光発電の設置を組み込むことで、発電効率や安全性、メンテナンスのしやすさなどの観点から最適な設置位置や配線などを検討できます。
そのため、既存の建物に太陽光発電を後付けするよりも、安全かつ効率的な運用が可能となるでしょう。
マンション・アパートで太陽光発電を運用する際の注意ポイント
マンションやアパートに太陽光発電を導入するメリットは先にお伝えした通りですが、運用するにあたって注意すべきポイントがあります。
ここでは、太陽光発電を運用する際の注意ポイントを解説します。
分譲マンションでは全戸供給がむずかしい
基本的に分譲マンションの屋上に後付けで設置した太陽光発電システムの場合、発電した電力を全戸に供給することはむずかしいです。
これは、そもそも建物を設計した段階で太陽光発電の設置及び全戸供給を前提していないためです。
屋根や屋上の面積によって設置可能なソーラーパネルの枚数は限られます。そのため、建物の規模や形状によっては全戸の電力をまかなえる太陽光発電システムを導入できない場合もあるのです。
全戸に電力を供給したいのであれば、物件内で消費される電気使用量と太陽光発電の発電量を比較したうえで慎重に導入プランの検討が必要になります。
また規模によっては導入費用が高額になるため注意が必要です。
自家消費率30%以上の要件をクリアする必要がある
マンションやアパートに設置した太陽光発電で発電した電力の余剰分は、売却して売電収入を得ることが可能です。
ただし2020年より、10kW以上50kW未満の太陽光発電では、発電した電気のうち自家消費比率を30%(余剰売電比率70%)にすることが条件として設けられました。
そのため、発電量が少ない、または自家消費比率が30%に満たない場合は、固定価格買取制度(FIT)の認定を取り消される(または受けられない)ため注意しましょう。
なお、10kW以下の太陽光発電については自家消費比率30%の条件はありません。
【屋根の形状別】マンション・アパートに太陽光発電を導入する際の注意点
アパートやマンションに太陽光発電システムを設置する際は、屋根の形状によって注意するポイントが異なります。
ここでは、アパートによく使用される「スレート屋根」と、一般的なマンションの屋上に多い「陸屋根(平屋根)」について、それぞれの屋根に太陽光発電を導入する際の注意点を解説します。
スレート屋根の場合
スレート屋根とは、セメントや天然石を材料とした屋根材を指します。主に勾配のある屋根に使用されています。
スレート屋根は軽量なため建物への負担が少なく、耐火性や耐熱性などに優れているのが大きな特徴です。またほかの屋根材と比較すると安価なため、賃貸アパートだけでなく戸建て住宅などにも広く用いられています。
スレート屋根に太陽光発電システムを設置する場合は、以下の点に注意が必要です。
ヒビ割れに注意
軽量であるため、太陽光発電パネルの重量によってはヒビ割れなどが生じやすくなる場合があります。ヒビ割れを放置してしまうと、太陽光パネルの固定が不十分となり落下の原因になったり、ヒビ割れ箇所から雨漏りしたりする恐れがあるため注意が必要です。
スレート屋根に太陽光発電システムを設置する場合は、定期的にメンテナンスをおこない、不具合箇所をこまめに修繕するとよいでしょう。
アスベスト含有に注意
古いスレート屋根にはアスベストが含まれている可能性があります。特に築古物件の場合、屋根も古いスレートのままの場合があるため注意が必要です。
アスベストが含まれているスレート屋根に太陽光発電システムを設置する際は、アスベスト飛散防止の対策が必須となります。その場合、追加の工費時用が発生するケースもあるため、あらかじめ確認しておくとよいでしょう。
陸屋根(平屋根)の場合
陸屋根(平屋根)とは、勾配がなくほぼ水平な屋根のことです。マンションやビルなどの屋上が該当します。
陸屋根(平屋根)のメリットは、スレート材や瓦などを使用しないため、建設コストを抑えることができる点です。また形状が平らなので、太陽光発電を設置したり、屋上を入居者に開放したり、スペースの有効活用も可能です。
陸屋根(平屋根)に太陽光発電システムを設置する場合は、以下の点に注意しましょう。
高温になり発電効率が低下するおそれがある
陸屋根(平屋根)のようにフラットな場所に太陽光発電を設置する場合、発電パネルの表面温度の上がりすぎが原因で発電効率が下がる可能性があります。
これは、勾配のあるスレート屋根などに比べて、陸屋根(平屋根)に設置する太陽光発電の設置角度が低く、太陽の照り返しで温度が上昇しやすくなるためです。
陸屋根(平屋根)に太陽光発電を導入する際は、パネルの温度が上がりすぎないよう、影が差す位置などを考慮しながら設置場所を決めるとよいでしょう。
雨漏りのリスクがある
陸屋根(平屋根)に太陽光発電を設置する際、屋根部に開けた穴が原因で雨漏りするリスクがあるため注意が必要です。
雨漏りを下げるためには、太陽光発電システムを設置後に穴を開けた箇所にあらためて防水処理を施すと安心です。
なお、ブロックなどを利用して穴を開けずに太陽光発電を設置する工法もあります。、ただ使用するブロックは重量があるため、屋根部や建物全体に負荷がかかる可能性があるため注意しましょう。
マンション・アパートに太陽光発電の導入時に利用できる補助金・助成制度
自治体によっては、マンションやアパートなどの集合住宅に太陽光発電を導入する際に補助金や助成金を設けている場合があります。
ただし、補助や助成を受けられる条件・金額などは自治体によって異なります。また、補助金や助成金の申し込み期限を設けていたり、予算額が定められていたりするケースもあるため、早めに確認しておくとよいでしょう。
東京都の『令和7年度 集合住宅における再エネ電気導入促進事業』の補助金制度を例にあげてみました。
◇助成額、助成要件など
- 太陽光発電設備(既存):12万円/キロワット
- 太陽光発電設備(新築):10万円/キロワット
*条件:助成対象となる高圧一括受電契約が締結されていること、集合住宅に導入される設備であること など
- 架台工事上乗せ:20万円/キロワット
*条件:集合住宅の陸屋根(平屋根)に施工する場合に限る など
- 防水工事:18万円/キロワット
*条件:既存集合住宅の陸屋根(平屋根)に施工する場合に限る など
- 助成金募集期間:令和6年5月29日~令和7年3月31日
*ただし、募集期間内であっても、申請総額が上限額に達した時点で終了とする
- 予算額:約3.6億円
参考:クール・ネット東京『令和7年度 集合住宅における再エネ電気導入促進事業』
太陽光発電の導入費用を抑えたい場合には、ぜひ活用しましょう。
まとめ
マンションやアパートなどの集合住宅に太陽光発電システムを導入することで、共用部の電気代をまかなったり、災害などの停電時にも電気を使用できたり、余剰電力を売電できたりさまざまなメリットが得られます。
ただし余剰電力を売却するためには、10kW以上50kW未満の太陽光発電システムで発電した電気のうち、自家消費比率を30%以上にしなくてはならないため注意が必要です。
また高層マンションの屋上に太陽光発電システムを設置する場合は、導入コストが割高になるケースがあるため注意しましょう。
なお、自治体によっては、マンションやアパートへ太陽光発電システムの設置を対象に補助金や助成金を提供していることがあります。上手に活用できれば、導入コストを大幅に抑えることにつながります。ぜひ検討してみてください。
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