アパート経営の破たん【意外に多い間違った3つの認識と現実】4つの賃貸経営術で生き残る
「アパート経営が破たんする可能性はどのくらいなんだろうか」 「破たんしたらどうなっちゃうの」 「破たんを回避する方法はなにかないのだろうか」 アパート経営に夢や希望をお持ちの大家さんも、心のどこかにこんな漠然とした不安を抱えているのではないでしょうか。
今日はアパート経営の破たんの原因と回避の方法について「あぱたい」がわかりやすく解説していきますから、ぜひ参考にしてください!
目次[非表示]
- 1.アパート経営を取り巻く現実を3つの側面から解説
- 1.1.1.アパートの過剰供給
- 1.2.2.確実にやってくる!大幅な人口減少
- 1.3.3.相続対策としての安易なアパート経営
- 2.アパート経営破たんを招く4つの原因とは?
- 2.1.1.空室の増加
- 2.2.2.予想以上にかかる修繕費
- 2.3.3.サブリース家賃保証の罠
- 2.4.4.金利が上昇!アパートローンが返済できない
- 3.具体的にアパート経営が破たんすると、どういうことが起こるの?
- 4.アパート経営が破たんする前に大家がすべき4つの賃貸経営術
- 4.1.1.アパート経営は最初の物件選びが重要
- 4.2.2.空室を出さない戦略
- 4.3.3.投資リスクに対する十分な準備
- 4.4.4.困ったら金融機関や専門家に相談
- 5.まとめ
アパート経営を取り巻く現実を3つの側面から解説
「アパート経営を取り巻く環境はどういった状況か」「アパート経営が破たんする可能性はどのくらいなのか」を
- アパートの過剰供給
- 確実にやってくる!大幅な人口減少
- 相続対策としての安易なアパート経営
3つの側面から詳しく解説していきます。あなたは現実を勘違いしていませんか?
1.アパートの過剰供給
最近、アパートの数が多すぎるという話をよく耳にします。なかでも、2019年4月に日銀が「不動産融資がバブル期以来の過熱状態にある」と発表したのは、衝撃的でした。
【不動産業向け貸出対GDP比率】
画像引用:日本銀行金融システムレポート 2019年4月不動産市場の動向(1)図表Ⅲ-4-2 不動産業向け貸出の対GDP比率
上図をみると86-91年のバブル期以来はじめて、不動産貸出が水色の安全圏を上方に突き抜けているのがよくわかります。 また共同住宅数は2018年時点で2,334万戸にものぼり、はじめて1,000万戸を超えた1988年から毎年増え続けています。
この30年で人口が約300万人増えたのに対して、共同住宅は4倍の約1,200万戸も増えました。単純に考えて、賃貸物件(アパート含む)が過剰供給であることは明らかです。
参考:総務省統計局平成 30 年住宅・土地統計調査4住宅の建て方
でも貸家の新築着工数・新規融資数は、ここ数年減っているんだよね。それでもアパートは飽和状態だから、空室の増加にも歯止めがかからないです。
2.確実にやってくる!大幅な人口減少
画像引用:総務省我が国における総人口の長期的推移
日本の人口は2004年の1億2,784万人をピークに、今現在も1億2,000万人以上をキープしています。 しかし、これから人口は毎年減少し続け、2050年にはついに9,515万人と1億人を割り込むことが確実視されている状況です。
3.相続対策としての安易なアパート経営
2015年に施行された相続税の増税により、アパート経営に乗り出した地主がたくさんいました。 2015年相続税の大きな改正点は、
- 基礎控除額の大幅削減
- 相続税率の引きあげ
まず基礎控除ですが、従来は「5,000万円+(1,000万円×法定相続人数)」だったのが、「3,000万円+(600万円×法定相続人数)」に変更となりました。
これにより、じつに40%も控除額が削減されてしまったわけです。 また税率も取得金額が1億円を超えると、最大で5%増加しました。 特に基礎控除額変更の影響は大きく、これまでなら相続税の対象にならなかった人も相続税を支払わなければならなくなりました。
その数、約1.8倍。人数にして約47,000人もの増加。 この状況をみれば、賃貸経営を考える地主が多かったのも当然といえます。 アパートが建っている土地は「貸家建付地」としてみなされますから、更地に比べて土地の価値を低く査定してくれます。結果、節税につながるわけです。
問題なのはアパート経営の知識・熱意があまりないにも関わらず、デメリットをよく調べずに不動産業者の安易なセールストークに乗せられてしまったこと。
アパート経営破たんを招く4つの原因とは?
- 空室の増加
- 予想以上にかかる修繕費
- サブリース家賃保証の罠
- 金利が上昇!アパートローンが返済できない
1.空室の増加
アパート経営では、空室が発生すれば収入減に直結。ですから、とにかく空室を徹底的に回避しなくてはなりません。 TAS賃貸住宅市場レポートでアパート系の空室状況を調べてみると、直近では多少改善がみられるものの、全体的に上昇傾向にあります。
【TAS 1都3県アパート系(木造・軽量鉄骨)空室率TVI】
画像引用:TAS 賃貸住宅市場レポート首都圏版関西圏・中京圏・福岡県版 2019年7月図-2
上図はあくまでも首都圏1都3県だけのデータですが、空室の増加傾向は今後も継続すると考えて差し支えないでしょう。
2.予想以上にかかる修繕費
修繕費もアパート経営を圧迫する大きな要因のひとつ。一般的に15〜30年周期で、大規模修繕工事が発生します。国土交通省のガイドブックによると、築30年までに必要な修繕費用は、1棟あたり約1,740万円。(木造1K10戸の場合)
びっくりするような金額ですが、大規模修繕工事は事前の計画に織り込み済みであり、毎月修繕費として積立をするのが一般的。ですから、じつはそれほど負担にはなりません。 問題なのは、突発的な修繕工事や設備機器の故障です。
例えばエアコンの交換ともなれば、1台10万円はかかります。こういった計画にない修繕費が重なると、キャッシュフローを悪化させ、赤字に転落することも十分にあり得ます。
アパート経営にかかる修繕費の目安についてはこちらの記事を参考にしてください>>【アパート経営にかかる修繕費の目安】屋根等15の費用と築30年アパートの試算
3.サブリース家賃保証の罠
もしかすると「サブリース」が、アパート経営にとって1番のトラブル要因かもしれません。
サブリースとは?
サブリースとは、管理会社が大家から一括でアパートを借りあげ、入居者に転貸する賃貸形式です。管理会社は大家に対して「空室保証」や「家賃保証」をするのが一般的で、その特典を目的にたくさんの地主がアパート経営に参加しました。
ところが現実には、景気の悪化や空室の増加を理由に、いきなり保証額を引き下げるという事例が多発したのです。 また家賃自体の値下げを要求したり、最悪の場合は契約を解除したりといったことも頻発。空室が増えたにも関わらず家賃の保証がなければ、経営破たんも時間の問題です。
そういった状況を踏まえて、消費者庁をはじめ、さまざまな行政機関が対策に乗り出すという異常事態に発展しています。
参考:消費者庁サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!
4.金利が上昇!アパートローンが返済できない
一般的に物件を手に入れる際には、ほとんどの人が銀行からアパートローン、もしくは不動産投資ローンの融資を受けるはずです。 ここで悩むのが、固定金利か変動金利かということ。
今は非常に低金利で借入れができるため、変動金利を選択する人が多いです。最悪の場合でもあとから固定金利に変更できますから、これは正しい判断のようにみえます。
しかし、固定金利に変更するときには、当然固定金利も上昇しています。これでは最初から固定金利にしておけばよかったと、後悔することにもなりかねません。
具体的にアパート経営が破たんすると、どういうことが起こるの?
まず破たんというのは、具体的にいえば「ローン滞納」です。原因はいろいろありますが、経営が行き詰まりローンを滞納することから破たんがはじまります。
アパート経営は、多ければ1億円を超えるお金を借入れるわけですから、もし破たんしたらどうなってしまうのかは非常に気になるところですよね。
滞納期日 |
内容 |
滞納数日 |
「お振込がないようですがどうされましたか」といった支払い確認の電話がきます。この時点では、まだ取り立てといった雰囲気はほとんどありません。 |
滞納1か月目
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支払い請求書が届きます。延滞金なども記載され、支払いを請求されますが、まだまだ対応はソフトです。 |
滞納3か月目
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このあたりで請求書から催告書・督促状に切り替わります。内容も「期限の利益損失」(分割支払いの権利を失い一括で残金を請求される)や「個人情報の登録」(いわゆるブラックリスト)など、より厳しい警告です。 |
滞納6か月目
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6か月が大きなターニングポイントで、6回滞納すれば確実に「期限の利益損失通知書」が届きます。期限の利益損失の確定
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滞納6か月目以降
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保証会社より銀行へ、ローン残金の補填がおこなわれます。これを代位弁済といい、以降は保証会社から返済の請求がきます。 |
滞納8か月目〜10か月目
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裁判所から「競売開始決定通知書」および「差し押さえ通知書」が届きます。競売価格査定のため、執行官が自宅調査をおこなうのもこの時期です。 |
滞納12か月目〜18か月目
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「競売の期間入札通知」が届いたら、もう最終段階です。競売がスタートすれば、もはやストップする方法はありません。 |
競売になれば支払い責任はなくなるのかといえば、そうではありません。物件がローン残金よりも高く売れれば問題ないのですが、もし足りない場合は、残金分は債務として依然支払い義務が残ります。
アパート経営が破たんする前に大家がすべき4つの賃貸経営術
先ほどアパート経営が破たんすると、通常、自己破産を選ぶことが多いという話をしました。しかし、その前にアパート経営の破たんを回避するため、大家が事前にすべき4つの手順をお伝えします。
1.アパート経営は最初の物件選びが重要
アパート経営において大切なのは、「購入前の正しい物件選び」です。特に立地条件はもっとも重要といっても過言ではありません。
立地条件さえよければ、仮に築年数が古くなっても、安定して入居者の応募があります。 立地条件を選べるのは購入前だけです。物件は慎重に吟味してください。
【借主に重視される主な立地条件】
- 駅から近い(交通の便がいい)
- スーパー・病院・コンビニなどの必要施設が近隣にある
- 治安のよさ
- 静かな住環境
- 駐車場の確保
2.空室を出さない戦略
基本的には、常に満室状態をキープできれば破たんはしません。十分な収益が見込め、きちんと返済ができるからです。 しかし、どんなに立地条件のいいアパートであっても、経営の仕方によっては空室が埋まらない場合があります。
空室が発生する原因を把握して入居者確保に力を注ぐことが、破たんを防ぐにはとても重要です。
【空室が出る主な原因】
- 家賃設定が相場よりも高い
- 立地条件が悪い(駅から遠い・商業施設などが近隣にない・治安が悪いなど)
- 入居者募集がうまくできていない(宣伝不足・仲介会社との関わりかたなど)
- 住民の満足度が低い(トラブル対応・物件管理のまずさなど)
- 周りに新しいアパート(競合物件)が増えた
入居者さえ確保できていればアパート経営は安心です。空室が出る原因をしっかりと把握して改善しましょう。
3.投資リスクに対する十分な準備
これまでアパート経営のリスクについて、マクロの要因(人口減少や供給過剰)と具体的な要因(立地条件・空室増加)の両面から解説してきました。
しかし、じつはこれらはすべて、事前に予測ができるものばかりです。 破たんの大きな原因に「大家の事前の準備(勉強)不足」があげられます。
【事前に計画しておくべき主な項目】
- 入居者に選ばれる立地条件
- 空室の増加リスクと対策(入居者確保の方法)
- 今後必要になる維持費用(特に大規模修繕費用)
- サブリースやローンに関する知識
- 税金対策
- 出口戦略(売却・長期継続)
上記のような内容をしっかりと予測・計画し、準備をしておけば、極端に破たんをおそれる必要はまったくありません。
4.困ったら金融機関や専門家に相談
まず考慮すべきは、リスケです。
リスケとは?
リスケジュールの略。金融機関に一定期間、返済額を減額もしくは期間の延長などをしてもらい、その間に立て直しを図る。状況にもよるが、半年〜1年間程度、リスケを承認するケースが多い。
アパート経営は長期戦。いくら対策を練っても、突発的な病気やトラブルにより厳しい状況におちいることは十分にあり得ます。 どうしても支払いが滞りそうな場合は、なるべく早いうちにきちんと金融機関に相談しましょう。
しかし残念ながら、1年といった短期間では、改善が期待できない場合も少なくありません。そういった場合は、ほかの金融機関でローンの借り換えを検討してみるのもいい方法です。 借り換えができるとは限りませんが、借り換えにより多少なりとも返済に余裕ができれば、破たんを回避できる可能性が高くなります。
いずれにしても、入居者募集・管理会社との関係改善・建物へのテコ入れなど、経営のやりかたで改善できる可能性がある場合は「金利の引き下げ交渉・再度のリスケ交渉」を粘り強くするべきです。
まとめ
大きな観点からみたアパート経営破たんの要因は、
- アパートの過剰供給
- 大幅な人口減少
- 安易なアパート経営
具体的な破たんの原因としては、下記の4つが考えられます。
- 空室の増加
- 高額な修繕費
- サブリース・家賃保証トラブル
- 変動金利の上昇リスク
アパート経営が破たんすると、最終的にはアパートを売却して債務を清算することになるでしょう。
しかし、事前に「いい立地条件の物件を選ぶ」「空室を出さない」「経営リスクに対してきちんと準備をする」といった対策をとることで、破たんを回避できる可能性は飛躍的にあがります。 最終的にどうしても改善が不可能な場合は、なるべく損をしないように、早めに専門家に相談することをおすすめします。
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